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運動後の回復力をアップする栄養素・化合物 文献レビュー

ニュージーランドの研究者による、運動後の回復に焦点を当てた栄養素や栄養補助食品についてのレビュー論文が、昨秋公開されている。今回はその要旨を紹介する。

運動後の回復力をアップする栄養素・化合物 文献レビュー

古くから疾患治療に用いられてきたものは、運動後の回復にも有用な可能性

食事または栄養素の摂取が、運動誘発性筋損傷(exercise-induced muscle damage;EIMD)を抑制したり回復を促進することが知られている。この論文の著者らは、それらに関する広範な知見を文献レビューにより抽出して整理した。文献検索には、PubMed、Web of Science、Scopusを用いて2022年7月に実施。キーワードとして、運動、炎症、回復、筋肉損傷、栄養などを用いた。

論文には、抗炎症作用をもつもの、ポリフェノール、タンパク質とアミノ酸、ビタミン、脂肪酸、カフェインなどについて詳細な考察が述べられ、結論としては、「全体として、運動後の回復を改善するための食品および栄養化合物は有望であり、とくにタンパク質合成に不可欠な成分が不足している個人の場合(菜食主義者、ビタミンD欠乏症など)や抗酸化活性の高い個人(果物や野菜の摂取量が少ない)の場合にその可能性が高い。本レビューに含まれる化合物の多くは、古くから炎症や疾患に関連する状態の治療に用いられてきたものだが、運動後の回復にも応用できる可能性が高いことが示唆された」とまとめられている。

また、論文中に文献レビューによる考察の結果が表形式で示されている。ここではその一部を紹介する。なお、「主な作用」とは研究で有用性が検討され有意性が示されていたもの、「必要な量」とはそれらの研究のプロトコルに示されていた内容。

抗炎症作用のある化合物

ビタミンC
エビデンスレベル:中
主な作用:抗酸化作用、酸化ストレス抑制、筋損傷マーカー低下
必要な量:開始時に1,000mg、その後400mg/日、運動前
ビタミンE
エビデンスレベル:低
主な作用:低酸素条件での筋損傷・炎症マーカー低下
必要な量:250mg、運動前1時間

果実由来ポリフェノール

タルトチェリー
エビデンスレベル:高
主な作用:筋力・筋機能回復、筋肉痛抑制、炎症マーカー低下
必要な量:約600mgのポリフェノールを含む30mLの濃縮物を1日2回、運動前
ザクロ
エビデンスレベル:中~高
主な作用:筋力の回復、収縮期血圧低下、血流増加
必要な量:約650mgのポリフェノールを含む30mLの濃縮物を1日2回、運動の30分前
ブルーベーリー
エビデンスレベル:中
主な作用:筋力の回復
必要な量:200~420mgのポリフェノールを運動後に1日3回、翌日は2回
カシス
エビデンスレベル:中
主な作用:免疫応答の向上、筋力・機能の回復
必要な量:3.2mg/kg(アントシアニンとして80mg)、運動前1時間
クルクミン
エビデンスレベル:中~高
主な作用:筋損傷・酸化ストレスマーカーの低下
必要な量:90mg、運動前2時間
ビート根ジュース
エビデンスレベル:中
主な作用:筋肉痛・筋損傷・酸化ストレス・炎症マーカーの抑制
必要な量:150mL(ポリフェノール385mg、硝酸塩250mg)を1日2回、運動前2時間

タンパク質・アミノ酸

分岐鎖アミノ酸(BCAA)
エビデンスレベル:中~高
主な作用:筋肉痛・筋損傷マーカーの抑制
必要な量:80mg/kg、運動前50分
クレアチン一水和物
エビデンスレベル:中~高
主な作用:筋損傷マーカーの抑制、レジスタンス運動後の筋力回復
必要な量:20g/日(2~4回)、運動前
L-グルタミン
エビデンスレベル:中
主な作用:筋損傷マーカーの抑制、筋力回復
必要な量:0.3g/kg/日、運動前
L-カルニチン
エビデンスレベル:中
主な作用:筋損傷マーカーの抑制、筋力回復
必要な量:2g/日、運動前
タウリン
エビデンスレベル:中
主な作用:筋力回復
必要な量:0.1g/kg、1日2回

脂肪酸

ω-3脂肪酸
エビデンスレベル;高
主な作用;慢性効果として酸化ストレス・炎症の抑制、運動後の急性大量摂取では筋肉機能の改善、筋力回復
必要な量;慢性効果については1.8g(EPA324mg、DHA216mg)、急性効果については運動後に体重10kgあたり1g(EPA750mg、DHA50mg)

論文ではこれらのほかに、エビデンスレベルが「中」のものとしビタミンD、カフェイン、ニンジンなど、「低」のものとしてショウガ、ホップエキスなどが取り上げられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Nutritional Compounds to Improve Post-Exercise Recovery」。〔Nutrients. 2022 Nov 29;14(23):5069〕
原文はこちら(MDPI)

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