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子どもたちの摂食障害予防に関する教師の考え方 オーストラリアの調査結果

学校の教師は、子どもたちの摂食障害の予防について強い関心をもっているものの、それに必要な知識は十分でないと感じているという調査結果がオーストラリアから報告された。また、教育によって負の影響が生じることを懸念する声も認められた。著者らは、学校で摂食障害の予防介入を行うためには、まず教育の現場の現状を把握することが重要であると述べている。

子どもたちの摂食障害予防に関する教師の考え方 オーストラリアの調査結果

摂食障害を防ぐ鍵は学校に?

摂食障害は、あらゆる年齢層で発症する可能性があるが、小児や若年者でリスクが高い。世界的な有病率は8.4%と報告されており、少ないものではなく、本研究が行われたオーストラリアでは青年期の有病率が22%に上るとするデータもある。摂食障害患者は早期死亡リスクが高く、医学的な合併症も好発することから、予防が重要とされる。

子どもたちの健康をサポートするうえで、学校の教師への期待は大きい。ただ、摂食障害の子どものサポートや発症予防について、教師は十分に準備の整った状態ではないとする研究結果が報告されている。さらに、学校教師が子どもたちの摂食障害をどのように捉えているのかを調査した研究自体が少ないという現状がある。

学校での摂食障害予防プログラムへの障壁や懸念が明らかに

今回取り上げる論文は、オーストラリアで実施された、摂食障害の予防に関する教師の認識やニーズを調査した結果の報告。調査対象は、現在学校で働いている18歳以上の専門スタッフであり、教室教師(一般的な教師)、保健体育教師、校長、副校長、特別支援クラスの教師、スクールカウンセラーなど。調査方法はオンラインによる横断調査であり、研究者らのソーシャルメディアを通じて回答協力を呼びかけ、スノーボール方式で回答者数を拡大した。

調査項目は31項目からなり、各質問に対して回答者は「はい」「いいえ」「わからない」の三者択一、または5段階のリッカートスケール(強い同意~強い否定)で選択回答した。

摂食障害のトレーニングを受けた教師は24%

60人が回答し、未完了の9人を除く51人の回答を解析対象とした。主な特徴は、年齢中央値41歳(四分位範囲32~50)、女性86.3%、教職歴中央値9年(同4~17)であり、小学教師が21.6%、中学教師が49.0%、両者での勤務者が29.4%。教育歴は大学卒が49.0%、大学院卒が39.2%だった。全体の43.1%が一般的な教師であり、ほかは、保健体育や自己啓発の教師が11.8%、校長9.8%、スクールカウンセラー19.6%など。

この対象において、摂食障害に関するトレーニングを受けたことがあると回答したのは24%だった。小学教師は中学教師に比べて、摂食障害に関するトレーニングを受けた割合が有意に低かった(p=0.04)。

以下、おもな調査項目の回答結果を紹介する。

摂食障害予防への参加意欲は高いが、知識に不安を感じている

摂食障害に関する知識の程度の自己認識

  • 非常に優れている:3.9%
  • 優れている:56.9%
  • どちらとも言えない:33.3%
  • 乏しい:5.9%
  • 全く乏しい:0%

摂食障害の予防に関する自信

  • 非常に強い自信がある:2.0%
  • 自身がある:39.2%
  • どちらとも言えない:41.2%
  • 自身がない:13.7%
  • 全く自信がない:3.9%

摂食障害の予防への参加の意欲

  • 非常に強い:54.9%
  • 強い:37.3%
  • どちらとも言えない:5.9%
  • 乏しい:2.0%
  • 全く乏しい:0%

以上より、学校の教師や専門スタッフの大多数が、子どもたちの摂食障害の予防に関心を寄せ意欲が高いことがわかった。しかしその一方で、知識が十分でないと考えている教師が多いこともわかった。なお、「摂食障害の予防において学校はその役割の一部か?」との質問には、80.4%が「はい」と答え、「いいえ」はわずか5.9%だった(わからないが13.7%)。

その他の回答の結果を含めて著者らは、以下のような考察を述べている。

学校での摂食障害予防教育の負の影響の懸念

回答者の24%は、学校での摂食障害予防プログラムの実施には、潜在的なマイナスの影響がある可能性を認識していた。その自由回答からは、「身体イメージと摂食行動の混乱に対する意識が高まり、逆にそれらの行動や態度を助長してしまう可能性がある」、「級友が自分の体のイメージに苦しんでいるのではないかという意識が高まることで、一部の生徒ではそれ以前には考えていなかった問題が発生する可能性がある。とはいえ、教育プログラムには、それを上回るメリットがあると考えている」などと記されていた。

身体イメージや体重管理、メディアリテラシーの教育が不十分

回答者の多くが、保健体育などの授業を通じて、身体活動(88%)や健康的な食事(81%)について教えることができていると回答した。しかし、身体イメージ(46%)、不健康な体重管理(27%)、メディアリテラシー(27%)などのトピックについては、その教育が重要だと認識されているにもかかわらず、教えることができていると考える教師は少なかった。

自由回答には、「それらの概念はレッスンに組み込まれているが、十分な時間を割いていないと思う」、「カリキュラムの一部として取り込むためには、教師の教育が必要だと思う」などの記述がみられた。

この領域の研究への男性の関与も重要

著者らは、本調査が新型コロナウイルス感染症パンデミック期間中に行われたことが影響し、比較的サンプル数が小さかったとしている。ただしそれだけではなく、このトピックに関する教育関係者の関心が高くないことも、回答者数が伸びなかったことに関係している可能性を述べている。また、回答者の大半が女性であったことに関連して、男性の摂食障害の有病率の上昇が報告されていることから、今後はこの領域への男性研究者の参画が重要となるとも付け加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「The Needs of School Professionals for Eating Disorder Prevention in Australian Schools: A Mixed-Methods Survey」。〔Children (Basel) . 2022 Dec 16;9(12):1979〕
原文はこちら(MDPI)

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