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男子サッカー選手のアルコール関連障害のリスクは? スウェーデンのトップリーグでの調査

スウェーデンのサッカートップリーグ「アルスヴェンスカン」に、1924年以降所属していたすべての男子選手のアルコール関連障害の有病率を、年齢などの特徴が一致する一般男性と比較するという研究の結果が報告された。サッカー選手のアルコール関連障害のリスクは約3割低いという。

男子サッカー選手のアルコール関連障害のリスクは? スウェーデンのトップリーグでの調査

アルコールとサッカーの文化的な結びつきが強い国がある

国によっては文化的な背景から、サッカーとアルコール摂取との関連が強い。かつては、エリートレベルのサッカー選手の中にアルコール関連障害を有する選手が少なくなかったことが知られている。スウェーデンもそのような国の一つであり、「プンシュ」という国民的なアルコール飲料がサッカーに関連付けられて消費される文化があったという。本論文の著者らは、同国のエリート男子サッカー選手のアルコール関連障害有病率の推移を把握するとともに、アルコール関連障害と試合でのパフォーマンスとの間に有意な関係があるかどうかを検討した。

1924年以降の試合に出場した全選手を対象に調査

この研究では、スウェーデンでトップレベルの活躍をしたすべての元アスリート、現役アスリートのデータベースから、名前、生年月日、出場試合数、ポジション、ゴール数などを把握。また、同国では国民全員の受療動向がデータベース化されており、それを用いて、アルコール関連障害による通院や入院、治療薬の処方歴、および死亡の記録から、アルコール関連障害の有病率の変化を把握した。

1924年のアルスヴェンスカンの1年目のシーズンから2019年のシーズンの間に、1ゲームでも試合に出場した全選手を調査対象とした。その中で医療記録を参照できなかった選手(例えば本人が公開データベースから削除した場合など)を除外すると、6,007人が残った。比較対照群は、この選手群と、年齢、居住地、生存状況の一致する一般男性を1対10の割合でマッチングさせた5万6,168人。

主要評価項目は前述のように、受療行動や処方・死亡記録に基づくアルコール関連障害の罹患であり、副次的評価項目として、アルコール以外の物質の使用障害の罹患について評価した。

なお、解析対象としたサッカー選手6,007人がトップリーグ「アルスヴェンスカン」で出場した試合数は、中央値23(四分位範囲6~76)だった。サッカー選手は一般男性に比較して収入が高く、徴兵検査時に評価されていたストレス回復力、筋力、および心肺能力のスコアが高かった。

サッカー選手はアルコール関連障害のリスクが約3割低い

平均追跡期間27.2年の間に、257人(4.3%)のサッカー選手と、一般男性3,528人(6.3%)にアルコール関連障害の罹患を表す記録が確認された。共変量を調整後、サッカー選手は29%低リスクであることが示された(HR0.71〈95%CI;0.62~0.81〉)。

古い時代はサッカー選手のほうがハイリスクの傾向にあった

時代的な変遷をみると、1950年代以前のサッカー選手は非有意ながら、アルコール関連障害のリスクが高い傾向が認められ、その後、一般住民とのリスク差が少なくなり、1960年代中盤からは一般住民よりも有意に低リスクとなって、2019年まで続いていた。

60代中盤からリスク差か非有意となり、75歳以降で逆転

続いて年齢との関係をみると、60代中盤まではサッカー選手のほうが有意に低リスクであり、その後は有意性が消失し、75歳からはサッカー選手のほうが有意にハイリスクとなっていた。ただし、高齢のサッカー選手がハイリスクとなる理由について著者は、一般男性の中に存在しているアルコール関連障害の患者の多くが75歳以前に亡くなったことによる影響だろうと推察している。

試合パフォーマンスとは有意な関連なし

サッカー選手のみを対象に、アルコール関連障害の罹患と、試合数、出場シーズン数、得点率との関連を検討した結果、それらのパフォーマンス指標が高い選手ではアルコール関連障害の罹患率が低い傾向にあったが、全体としては有意な関連が認められなかった。

他の物資使用障害のリスクもサッカー選手は低い

副次的に評価されたアルコール以外の物質使用障害のリスクについては、主解析の結果と同様に、サッカー選手のほうが有意に低リスクだった(HR0.22〈95%CI;0.15~0.34〉)。

感度分析の結果もほぼ同様

感度分析として、50歳未満のみでの解析、収入のない対象者を除外した解析、徴兵検査時の認知機能やストレス回復力を調整した解析、BMI・筋力・心肺機能を調整した解析などを施行。それらのいずれも結果は主解析と大きく変わらなかった。

以上より結論は、「スウェーデンのトップリーグでプレーした男子サッカー選手は、一般男性に比較してアルコール関連障害のリスクが有意に低かった」とまとめられている。その潜在的なメカニズムとして、エリートレベルでのキャリアはアルコール摂取量が多いことと両立しないためではないかとの考察が加えられている。

なお、1950年代以前の選手は非有意ながらアルコール関連障害のリスクが一般男性より高かったことについては、当時の同国のサッカー界の有力なスポンサーがアルコール関連業界であったことと関係があるのではないかとのことだ。

文献情報

原題のタイトルは、「Alcohol related disorders among elite male football players in Sweden: nationwide cohort study」。〔BMJ. 2022 Dec 21;379:e074093〕
原文はこちら(BMJ Publishing Group)

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