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学校のクラスでの影響力と‘やせ’に有意な関連 高知県の小中高校での調査

高知県の小中高校で行った調査から、学校のクラスの中での影響力と‘やせ’との間に有意な関連のあることが明らかになった。例えば、クラスメートへの影響力が弱いと感じている男子生徒は、共変量を調整しても、‘やせ’の該当者が多いという。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男氏らの研究によるもので、「Frontiers in Pediatrics」に論文が掲載された。

学校のクラスでの影響力と‘やせ’に有意な関連 高知県の小中高校での調査

‘やせ’は本人の健康だけでなく、次世代の健康リスクも高める可能性がある

小児や思春期の子どもたちのやせは、摂食障害、不安、抑うつなどのリスクと関連があることが知られている。また、女子ではやせが改善されずに成人・出産した場合、児がSGA(small-for-gestational-age. 在胎週数に比べて小さい胎児・新生児)となりやすい。SGAは成人後の生活習慣関連疾患リスクが高く、また学業成績の低下との関連も示唆されている。さらに、父親のやせもSGAリスクに影響を及ぼす可能性も指摘されている。つまり、やせは本人だけでなく、次世代にも影響が引き継がれていくリスクのある状態と言える。

成人後の体格は小児・思春期から引き継がれることが少なくないため、小児期のやせの関連因子を明らかにすることが求められる。これまでの研究から、小児・思春期のやせの関連因子の一つとして、社会的地位も含まれる可能性があるが、それらは主として発展途上国での調査が多い。一方、先進国における小児・思春期のやせと社会的地位との関連は、これまで調査されていない。

子どもの主観的影響力(DOI)とやせとの関連を検討

これを背景として藤原氏らは、主観的にとらえられたクラスメートへの影響力(degree of influence;DOI)を、子どもたちの社会的地位を評価する指標として用い、DOIとやせとの関連を検討した。

DOIの評価には、「あなたの意見や行動は、他のクラスメートにどのくらい影響を与えるか?」という質問に対して、「1.全く影響力がない」、「2.少し影響力がある」、「3.ある程度は影響力がある」、「4.強い影響力がある」という選択肢から一つを選んでもらうという方法を用いた。解析に際して、2または3を選択した場合を主観的影響力が「中程度」と判定し、1は「弱い」、4は「強い」と判定した。

著者によると、日本は先進諸国の中で子どものやせの割合が高く、かつ周囲からのプレッシャーが強い社会であるとの報告もあることから、DOIとやせの関係を調査するのに最適の環境と言えるという。また、DOIは簡便に評価が可能であり、仮にやせとの関連が明確に示された場合は、やせのリスクが高い人を明らかにするためのアセスメントに用いたり、早期介入につなげることが可能になるというメリットがあるとしている。

高知県の小中高校生、約1万人を対象に調査

研究には、高知県で実施された子どもの健康・生活実態調査(Kouchi Child Health Impact of Living Difficulty;K-CHILD研究)のデータを用いた。K-CHILD研究は、高知県内のすべての学校に在籍する、小学5年生、中学2年生、高校2年生を対象に2016年に実施された、自記式アンケート調査。データ欠落などのない有効回答数は9,278人(男子49.9%)だった。

年別BMIのZスコアが2未満(平均の2標準偏差未満)の場合にやせと判定し、DOIの評価結果との関連を検討した。また、BMIの算出に用いる身長については、それが高値である場合にDOIが高い(高身長の生徒は主観的影響力が強い)可能性も考えられるため、身長のZスコアが1を上回る(平均の1標準偏差超)こととDOIの評価結果との関連も検討した。

DOIが強い群と弱い群の双方にやせている生徒が多い

主観的影響力(DOI)の評価結果は、生徒の81.5%が「中程度」であり、「強い」が9.5%、「弱い」は9.0%だった。一方、やせの割合は全体で3.1%であり、DOIが強い群では4.3%、中程度の群では2.7%、弱い群では6.0%であって、U字型の関係が認められた。それに対して高身長の割合は全体で4.8%であり、DOIが強い群では8.0%、中程度の群では4.6%、弱い群では3.9%であって、DOIが強い群に高身長の生徒が多くみられた。

性別の解析では、男児においてDOIとやせや高身長の関連がより明確

DOIが中程度の群を基準として、やせに該当する生徒の割合をオッズ比でみた場合も同様に、DOIが強い群(OR1.65〈95%CI;1.16~2.35〉)と、DOIが弱い群(OR2.32〈1.68~3.18〉)の双方で、有意なオッズ比上昇が観察された。

このU字型の関係は、共変量(学年、性別、親友の数、世帯収入、地域〈高知市内/市外〉、抑うつレベル)を調整するとわずかにオッズ比が低下したが、引き続き有意だった(DOIが強い群はOR1.59〈1.05~2.43〉、弱い群はOR2.04〈1.35~3.06〉)。

性別の解析ではDOIが低い男子でのみ、やせが多い

次に性別に解析すると、男子ではDOIが低い群ではやはり、やせのオッズ比が有意に高かったが(共変量調整モデルでOR2.13〈1.34~3.43〉)、DOIが高い群は非有意となった(OR1.55〈0.89~2.70〉)。

女子に関しては、共変量未調整モデルでは、DOIが高い群で有意なオッズ比上昇が認められたものの(OR1.93〈1.10~3.38〉)、共変量調整モデルでは非有意だった(OR1.63〈0.85~3.13〉)。また、DOIが低い群については、共変量未調整モデルでも非有意だった(OR1.17〈0.60~2.27〉)。

男児のDOIが強い群は高身長の生徒が多い

続いて、DOIと高身長との関連をみると、共変量調整モデルではDOIが強い群は高身長のオッズ比が有意に高く(OR1.55〈1.14~2.12〉)、DOIが低い群は中程度の群と有意差がなかった(OR0.89〈0.57~1.40〉)。性別に解析した場合、男子については全体解析と同様の関連がみられたが、女子についてはDOIの強弱と高身長との関連が非有意だった。

著者らは本研究を、DOIにより子どもの社会的地位を評価することができ、子どもの世界における社会的地位と健康関連指標との有意な関連を示した初の研究と位置づけている。限界点として、横断研究のため因果関係は不明であること、性格特性を考慮していないことなどが挙げられるものの、結論として「DOIの強弱はいずれも、摂食障害の重要なリスク因子の一つである若年者のやせと関連していた。若年者のやせの対策として、DOIに焦点を当てることが重要である可能性がある」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Association between subjective degree of influence in class and thinness among adolescents in Japan」。〔Front Pediatr. 2023 Jan 9;10:938139〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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