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ティーンのビタミンD濃度と食事・身体活動との関連 スウェーデンの全国調査

ビタミンDの状態は日光曝露と食事の双方により左右されるため、なかなか一貫性のある結果が得られていない。また、ビタミンDは骨代謝という側面からの研究が中心であるため、研究対象が高齢者であることが多い。これに対して昨年、北欧の国、スウェーデンから、ティーンエージャーを対象として、食事と身体活動量と血漿ビタミン濃度との関係を解析した研究結果が報告されている。

ティーンのビタミンD濃度と食事・身体活動との関連 スウェーデンの全国調査

北欧諸国でビタミンD強化政策が始まる以前の調査結果を解析

ビタミンDは、カルシウムやリンの代謝にかかわり、骨格と歯の石灰化に重要。ビタミンD欠乏が顕著な場合、子どもにはくる病と成人には骨粗鬆症を引き起こす。ただし近年、ビタミンD受容体が骨格以外にも全身に発現していること、がん、心血管疾患、高血圧、2型糖尿病、免疫応答や感染症、メンタルヘルス状態など、さまざまな疾患と関連のあることがわかってきている。ただし、骨代謝との関連に比べると、それらに関する知見は研究がまだ少ないこともあり、十分なコンセンサスに至っていないものもある。

血漿中のビタミンD濃度は、日光への曝露と食事によって規定される。十分な日光曝露があれば食事由来のビタミンの必要性は高くない。しかし、スウェーデンのような高緯度に位置する国では、ビタミンDの皮膚での合成は低く、食事への依存が大きくなる。

そのため同国では、他の北欧諸国と同様に、2018年に食品中のビタミンD含有量を強化していく政策決定をしている。今回紹介する研究は、その政策決定が行われる前の2016~17年に、同国食品庁が実施した全国規模の横断調査の結果を解析したもの。

研究参加者は、スウェーデン全土の学校から募集され、5年生(平均年齢12.5歳)、8年生(同14.5歳)、11年生(17.9歳)が参加した。ウェブ経由のアンケートにより食習慣やライフスタイルが把握され、また身体活動量については3軸加速度計を7日間連続して装着して評価。

無作為に抽出された学校の生徒、計5,145人に回答協力を依頼し、3,477人(68%)がアンケートへの回答を開始して、3,099人(60%)が回答を完了した。アンケート調査と血液検体の採取が完了し双方のデータを利用可能だったのは1,105人(46%)だった。なお、栄養素摂取量は連続していない2日の記録を基に把握した。

18歳男子の6割以上がビタミンD低値

BMIを年齢・性別にみると、各カテゴリーの15~28%が過体重または肥満であり、最年長の男子でその割合が最も高かった。多くの生徒は都市部の居住者で、かつ大半の生徒はスウェーデンで生まれていた。

ビタミンD摂取量と血漿濃度との間に正相関

血漿25(OH)Dが50nmol/L未満の場合をビタミンD低値と定義すると、5年生(12.5歳)男子は32.1%、女子は47.6%が該当し、8年生(14.5歳)は同順に37.6%、43.1%、11年生(17.9歳)は62.0%、42.8%であり、最年長の男子は過半数がビタミンD不足だった。

また、25(OH)Dが30nmol/L未満の場合をビタミンD欠乏症と定義すると、5年生男子は6.1%、女子は8.4%が該当し、8年生は6.8%、8.2%、11年生は16.1%、15.3%だった。

ビタミンD摂取量と血漿25(OH)濃度との間には正の相関が認められた(r=0.13、p<0.001)。その相関は女子(r=0.10)より男子(r=0.18)のほうがやや強かった。なお、25(OH)D濃度は全体平均でみると、女子が52.3±18.3nmol/L、男子は52.2±15.9nmol/Lであり、同等だった(p=0.97)。

ビタミンD摂取量と身体活動量

1日のビタミンDの摂取量は、5年生男子は5.9±2.3μg、女子は5.8±2.2μg、8年生は7.6±2.9μg、5.9±2.0μg、11年生は6.3±2.5μg、4.8±1.7μgだった。身体活動量については、1日60分以上の中等強度以上の運動という推奨が満たされていた割合でみると、5年生男子は45%、女子は31%、8年生は39%、女子は20%、11年生は36%、女子は19%だった。

1日60分以上の中等強度以上の運動という推奨を満たしている生徒と満たしていない生徒で二分し、25(OH)D濃度を比較した場合、すべての学年で25(OH)D濃度の有意差は観察されなかった。

ビタミンD摂取量、身体活動量以外の因子との関連

評価した背景因子との関連で、25(OH)D濃度に最も強い関連がみられたのは出生国であり、出生国がスウェーデン国外の場合に3学年すべてで血漿25(OH)D濃度が有意に低くかった(p<0.001)。とくに、シリア、アフガニスタン、イラクなどの出身者で、血漿25(OH)D濃度の低さが目立った。

そのほかに、評価した季節が夏季か冬季かで二分した場合、5年生のみ夏季に評価した正とのほうが25(OH)D濃度高値であり、他の学年では有意差はなかった。一方、評価時点から過去2カ月間の晴天の日数の多寡で二分した場合は、5年生のみ有意差がなく、8年生と11年生は、晴天が多い条件で測定されていた生徒のほうが25(OH)D濃度高値だった。

ビタミンDサプリメント摂取の有無で層別化した場合、8年生でのみ摂取群の25(OH)D濃度が有意に高値であり、他の学年の群間差は非有意だった。

座位行動の多さや強化食品の少なさが欠乏症と関連

そのほか、ビタミンD欠乏症と関連のある因子として、座位行動時間の長さ、ビタミンDが強化された乳製品や油脂の摂取量の少なさが有意に関連していることも明らかになった。

著者らは、スウェーデンのティーンエージャーを対象とする本研究において、「ビタミンD欠乏症は最も高齢の年齢層で最大の有病率だった」とまとめるとともに、「この研究結果は、2018年に会誌されたビタミンD強化政策が今後の変化に及ぼす影響をフォローアップしていく際の基礎資料となる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Vitamin D status and associations with diet, objectively measured physical activity patterns and background characteristics among adolescents in a representative national cross-sectional survey」。〔Public Health Nutr. 2022 Jun;25(6):1427-1437〕
原文はこちら(Cambridge University Press)

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