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唐辛子の成分カプサイシンは筋持久力を高めるが、有酸素持久力への効果は不確か

唐辛子の辛味成分であるカプサイシンと、辛くない唐辛子の成分であるカプシエートの持久力パフォーマンスへの影響に関するメタ解析の結果が報告された。筋肉の持久力に対しては有意な影響が認められたが、有酸素運動持久力に対しての影響は曖昧とのことだ。

唐辛子の成分カプサイシンは筋持久力を高めるが、有酸素持久力への効果は不確か

カプサイシンとカプシエートの有用性をメタ解析で検討

カプサイシンは、唐辛子やその他の辛い食べ物に含まれている天然の刺激性化合物。一方、カプシエートは辛味のない唐辛子に含まれているカプサイシンの類似体。どちらも、脂肪の酸化を亢進させエネルギー産生を増やすことが知られており、また一酸化窒素合成を刺激し血管拡張作用を発揮して、組織への血流を増加させる可能性も報告されている。これらの作用から、スポーツパフォーマンスを向上させる可能性があり、そのような視点での研究も進められている。

これまでのところ、動物実験ではカプサイシン摂取により持久力が向上することが確認されているが、ヒト対象の研究の結果は一貫性が欠けている。それでも最近報告されたレビューでは、カプサイシンとカプシエートにはエルゴジェニック効果があると結論づけている。ただしそのレビューはナラティブレビューであって、エビデンスレベルは高くない。さらにそのレビューが発表された後にも、カプサイシンとカプシエートに関する新たな研究報告が発表されている。

このような状況を背景として本論文の著者らは、カプサイシンとカプシエートによるスポーツパフォーマンスへの影響を、システマティックレビューとメタ解析により検討した。

7種の文献データベースから14件の研究を抽出

システマティックレビューとメタ解析に関する優先報告項目(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses;PRISMA)に準拠して、Academic Search Elite、Networked Digital Library of Thes and Dissertations、Open Access Thes and Dissertations、PubMed/MEDLINE、Scopus、SPORTDiscus、Web of Scienceという七つの文献データベースを利用した文献検索が、2022年7月15日に実施された。適格基準は、健康な成人を対象として行われた、カプサイシンまたはカプシエートの有酸素持久力または筋持久力をプラセボ対象で検討した研究であり、英語で執筆されている論文。なお、カプサイシンとカプシエートは辛味だけが異なり、化学構造式はほぼ同じで影響は同等と考えられるが、カプシエートを用いた研究を除外した解析も感度分析として実施した。

一次検索で117報がヒットし98報はタイトルとアブストラクトに基づくスクリーニングで除外。残った19報について全文精査を行い、動物モデルでの検討など6報を除外し13件を抽出。その13件の論文の参考文献532報を対象に二次検索を実施。うち1件が適格基準を満たし、最終的に合計14報をメタ解析の対象とした。研究参加者数は計183人だった。

有酸素持久力と筋持久力とで異なる結果

有酸素持久力には有意な影響なし

有酸素持久力を検討した研究は7件で、合計参加者数は94人(女性5人、男性89人)だった。そのうち5件の研究は、カプサイシンを運動の45~50分前に1.2mg、7.8mg、12mgを摂取、2件はカプシエートを運動の45分前に12mgを摂取する介入が行われていた。評価指標は、4件がランニングまたは自転車により疲労困憊に至るまでの時間を評価、3件はタイムトライアルであり、また7件すべてで自覚的運動強度(Rate of Perceived Exertion;RPE)が評価されてした。

7件中、カプサイシン優位とするものとプラセボ優位とするものがそれぞれ2件あり、他の3件は有意差なしであり、メタ解析の結果、有意差は認められなかった(Cohen's d=0.04〈95%CI;-0.16~0.2。効果量;ごくわずか〉、p=0.695、I2=72%〈異質性;中〉)。

感度分析として行った、カプシエートを用いた2件の研究を除外した解析でも、結果はかわらず非有意だった。サブグループ解析として、評価指標別に解析した結果も同様に、タイムトライアル、疲労困憊に至るまでの時間、自覚的運動強度(RPE)のいずれについても、有意差はみられなかった。

筋持久力は有意にアップ

筋持久力を検討した研究は7件で、合計参加者数は89人(女性5人、男性84人)だった。そのうち5件の研究は、カプサイシンを運動の45分前に1.2mg、12mg、24mgを摂取、2件はカプシエートを運動の45分前に6mg、12mgを摂取する介入が行われていた。評価指標としては、1RMの70%でのレジスタンス運動(スクワット、レッグエクステンション、ベンチプレス)で継続不能になるまでの回数などが用いられ、4件はRPEも評価していた。

7件中、カプサイシン/カプシエート優位とするものが2件で、プラセボ優位とするものはなかった。メタ解析の結果、カプサイシン/カプシエートの筋持久力に対する有意なエルゴジェニック効果が認められた(d=0.27〈95%CI;0.10~0.43。効果量;小〉、p=0.002、I2=9%〈異質性;低〉)。

感度分析として行った、カプシエートを用いた2件の研究を除外した解析でも、結果はかわらず有意性が維持されていた。また、評価指標別のサブグループ解析もすべて有意であり、カプサイシン/カプシエート優位という結果だった。

以上より著者らは、「カプサイシン/カプシエートの摂取は筋持久力を高めるが、有酸素持久力への影響はあまり明確ではない」と結論づけている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of Capsaicin and Capsiate on Endurance Performance: A Meta-Analysis」。〔Nutrients. 2022 Oct 28;14(21):4531〕
原文はこちら(MDPI)

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