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バスケットボール選手が短期トーナメントに出場する際の実践的栄養戦略を考察

例えば6日間といった短期間のバスケットボールのトーナメントに参加する際の栄養戦略を考察した、レビュー論文が発表された。試合前、試合中、試合後の栄養、遠征時の対策、サプリメントのエビデンスなどについてまとめられている。要旨を紹介する。

NCAA男性バスケ選手のシーズン前中後の栄養素摂取量、体組成、安静時代謝、呼吸商を比較した結果

バスケ短期トーナメントの特徴

論文ではまず、バスケットボールという競技の特徴と、短期国際ナーメントの特徴について触れている。まず、競技としてのバスケの特徴については、試合時間は1クォーターが10分または12分であり短いと思われることもあるが、試合中に頻繁に時計が止まるため実際の試合時間は長時間に及ぶこと、試合にはスピード、パワー、敏捷性、持久力、戦術眼など総合的なスキルが要求されること、20秒に1回、計約100回のスプリントが行われることなどのため、高強度の負荷が断続的に発生するとしている。また短期国際トーナメントの特徴としては、試合後の回復時間がごく短時間に限られるとしている。

著者によると、サッカーやラグビーの国際トーナメント参加のための栄養戦略や、バスケットボールについてもシーズン中の栄養戦略に関しては既にレビューが行われているが、バスケの短期国際トーナメントの栄養戦略についてはまだレビューがないという。紹介する論文はこれを背景としてまとめられたもの。

試合前・試合中・試合後の栄養戦略

短期トーナメントの試合前・中・後の栄養戦略については、既報研究を基に、以下のように述べられている(一部の抜粋)。

大会前

ガイドラインの推奨

トーナメントの24~48時間前に7~12g/kgのグリコーゲンローディングを行う。トーナメントの少なくとも8~12時間前に、水分補給状態を最適化する。試合前夜と2~4時間前に尿色をモニタリング。

実践的な適用

  • 食事や間食として、炭水化物が豊富な食べ物や飲み物を摂取する。主食の炭水化物の量を増やす代わりに、炭水化物な豊富な間食を追加することのほうが良い場合もある。
  • タンパク質を適度に摂取し、食物繊維と脂質の摂取を抑える。
  • 宿泊先でのケータリングでは、1日3食以外に間食の摂取を手配する。
  • トレーニング前後の軽食を計画する。
  • 食事と間食のたびに水分を摂取する。
  • 水分摂取用のボトルは選手ごとに個別化する。

試合前

ガイドラインの推奨

試合の3~4時間前に炭水化物の豊富な食事(1~4g/kg)、試合の1~2時間前に炭水化物が豊富な軽食。試合の3~4時間前に300~600mL、1~2時間前に200~250mL、15分前に200~250mLの水分摂取を考慮する。

実践的な適用

  • 試合前には慣れ親しんだ適度の食事と軽食。
  • トーナメントの事前にホテルのケータリングを手配しておく。
  • 試合前の食事では、パン、ジャガイモ、米、パスタ、果物などの炭水化物が豊富な食品を摂取する。プレートの残り半分は、タンパク質と低脂肪の乳製品としてバランスをとる。
  • 試合に備えて食事とともに水分を摂取する。
  • 筋肉のけいれんを起こしやすい場合は、クラッカーなどの塩分を含む食べ物を食べておくか、またはスポーツドリンクを飲む。
  • 起床後、試合の4、2、1時間前に尿色を確認し、色が薄くない場合は濃さに応じて0.25~1Lの水分を摂取する。

試合中

ガイドラインの推奨

炭水化物液の摂取またはマウスウォッシュ(30~60g/時)。

実践的な適用

  • 試合出場時間が長い選手は、ハーフタイムに少量の炭水化物食品を摂取して、後半に向けてエネルギーを補充する必要がある。
  • 具体的には、スポーツドリンク、スポーツバー、またはスポーツジェル。
  • 試合が中断するタイミング(タイムアウトや選手交代)では意識的に水分を摂取する。

試合後

ガイドラインの推奨

試合終了5~30分以内に1g/kg、4時間目までにさらに炭水化物を摂取。30分以内に0.3~0.4g/kgのタンパク質摂取。体重減1kgあたり1.5Lの水分を2~4時間で摂取。就寝前に30~40gのタンパク質を摂取。

実践的な適用

  • 試合後、直ちに回復のための軽食や飲み物を摂取できるように準備しておく。例えば、更衣室に向かう途中で炭水化物とタンパク質をそれぞれ3:1の割合で摂取する。
  • 食事代替飲料やスポーツバーでは、回復ニーズを満たすのに十分なタンパク質が得られるかもしれないが、炭水化物は十分に得られない。
  • 回復プロセスを継続するために、試合後2時間以内に追加のエネルギーと水分を、食事または間食として摂取する。
  • 4~5時間以内に、宿泊先で炭水化物が豊富な夕食を摂る。

遠征

  • 事前に現地での食べ物や食事のオプションを調べておく。
  • ホテルやレストランのメニューと、室内に冷蔵設備があるかどうかを確認しておく。
  • ホテルや競技会場の近辺の食料品店を調べておく。
  • サンドイッチ、軽食、低脂肪のオプションを注文可能なレストランを選ぶ。

サプリメント

論文では上記のほかに、スポーツサプリメントについてもまとめられている。

カフェイン

パフォーマンス向上を目的に、試合前1時間に3~6mg/kgをコーヒー、コーラ、スポーツドリンク、ジェルなどにより摂取。

重炭酸ナトリウム

パフォーマンス向上を目的に、試合前2~2.5時間に0.2~0.4g/kgを摂取。摂取により消化器症状を来す場合は、トーナメントの数日前から毎日少量を摂取。

硝酸塩/ビートジュース

パフォーマンス向上と回復の促進を目的に、試合前2.5~3時間に6~12mmolを摂取。トーナメント前の5~7日間摂取するとより効果的。

オメガ3脂肪酸

回復の促進を目的に、就寝前に2g/日摂取。

文献情報

原題のタイトルは、「Practical Nutrition Strategies to Support Basketball Performance during International Short-Term Tournaments: A Narrative Review」。〔Nutrients. 2022 Nov 20;14(22):4909〕
原文はこちら(MDPI)

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