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コロナ禍で子どもの神経性やせ症が増加したまま高止まりの状態 国立成育医療研究センター

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下で、食事を食べられなくなる神経性やせ症の子どもが増加し、2020年度に引き続き2021年度も外来患者数、入院患者数ともに高止まりしている実態が報告された。一方で、摂食障害の治療を提供可能な医療機関の不足も明らかになったという。国立成育医療研究センターが行った、新型コロナウイルス感染症流行下の子どもの心の実態調査の結果であり、同センターのサイトにプレスリリースが掲載された。

コロナ禍で子どもの神経性やせ症が増加したまま高止まりの状態 国立成育医療研究センター

調査のポイント

  • COVID-19パンデミック(コロナ禍)で、食事を食べられなくなる神経性食欲不振(神経性やせ症)※1が増加し、2020年度に引き続き2021年度も外来患者数、入院患者数ともに高止まりしたままだった。
  • しかし、摂食障害の患者のための病床数が、2020年度に引き続き不足していることがわわかった。摂食障害の病床充足率(現時点で摂食障害で入院している患者数÷摂食障害の入院治療のために利用できる病床数×100)は、2019年度と比べ、2020年度、2021年度に高止まり、または増加している病院が多く、中には300%を超える病床充足率の病院もあった※2。摂食障害を治療できる医療機関が少ないこともあり、特定の病院に入院患者が集中していることが推測される。
  • 神経性やせ症の患者増加の背景には、新型コロナ感染症の流行による生活環境の変化に伴うストレス、感染拡大による休校・学級閉鎖、行事などのアクティビティーが中止になったこと、新型コロナウイルス感染症への不安などがあると推測される。
  • コロナ太り対策のダイエット特集の報道やSNSでの情報、または運動を推奨する教員や保護者などからのアドバイスに、子どもたちが過度に影響を受けた可能性も考えられる。

※1 神経性やせ症とは、摂食障害の一つ。極端に食事制限をしたり、過剰な食事後に吐き出したり、過剰な運動を行うなどして、正常体重より明らかに低い状態になる疾患。病気が進行すると、日常生活に支障をきたすこともある。アメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)では、(1)正常の下限を下回る低体重、(2)肥満恐怖あるいは体重増加を妨げる行動の持続、(3)自己評価に体型が不相応な影響を受け、低体重の深刻さが認識できないなどの特徴が挙げられている。
※2 摂食障害の患者のための病床数に基準があるわけではなく、それぞれの病院ごとにおおまかに決めている。病床数不足の参考データとして記載したもの。

調査の背景と目的

新型コロナウイルス感染症の流行で、子どもたちの生活も大きく変わり、長期化によって心にもさまざまな影響を及ぼしている。そこで、同センターが行っている子どもの心の診療ネットワーク事業※3では、コロナ禍の子どもの心の実態調査を把握するため、2022年4~5月末に本調査を実施した。子どもの心の診療ネットワーク事業とオブザーバー協力機関の全国30医療機関(31診療科)にアンケートを送付し、20歳未満の患者について回答を得た。なお、神経性やせ症と神経性過食症を合算で回答した2機関、および単年度分のみのデータ提出だった2機関は集計から除外し、3年度分の推移がわかる26病院(27科)のデータをまとめた。

※3 子どもの心の診療ネットワーク事業では、都道府県などの地方自治体が主体となり、事業の主導的な役割を担う拠点病院を中心に、地域の病院・児童相談所・保健所・発達障害者支援センター・療育施設・福祉施設・学校等の教育機関・警察などが連携して子どもたちの心のケアを行っている。また、地域でのよりよい診療のため、子どもの心を専門的に診療できる医師や専門職の育成や、地域住民に向けた子どもの心の問題に関する正しい知識の普及を実施。さらに、地域内のみならず、事業に参加している自治体間の連携も強化され、互いに抱える問題や実施事業に関する情報共有も盛んに行われている。国立成育医療研究センターは中央拠点病院となり、この事業を運営している。

コロナ流行前の2019年度とコロナ禍の2020年度、2021年度を比較。2020年度に増加していた神経性やせ症の初診外来患者数(図1)と新入院患者数(図2)は、2021年度も男児、女児ともに減少することなく高止まりであることが判明した。コロナ禍でのストレスや不安が影響していると推測される。

摂食障害の子どもや青年の病床数が2020年度に引き続き不足していることも判明し、摂食障害を治療できる医療機関の拡充が求められる。また、家庭や教育機関では、子どもの食欲や体重の減少に気を配り、深刻な状況になる前に医療機関の受診につなげることが必要。

図1 神経性やせ症の初診外来患者数(有効回答数:24医療機関、25診療科)

神経性やせ症の初診外来患者数

質問項目ごとに有効回答数が異なる。例えば、神経性やせ症と神経性過食症を合算で回答した病院などは初診外来患者数、新入院患者数の集計から除き、単年度分のみのデータを提出した医療機関は集計から除外している
(出典:国立成育医療研究センター)

図2 神経性やせ症の新入院患者数(有効回答数:19医療機関)

神経性やせ症の新入院患者数

(出典:国立成育医療研究センター)

今後の展望・発表者のコメント

  • コロナ禍の長期化で、2020年度と変わらず神経性やせ症の患者数が高止まりしている状況で、入院病床数を確保することが必要になっている。また摂食障害を診察できる医療機関の拡充も求められている。
  • 神経性やせ症の場合、本人が病気を否認して医療機関での受診が遅れがち。子どもの食欲や体重の減少に家族や教育機関で気を配り、深刻な状態になる前に、まずは内科、小児科などのかかりつけ医を受診することが必要。

プレスリリース

2021年度コロナ禍の子どもの心の実態調査 摂食障害の「神経性やせ症」がコロナ禍で増加したまま高止まり(国立成育医療研究センター)

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