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18〜19歳で超加工食品の摂取が多いと握力が弱く、未加工食品の摂取量が多いと強い

食生活と握力との間に有意な関連のあることが報告された。18歳〜19歳を対象とする研究で、未加工食品の摂取量が多い群は握力が強く、超加工食品の摂取量が多い群は握力が弱いことが示されたという。ブラジル発の研究。

18〜19歳で超加工食品の摂取が多いと握力が弱く、未加工食品の摂取量が多いと強い

健康リスクと握力

握力は非侵襲的に簡単に測定でき、死亡リスクと逆相関する信頼性の高い健康関連指標として位置づけられている。サルコペニアの診断で筋力を評価する指標としても採用され、国内では介護予防のためのフレイル健診の評価項目にも含まれている。その握力を規定する因子として、年齢、性別、体格、身体活動のほかに、栄養状態や食習慣の関与が報告されている。

そのうち食習慣については例えば、質の高いバランスのとれた食事が、握力の高さと相関するというデータがある。ただし、加工食品や超加工食品の摂取量と握力との関連はこれまでのところ調査されていない。今回取り上げる論文は、この点に焦点を当ててティーンエージャーで研究した結果の報告。

18~19歳の食習慣と握力との関連を解析

この研究は、ブラジル北東部のマラニョン州で行われた出生コホート研究の参加者を対象に実施された。解析対象者数は18~19歳の2,433人で、女子52.1%。

未加工食品、加工食品、超加工食品の摂取量は、半定量化された食物摂取頻度調査票(food frequency questionnaire;FFQ)により把握した食品摂取量を、NOVA食品分類に基づいて分類した。なお、NOVA分類では食品を以下の4群に分類しており、本研究ではグループ1と3、4の摂取量をそれぞれ三分位で3群に分けて、握力との関連を比較検討している。

グループ1は未加工または最小限の加工を施した食品。グループ2は、グループ1の食品の加工によって得られ、グループ1の食品を摂取するために用いられる加工食材。グループ3は、グループ1の食品にグループ2の成分を加えて加工された食品。グループ4は、加水分解、水素添加加工、成型、化学的修飾などによって作られた超加工食品。

なお、共変量として、年齢、性別、人種/民族、教育歴、喫煙・飲酒習慣、社会経済的地位、職業の有無、大うつ病のエピソードの有無が調査されている。

未加工食品は握力をプラス、超加工食品はマイナスにする可能性

握力の全体平均は28±9.4Kgであり、男子は35.2±7.7Kg、女子は21.4±4.8Kgだった(p<0.001)。

前記の共変量を調整し、未加工食品、加工食品、超加工食品の摂取量それぞれの第1三分位群を基準として他群の握力を比較したところ、男子・女子ともに未加工食品の摂取量が多いと握力が強いという有意な関連が認められ、かつ、男子では超加工食品の摂取量が多いと握力が弱いという有意な関連が認められた。加工食品の摂取量の多寡は握力と有意な関連が認められなかった。

詳細は以下のとおり。

未加工食品の摂取量と握力の関連

男子では第2三分位群でも有意に握力が強い

男児では、未加工食品の摂取量の第1三分位群に比較して、第3三分位群(β=1.95〈95%CI;0.80~3.10〉)だけでなく、第2三分位群(β=1.37〈同0.20~2.54〉)も有意に握力が強かった。

女子は第3三分位群で有意に握力が強い

女子では第1三分位群に比較して、第3三分位群(β=0.76〈0.05~1.46〉)は握力が有意に強かった。第2三分位群は非有意だった(β=0.59〈-0.10~1.29〉)。

加工食品の摂取量と握力の関連

男子では有意な関連なし

男子では、加工食品の摂取量の第1三分位群に比較して、第2三分位群(β=0.50〈-0.67~1.68〉)、第3三分位群(β=0.80〈-0.33~1.95〉)であり、いずれも有意な群間差がなかった。

女子も有意な関連なし

女子も同様に、第2三分位群(β=0.01〈-0.67~0.69〉)、第3三分位群(β=-0.63〈-1.35~0.07〉)であり、いずれも有意な群間差がなかった。

超加工食品の摂取量と握力の関連

男子では第3三分位群で有意に握力が弱い

男子では、超加工食品の摂取量の第1三分位群に比較して、第3三分位群(β=-2.38〈-3.53~-1.23〉)は有意に握力が弱かった。第2三分位群は非有意だった(β=-0.32〈-1.42~0.78〉)。

女子は有意な関連なし

女子では、第2三分位群(β=0.04〈-0.67~0.76〉)、第3三分位群(β=0.34〈-1.05~0.37〉)であり、いずれも有意な群間差がなかった。

未加工食品を増やし超加工食品を増やすことが握力を高める可能性

これらの結果を基に著者らは、「未加工食品を調理して摂取し、超加工食品の摂取は控えるという健康的な食習慣が、多くの健康アウトカムとの関連が示されている握力の維持または上昇につながり、生涯を通じた諸機能の維持・向上と疾患リスクに影響を与えるのではないか」と結論を述べている。

なお、本研究は横断研究であるため因果関係や関連のメカニズムは不明だが、論文中では「超加工食品の摂取量が多いと肥満のリスクが上昇することが既報研究で示されている。肥満は筋力に負の影響を及ぼすことがあることから、示された結果の一部は肥満が媒介しているのではないか」との考察が加えられている。

文献情報

原題のタイトルは、「The consumption of culinary preparations and ultra-processed food is associated with handgrip strength in teenagers」。〔Nutr J. 2022 Oct 22;21(1):66〕
原文はこちら(Springer Nature)

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