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世界レベルのエリート女子サッカー選手の消費エネルギー量、二重標識水法により明らかに

世界レベルのエリート女子サッカー選手の消費エネルギー量を、二重標識水法で測定した研究結果が昨年、米国スポーツ医学会の「Medicine and science in sports and exercise」に掲載されている。その要旨を紹介する。

世界レベルのエリート女子サッカー選手の消費エネルギー量、二重標識水法により明らかに

男子サッカーに比べて女子ではエビデンスがまだ少ない

成人の男子サッカー選手については、トレーニングや試合における身体的要求に関する研究が十分なされている。それとは対照的に、女子選手については、エリートレベルであっても十分な研究がなされていない。ただし、女子サッカー選手は利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)の状態にあることが多いとする報告もみられる。このような知見は、LEAは女子アスリートのトライアドのリスクと結びついているため、懸念材料と言える。それにもかかわらず、女子サッカー選手の総消費エネルギー量に関する研究は多くない。

総消費エネルギー量は、加速度計などを用いたり計算式を用いて推測する方法もあるが、信頼性が十分とは言えない。それに対して二重標識水法は分析に高度な技術を要するものの、消費エネルギー量評価のゴールドスタンダードとなっている。英国の研究グループによって行われた本研究では、この二重標識水法を用いて、同国の女子代表チームメンバー24人の総消費エネルギー量を、海外遠征を含む12日間連続で評価した。

多くの選手の摂取エネルギー量が消費エネルギー量を下回っている

この研究は2019年11月に実施された。トレーニング日4日、国際試合2日(ホームとアウェー)、移動2日で構成される9日間の国際トレーニングキャンプと、その9日目の移動日に続く3日間の休息日をあわせた12日間にわたって、二重標識水法により総消費エネルギー量が測定された。また、最初の4日間は摂取エネルギー量も評価された。このほか、体重計測、採尿検査、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)での体組成測定などを行った。なお、摂取エネルギー量の評価期間が連続12日ではなく最初の4日間のみであるのは、海外遠征に伴うロジスティック上の問題によるものだという。

24人は、キーパー3人、ディフェンス9人、ミッドフィルダー4人、アタッカー8人であり、身長168.1±5.9cm、体重62.1±4.7kg、体脂肪率20.6±3.7%、推算安静時代謝量(resting metabolic rate;RMR)1,486±66kcal/日。

総消費エネルギー量は2,693±432kcal、体重あたりでは43±6kcal/kg

全12日間、24人の平均総消費エネルギー量は1日あたり2,693±432kcal(範囲2,105~3,507kcal)、体重換算では43±6kcal/kg(同33~55kcal/kg)、除脂肪体重換算では54±6kcal/kg(同45~68kcal/kg)だった。9日間の国際トレーニングキャンプ中と、その後の3日間の休息日とで比較した場合に、有意差は認められなかった。また、ポジション別の比較でも有意差はみられなかった。

活動による消費エネルギー量は1,058±352kcal

総消費エネルギー量のうち、活動による消費エネルギー量(activity energy expenditure;AEE)は、1,058±352kcal(範囲155~1,549kcal)であり、総消費エネルギー量を安静時代謝量(RMR)で除した値である身体活動レベル(physical activity level;PAL)は1.79±0.24(1.4~2.2)だった。

摂取エネルギー量は消費エネルギーより800kcal以上マイナス

9日間の国際トレーニングキャンプの最初の4日間の24人の平均摂取エネルギー量は、1日あたり1,923±232kcal(範囲1,639~2,172kcal)だった。また、有意な日差変動も認められた。

最初の4日間の平均摂取エネルギー量と総消費エネルギー量とを比較すると、-825±419kcal/日のマイナスとなり、有意差が観察された(p<0.01)。ただし、このような負のエネルギーバランスであったにもかかわらず、この期間のみでは体重の変化は0.01±1.16kgであり、有意な変化を認めなかった(p=0.95)。

1日あたりの推算利用可能エネルギー(energy availability;EA)は18±9kcal/kg除脂肪体重(範囲2~36kcal)と計算され、全体として88%の選手のEAが30kcal/kg除脂肪体重未満だった。

総消費エネルギー量、活動による消費エネルギー量に関連のある因子

総消費エネルギー量は、体重(r2=0.56)、除脂肪体重(r2=0.65)、推算安静時代謝量(RMR.r2=0.51)と、有意な正の相関関係があった(いずれもp<0.01)。また、最初の4日間の総消費エネルギー量と、活動による消費エネルギー量との間にも、有意な正の相関関係が観察された(r2=0.97,p<0.01)。なお、総消費エネルギー量と身長の間には、有意な関係はなかった。

女子サッカー選手の相対的エネルギー要件は男子と同じ

著者によると本研究は、世界レベルの成人女子プロサッカー選手の総エネルギー消費量を詳細に検討した初の報告だという。上記の結果のまとめとして論文の結論では、「我々の研究結果は、プロサッカー選手のトレーニング日と試合日のエネルギー要件は、体重あたりの相対値でみた場合、男性と女性で同等であることを示唆している。また、今後に向けた実用的な視点からは、女子サッカー選手の健康とパフォーマンスを最適化するために、エネルギー補給、つまり、日々の炭水化物の摂取量の増加を目的とする、個別化された教育と行動変容介入に焦点を当てるべきではないか」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Energy Expenditure of Female International Standard Soccer Players: A Doubly Labeled Water Investigation」。〔Med Sci Sports Exerc. 2022 May 1;54(5):769-779〕
原文はこちら(American College of Sports Medicine)

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