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寒さを利用した代謝改善には夕方より朝の運動が良い可能性 寒冷誘発性熱産生の日内変動の検討

寒冷誘発性熱産生の日内変動を検討した結果、男性と女性とで異なる変動を示したとするデータが報告された。男性は夕方よりも朝に、寒冷暴露によるエネルギー消費が大きくなるが女性ではそのような傾向が認められず、一方、脂質代謝への影響は女性で強く認められたという。著者らは、代謝改善のために運動をするなら朝の寒冷な環境下で行うほうが、より効果的と言えるのではないかと述べている。

寒さを利用した代謝改善には夕方より朝の運動が良い可能性 寒冷誘発性熱産生の日内変動の検討

寒冷誘発性熱産生にも日内変動がある

骨格筋と褐色脂肪組織の熱産生を、寒冷暴露による交感神経活性化を介して刺激し、代謝を改善する可能性に関する研究が、近年続けられている。寒冷暴露は褐色脂肪組織での脂肪酸とグルコースの酸化を促進し、エネルギー消費を増やすことが報告されており、また末梢でのインスリン抵抗性改善作用も報告されている。褐色脂肪組織の代謝活性が内臓脂肪量や2型糖尿病の有病率と逆相関することなども知られている。ただし、ヒトの褐色脂肪組織は体重の1.5%程度であり、主に鎖骨上窩部に限られている。

興味深いことに、マウスでは褐色脂肪細胞の代謝活性がサーカディアンリズム(1日24時間周期の生理的な活動。概日リズム)とともに変化するというデータがある。具体的には、暗くなると、すなわちマウスの活動期に入るとともに褐色脂肪組織の活性が高まるという。今回紹介する論文は、そのような現象がヒトでも生じているのかを、性別に検討した研究。

朝と夕方の寒冷誘発性熱産生をクロスオーバー法で検討

研究対象は、24人の非肥満成人で男性と女性が各12人。男性は22.8±1.0歳、BMI22.0±0.6、体脂肪率13.7±1.0%、女性は21.4±0.9歳、BMI22.5±0.6、体脂肪率26.7±1.2%。内分泌疾患や腎疾患患者、喫煙者、妊婦、最近の体重変化、過去2週間以内の夜勤や時差のある移動、褐色脂肪の活性に影響を及ぼし得る薬剤の処方などに該当する人は除外されている。

研究デザインはクロスオーバー法で、後述の寒冷刺激試験を朝に試行する条件と、夕方に試行する条件を設定。どちらを先に行うかは無作為化した。ただし、研究開始後に新型コロナウイルス感染症パンデミックが発生し研究参加者の一部を入れ替えたため、無作為化はしたものの試行順序に偏りが生じている。

各条件での試行の前48時間からは激しい運動を禁止し、24時間前からはアルコールとカフェインの摂取を禁止。また、試行日は研究が終了するまで絶食(水のみ可)とした。

朝の試行は7時から、夕方の試行は19時から開始。試行手順は、水で満たされたマットに仰臥してもらい、まず32°Cの温水を45分間還流しからだを温め、その後に水温を10分ごとに5°Cずつ下げていき、水温が9°Cに至るまで、または被験者の体に震えが生じるまで続けるというもの。その後、震えによって冷却を止めた場合は、震えが止まるまで徐々に水温を上昇させた。水温が9°Cに至って冷却を止めた場合は、水温を2~3°C上昇させた。その後は90分間にわたり、「安定した低温フェーズ」として観察を続けた。

評価項目は、間接熱量測定によるエネルギー消費、褐色脂肪組織の活性の代替指標として鎖骨上窩部の皮膚温度、および脂質代謝関連検査値であり、そのほかにクロノタイプ(朝型か夜型か)の聞き取り、ピッツバーグ睡眠質問票による睡眠の質の評価などを行った。なお、クロノタイプや睡眠の質に有意な性差はなかつた。

寒冷刺激による代謝改善を期待するなら、夕方より朝が良い可能性

それでは、この検討の結果、明らかになった主なポイントとして述べられていることの一部を紹介していく。

震えが起き始めるまでの所要時間や水温の違い

男性では、冷却開始から震えが生じるまでの時間は、有意水準未満ながら、夕方よりも朝の方が長い傾向にあった(52±3 vs 46±4分、p=0.07)。しかし、震えが生じる水温は朝と夕方で差がなく(11±1 vs 13±1°、p=0.17)、「安定した低温フェーズ」の最終時点の水温も同等だった(17±1 vs 18±1°C、p=0.38)。

一方、女性では、冷却開始から震えが生じるまでの時間は、夕方よりも朝の方が有意に長かった(46±4 vs 35±4分分、p=0.04)。また、夕方よりも朝のほうが、震えを生じる温度が低く(13±1 vs 16±1、p=0.03)、「安定した低温フェーズ」の最終時点の水温も朝のほうが有意に低かった(13±1 vs 19±1、p=0.001)。

寒冷誘発性熱産生は、男性のみ、夕方よりも朝のほうが高い

次に、寒冷暴露による熱産生の増加は、男性では朝と夕方とで異なり、夕方よりも朝の方が高かった(+54±10 vs +30±7%、p=0.05)。女性は朝と夕方で同等だった(+37±9 vs +30±10%、p=0.42)。なお、呼吸交換比(respiratory exchange ratio;RER)については、男性、女性ともに冷却中と安定した低温フェーズとで有意差がなかった。

鎖骨上窩部の皮膚温度は、男性のみで朝の寒冷暴露で上昇し、夕方に低下する

褐色脂肪組織の熱発生の代替指標として評価した鎖骨上窩部の皮膚温度は、男性では、朝は寒冷暴露後に上昇して夕方は低下した(+0.2±0.1 vs -0.2±0.2、p=0.05)。女性では、朝と夕方で同等だった(+0.3±0.2 vs +0.2±0.1、p=0.51)。

脂質代謝マーカーへの影響にも性差

男性では、遊離脂肪酸レベルは、朝の寒冷暴露後に増加したが、夕方は変化が少なかった(+90±18 vs +9±8%、p<0.001)。女性では、遊離脂肪酸(+94%±21 vs +20±5%、p=0.006)だけでなく、中性脂肪(+42±5 vs +29±4%、p=0.01)および総コレステロール(+17±2 vs +11±2%、p=0.05)も、夕方より朝の寒冷暴露後のほうが大きく増加していた。

これらの結果をもとに著者らは、「男性は概日リズムに従って夕方よりも朝のほうが寒冷誘発性熱産生が大きいことが示された。女性は寒冷誘発性熱産生の日内変動は観察されなかったが、夕方よりも朝のほうが耐寒性が高く、脂質代謝への影響も強いことが示された」と述べ、「代謝面の健康促進のために寒冷刺激を利用する場合には、夕方よりも朝にそれを行うほうが、そのメリットを得られる可能性が高いのではないか」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Cold-Induced Thermogenesis Shows a Diurnal Variation That Unfolds Differently in Males and Females」。〔J Clin Endocrinol Metab. 2022 May 17;107(6):1626-1635〕
原文はこちら(Oxford University Press)

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