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卵の摂取による心血管疾患リスクへの影響は、飽和脂肪酸の摂取量によって異なる

卵の摂取量と心血管疾患(CVD)リスクとの関連は、飽和脂肪酸(SFA)の摂取量によって異なるのではないかとする研究結果が、ギリシャから報告された。SFAの摂取量が少ない人で、卵摂取量が多いこととCVDリスクの低さとの関連が顕著に認められるという。

卵の摂取による心血管疾患リスクへの影響は、飽和脂肪酸の摂取量によって異なる

卵は良いのか悪いのか

卵は栄養バランスに優れた食品として知られているが、コレステロールも多く含むことから脂質異常症を惹起し心血管疾患(cardiovascular disease;CVD)リスクを高める可能性があるとして、CVDリスク因子を有する対象には摂取を制限する指導が長らく行われていた。しかし近年、卵の摂取量と血清コレステロール値との関連についてのエビデンスが不足していること、さらに卵摂取量が多い人のほうがCVDリスクは低いという疫学データも示されるようになり、卵が見直されるようになっている。

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とはいえ、卵摂取量とCVDリスクとの関連の研究報告には一貫性がみられず、卵以外の食品の摂取状況や人種/民族など、研究対象の特性によって摂取の影響が異なるのではないかとする考え方もある。こうした背景のもと、本論文の研究者らは、地中海地方の一般住民を対象とする研究のデータを用いて、卵摂取量とCVDリスクとの関連を検討した。

アテネでの大規模前向きコホート研究のデータを解析

解析に用いられたのは、アテネの地域住民を対象として2001年にスタートした大規模前向きコホート研究「ATTICA研究」の参加者のうち、観察期間中のCVD発症が評価されていた2020人。なお、ATTICA研究参加者はベースライン登録時にCVDやその他の慢性疾患の既往者が除外されている。

アテネ大学疫学研究所が開発した精度検証済みの半定量式の食物摂取頻度調査(food frequency questionnaire;FFQ)を用いて156種類の食品の摂取量を評価。卵については1週間に1個未満の群(21.9%)、1~3個の群(41.5%)、4~7個の群(36.5%)という3群に分類。致死性/非致死性CVD(心筋梗塞、不安定狭心症、脳卒中)、心不全などで定義される複合エンドポイントの発生率を、この3群で検討した。また、副次的に心血管代謝リスク因子(高血圧・脂質異常症・糖尿病の新規発症)との関連を検討した。

卵摂取量が多い群でCVDリスクが低い

結果について、まず3群のベースラインデータを比較すると、年齢や性別、BMI、腹囲長、身体活動量、現喫煙者率、CVD家族歴、インスリン抵抗性、腎機能には有意差がなかった。それに対して、卵摂取量が多い群ほど地中海食スコアが高く飽和脂肪酸(SFA)摂取量が多いという有意な関連が認められた。一方、高血圧や脂質異常症の有病率は、卵摂取量が多い群ほど低値だった。糖尿病の有病率は有意差がなかった。

飽和脂肪酸(SFA)摂取量を調整すると関連が非有意に

観察期間10年で、317件のCVDイベントが発生。イベント発生率は、卵摂取量が最も少ない群で18%、摂取量が中程度の群で9%、最も多い群で8%であり、摂取量の最少群は最多群の約2倍多く発生していた(p=0.004)。

共変量未調整モデルでは、卵摂取量の最少群を基準として中程度群(HR0.40〈95%CI;0.21~0.75〉)、最多群(HR0.25〈0.08~0.75〉)ともに有意なCVDリスクの低下が認められた。年齢、性別、BMI、身体活動量、現喫煙、地中海食スコア、高血圧・脂質異常症・糖尿病の罹患、CVD家族歴を調整後も、卵摂取量の中程度群は引き続き有意なリスクの低さが観察されたが(HR0.53〈0.28~1.00〉)、摂取量の最多群は有意性が消失した(HR0.57〈0.29~1.15〉)。

次に、共変量としてさらに飽和脂肪酸(SFA)の摂取量を追加し解析した結果、卵摂取量の中程度群、最多群ともに、CVDリスクとの有意な関連がみられなかった。また、SFA摂取量と卵摂取量との間には、有意な交互作用が認められた(p=0.01)。

なお、副次的に解析した心血管代謝リスク因子(高血圧・脂質異常症・糖尿病の新規発症)との関連は、いずれも非有意だった。

SFA摂取量が少ない群は、卵摂取量が1個/日多いごとにCVDリスクが-45%

続いて、飽和脂肪酸(SFA)の摂取量の多寡(摂取エネルギー比10%未満/以上)で対象全体を二分して検討。

その結果、SFA摂取量の少ない群では卵摂取量最多群でCVDリスクが有意に低く(HR0.25〈0.07~0.86〉)、中程度群は非有意であり(HR0.68〈0.30~1.49〉)、一方、SFA摂取量の多い群では卵摂取量中程度群でCVDリスクが有意に低く(HR0.29〈0.08~1.00〉)、最多群は非有意だった(HR0.87〈0.29~2.57〉)。

また、卵摂取量を連続変数として解析すると、SFA摂取量の少ない群では、1日の卵摂取量が1個多いごとに10年間でのCVDリスクが45%低いという有意な関連が認められた(HR0.55〈0.32~0.93〉)。SFA摂取量の多い群では、このような関連がみられなかった(HR1.09〈0.61~1.95〉)。

植物性食品を中心に摂取している人では卵摂取がCVD抑制につながる

以上を基に著者らの結論は、「飽和脂肪酸の摂取量が少ない、植物性食品ベースの食生活を送っている人では、卵の摂取によって心血管イベント抑制効果を得られるようだ」とまとめられている。ただし、卵摂取量の多さとがん死リスクの高さを示した疫学データもあることから、卵摂取に関しては心血管疾患以外のアウトカムとの関連も考慮する必要があると述べている。また、卵以外のコレステロール供給源の摂取量も勘案する必要性についても言及している。

文献情報

原題のタイトルは、「Egg Consumption, Cardiovascular Disease and Cardiometabolic Risk Factors: The Interaction with Saturated Fatty Acids. Results from the ATTICA Cohort Study (2002–2012)」。〔Nutrients. 2022 Dec 12;14(24):5291〕
原文はこちら(MDPI)

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