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エネルギー密度の高い食習慣では微量栄養素が不足する可能性 欧州の未成年で検討

思春期の小児・若年者のポーションサイズと、摂取エネルギー・栄養素量との関連を検討した結果が昨年、欧州から報告されている。エネルギー密度の高い食品を多く摂取すると、ビタミンやミネラルの摂取量が少なくなる可能性などが明らかになったという。

エネルギー密度の高い食習慣では微量栄養素が不足する可能性 欧州の未成年で検討

栄養素ベースの評価と食品ベースの評価を関連づけるための基礎データが必要

小児期から思春期は急速な成長と発達のため、エネルギーや栄養素の需要が高く、不足した場合に成人後にもその影響が引き継がれる可能性がある。その一方で、エネルギー密度が高く栄養価の低い食品の摂取やそれによる肥満の増加が、世界的に深刻な問題になっている。

従来、摂取された栄養素はその重量で評価することが多かったが、当然のことながら、人々は栄養素ではなく食品を摂取しているわけで、より実生活に即した栄養指導等を進めるために、近年では食品ベースで栄養評価を行うことが増えている。ただし、どのような食品をどの程度摂取した場合に、それにはどの栄養素がどの程度含まれているのかという、以前に主流だった評価手法と新たに浸透しつつある評価手法の結果を関連づけるためのデータがまだ少ない。

摂取される食品のサイズが大きければ、当然、摂取されるエネルギー量も大きくなると考えられるが、実際にそれが本当かどうかは検証しなければわからないし、大きなサイズの食品には、もしかしたら栄養素の含有量は少ないのではないかという可能性も否定できない。これを背景として本論文の著者らは、欧州の小児から思春期、若年者対象に実施された栄養に関する横断研究のデータを用いた検討を行った。

欧州8カ国、1,600人以上の若年者の食品の摂取量を把握

この研究には、欧州で行われた若年者の栄養と健康的なライフスタイルの横断的研究(Healthy Lifestyle in Europe by Nutrition in Adolescence Cross-Sectional Study;HELENA-CSS)のデータが用いられた。HELENA-CSSの参加者は欧州9カ国、10都市に在住する12.5~17.5歳の未成年3,528人。このうち今回の論文の研究では、24時間思い出し法による食事摂取量が、平日と休日の計2回実施されており、摂取量が過大報告(対象に占める割合は4.9%)または過少報告(同14.9%)とみなされた者を除く1,631人(女子54.2%)を解析対象とした。参加者は8カ国(ギリシャ、ドイツ、ベルギー、フランス、イタリア、オーストリア、スウェーデン、スペイン)の未成年だった。

食品のサイズは、HELENA-CSSで用いられた食事の評価ツール(HELENA Dietary Assessment Tool;HELENA-DIAT)の結果を利用した。HELENA-DIATでは食品の写真800枚が用意され、参加者はその中から食べた物に一致するサイズを選ぶか、それより多く、または少なく食べたという情報を加味することができた。

食品のサイズは摂取栄養素量と関連がある

ポーションサイズの三分位で分けた場合の検討

食品のサイズ(ポーションサイズ)を三分位で3群に分け、栄養素摂取量との関連を検討した。

その結果、まず主要栄養素について、炭水化物はデザートとミルクベースのプリンの最高三分位群で摂取量が多い傾向があった。タンパク質については、代用肉、ナッツ、豆類、ケーキ、パイ、ビスケットの最高三分位群で摂取量が多い傾向があった。脂質は、チーズ、卵、バター、動物性脂肪、ケーキ、パイ、ビスケットの最高三分位群で摂取量が多い傾向があった。一方、食物繊維は、パンとロールパンの最高三分位群では、摂取量が低い傾向があった。

微量栄養素については、ビタミンAは代用肉や家禽の最高三分位群、ビタミンDは、チーズ、ソース、クリームの最高三分位群で摂取量が多い傾向があった。一方、ビタミンEは、フルーツジュースや野菜ジュースの最高三分位群では、摂取量が低い傾向があった。

ビタミンB12は、卵、ケーキ、パイ、ビスケットの最高三分位群で摂取量が多い傾向があり、反対に根野菜、じゃがいも、野菜の最高三分位群で摂取量が少ない傾向があった。

ミネラルについては、鉄は、卵、代用肉、ナッツ、豆類の最高三分位群で摂取量が多い傾向があり、反対にパン、ロールパン、バター、動物性脂肪の最高三分位群で摂取量が少ない傾向があった。カルシウムは、砂糖、ハチミツ、ジャムの最高三分位群で摂取量が少ない傾向があった。また、ナトリウムは牛乳、ヨーグルト、乳飲料、代用肉、ナッツ、豆類の最高三分位群で摂取量が少ない傾向があった。カリウムは、魚、卵、代用肉、ナッツ類、豆類の最高三分位群で摂取量が多い傾向があった。亜鉛は、代用肉、ナッツ、豆類の最高三分位群で摂取量が多い傾向があった。

食品サイズと摂取栄養素量の相関

このほかに、多量栄養素と食物繊維に関しては、朝食用シリアル、チーズ、卵の大部分が炭水化物摂取量と反比例の関係にあり、米やその他の穀物、じゃがいも、炭酸飲料の大部分は、炭水化物摂取量の増加と有意に関連していた。牛乳、ヨーグルト、乳飲料、および魚の摂取量が多いほど、タンパク質摂取量の増加と有意に関連していた。

チーズやバター、動物性脂肪の割合が多いほど、脂質の摂取量が多いことが明らかになった。反対に、魚、果物、野菜ジュースのポーションサイズは、脂質摂取量と逆相関していた。

砂糖、ハチミツ、ジャムをより多く摂取している場合、砂糖の摂取量が多かった。最後に、米やその他の穀物、野菜、代用肉、ナッツ、豆類のより多く摂取することは、より高い食物繊維摂取量と有意に関連していた。

著者は本研究から明らかになった重要な点として、以下のような項目を掲げている。

  • 摂取エネルギー量は、エネルギー密度の高い食品の摂取量が増えると増加していた。
  • 食事のポーションサイズは、栄養素を積極的に摂取するための重要な決定要因である。
  • エネルギー密度の高い食品を大量に食べると、ビタミンやミネラルの摂取量が低下する可能性がある。

文献情報

原題のタイトルは、「Food portion sizes and their relationship with energy, and nutrient intakes in adolescents: The HELENA study」。〔Nutrition. 2023 Feb;106:111893〕
原文はこちら(Elsevier)

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