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自転車競技アスリートの食行動は乱れがち? 摂食障害のスコーピングレビュー

自転車競技アスリートの乱れた食行動や摂食障害に関するスコーピングレビューから、自転車競技はそれらのリスクの高い競技であるとする論文が報告された。英国の研究者によるもの。

自転車競技アスリートの食行動は乱れがち? 摂食障害のスコーピングレビュー

自転車競技アスリートのDE、EDリスクの実態は?

食事を抜いたり、総エネルギー量または特定の栄養素の摂取を制限したり、摂取後の嘔吐などの乱れた食行動(disordered eating;DE)は、臨床的な摂食障害(eating disorder;ED)発症の予測因子の可能性がある。乱れた食行動(DE)や摂食障害(ED)の有病率は、そのような行動をとっている本人が正しく申告しないことが少なくないため、正確な把握が困難だ。しかしスポーツアスリートについては、体脂肪が少ないことによるパフォーマンス上のメリットや審美的評価などのために、意図的にトレーニング量に見合う食事を摂っていないことがあり、DEやEDの有病率が一般人口よりも高いと考えられている。

これまでに、自転車競技のアスリートの食行動に関する懸念も指摘されており、とくにロードレース選手でそのリスクが高いのではないかとされている。プロレベルのロードサイクリストは1年間に2万5,000~3万5,000kmを走行し、また山岳地帯で行われるクライマーというカテゴリーの選手は、パワーウェイトレシオ(power weight ratio;PWR.パワー体重比)をより高めようとする。

自転車競技選手は、やせることが成功のために重要だと認識していることが多く、DEやEDのリスクに対して脆弱と考えられる。ただし、この問題に関する学術的な知見は限られており、レビューはまだ行われていない。本論文の著者らは、このトピックに関するスコーピングレビューにより、現状の把握と今後に向けた推奨事項の抽出を試みた。なお、スコーピングレビューは、メタ解析などの詳細な検討をするほど十分な研究報告がない、比較的新しいトピックについて、全体像を把握するために行うレビューのこと。

PubMedなどから14報の報告を抽出

PubMed、SPORTDiscus、Web of Scienceという3種類の文献データベースを用いて、2022年9月に検索を実施。キーワードとして、摂食障害、サイクリスト、自転車競技、食習慣、拒食症、過食症などを用いた。包括基準は、査読システムのあるジャーナルに掲載された英語で執筆されている論文であり、公開された時期については制限を設けなかった。一方、除外基準は、全文が公開されていないもの、英語以外の言語で書かれているもの、灰色文献(商業ルートで入手困難な文献)など。

3種類の文献データベースから合計2,208報がヒット。重複削除後に2名の研究者が独立してタイトルとアブストラクトに基づくスクリーニングを実施。残った44報を全文精査して採否を検討した。意見の不一致は3人目の研究者を加えた討議により解決した。これらの手順は、システマティックレビューとメタ解析の優先報告で示されているスコーピングレビューのガイドライン(PRISMA-ScR)に則して行われた。

最終的に14件の研究報告が解析対象として残った。

スコーピングレビューのまとめと栄養指導の注意点

サイクリストのDE、EDのリスク

抽出された研究の全体的な主要テーマは、自転車競技はアスリートをDEまたはEDのリスクにさらすスポーツだとするものであり、他のスポーツと比較して有病率が高いのではないかという主張がなされていた。実際、論文中にリスト形式で示されている個々の研究で示された有病率は、高い値となっている。

ただし、この分野の研究における調査手法上の不均一性のため、有病率の値も一貫性が欠けている。また、著者らは、DEやEDというトピックがセンシティブなものであること、社会的不名誉と捉えられる傾向のあることなどのために、示されているそれらの数値も過少報告されたものである可能性があるとしている。

論文ではこれ以降、筋力を体重で除した値であるPWR、エネルギー要件とエネルギー可用性の低さ(low energy availability;LEA)、自転車競技の社会的環境、栄養サポート、DE・EDと運動依存症の関連というテーマに分けて考察が述べられ、最後に推奨事項がまとめられている。ここでは栄養サポートの項に記されていることの要旨を紹介する。

アスリートの知識の豊富さがリスクを表す可能性に留意を

栄養の専門職者は、アスリートから栄養に関する信頼できる情報源と見なされており、アスリートのDEやEDリスクのアセスメントやモニタリングといったサポートをなすべき立場にある。それにもかかわらず、専門的なアドバイスが否定的にみられたり、無視されることがある。例えば、サイクリストは栄養専門家の指導なしに食物摂取量を減らしてエネルギー不足を誘発する可能性が高いとの報告がある。

ただし、栄養に関する知識は、食習慣に影響を与える可能性のある修正可能な要因と考えられており、知識レベルの高さがアスリートの健康とパフォーマンスのための適切な食品の選択につながる可能性がある。それを表す一例として、競争力のある男性サイクリストを対象とする研究では、精度検証済みのスポーツ栄養知識質問票で評価したスコアが、EDリスクと逆相関する(r=-0.55、p=0.006)と報告されている。

それにもかかわらず、一方では一般集団を対象とした研究から、知識と実践に反対の関連性が存在する可能性が示唆されている。つまり、栄養に関する知識が豊富な人ほど、DE行動や身体イメージの問題に対して脆弱であるかもしれない。このような関連を説明し得る仮説は、そのような行動を示す個人のほうが、栄養に関する情報をより積極的に求めようとするためではないかというものだ。

栄養指導にあたるスタッフは、ケアを受ける個人の知識レベルを確認することの重要性もさることながら、時にそれらの知識がDE行動と関連したものであることに注意する必要がある。

文献情報

原題のタイトルは、「Eating Disorders and Disordered Eating in Competitive Cycling: A Scoping Review」。〔Behav Sci (Basel). 2022 Dec 2;12(12):490〕
原文はこちら(MDPI)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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