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気持ち良く目覚め、気分良く1日をスタートするには? 遺伝・食事・運動の関連からわかったこと

朝は眠くて起きるのがつらい、無理して起きてもしばらくはボーっとして気分がのらない。そんな人に、良いアドバイスとなりそうな研究結果が発表された。前日に運動することや、朝食の複合炭水化物の割合を増やすと良いらしい。

気持ち良く目覚め、気分良く1日をスタートするには? 遺伝・食事・運動の関連からわかったこと

「覚醒レベルの高い朝」と関連のある因子を検討

「朝、気持ち良く目覚めたい。どうすればいい?」。この願いと疑問は普遍的なものと言えるかもしれない。今回紹介する論文も、そのような文章から始まっている(What factors will influence how you wake up tomorrow morning…)。覚醒レベルが高くないことは、身体がだるく感じ不快な気分につながるが、それだけでなく仕事や学習、トレーニングの効率が低下したり、仕事中の事故、トレーニング中の怪我のリスクを高めると考えられ、社会経済的または公衆衛生的な問題として捉える必要がある。

それにもかかわらず、「どうすれば朝、気持ち良く目覚めて覚醒レベルの高い状態になれるのか」という疑問の答えは、十分明らかになっているとは言えない。この論文の研究は、それを明らかにする目的で実施されたものであり、朝の目覚めの良さと関連する可能性のある因子として、遺伝や年齢などの変更不能の因子、身体活動や食事、睡眠時間、起床時刻などの変更可能な因子など、さまざまな因子との関連を検討している。

2週間連続で実生活における睡眠習慣と覚醒レベルを計測

この研究の参加者は、一卵性双生児340人、二卵性双生児134人、および非双生児359人で計833人。年齢は46.20±11.93歳で、女性が72.0%を占め、BMIは25.83±5.12であり、臥床時間は7.66±0.80時間、睡眠効率(臥床時間に占める睡眠時間の割合)は89.19±4.22%、入眠時刻は23時25分±57分だった。また、833人のうち英国在住者が749人、米国在住者が84人で、大半(89.7%)が白人だった。

参加者には2週間にわたって加速度計と連続血糖測定(CGM)センサーを装着して生活してもらい、身体活動量の変化や血糖変動を把握。また、すべての食事の摂取量を専用アプリに保存するとともに、覚醒レベルを0~100のビジュアルアナログスケールで記録してもらった。

朝食は8パターンを支給

朝食の組成とその日の覚醒レベルとの関連を検討するため、朝食については検査食を含めて標準化された8パターンが作成され、参加者の体重にあわせてエネルギー量を調整し、参加者ごとに異なる順序で提供された。メニューはマフィン、ミルクセーキ、ファイバーバー、プロテインシェークなどで構成されていた。なお、研究期間の初日に代謝チャレンジテストを施行し、別の日の早朝空腹時に経口ブドウ糖負荷試験(oral glucose tolerance test;OGTT)が施行された。

8パターンの食事の組成は以下のとおり。

英国の標準的な朝食
炭水化物:56.7%、脂質:39.8%、タンパク質:7.6%、食物繊維:2.2g
代謝チャレンジテスト
炭水化物:38.4%、脂質:53.3%、タンパク質:7.2%、食物繊維:2.3g
OGTT
炭水化物(ブドウ糖):100%(75.0g)
高炭水化物食
炭水化物:75.7%、脂質:16.1%、タンパク質:7.5%、食物繊維:1.7g
高脂肪食1
炭水化物:32.4%、脂質:62.6%、タンパク質:7.2%、食物繊維:1.1g
高脂肪食2
炭水化物:22.5%、脂質:70.6%、タンパク質:6.5%、食物繊維:0.8g
高繊維食
炭水化物:71.0%、脂質:21.7%、タンパク質:7.0%、食物繊維:15.3g
高タンパク食
炭水化物:56.9%、脂質:10.2%、タンパク質:32.5%、食物繊維:2.0g

覚醒レベルの75%は遺伝以外によって説明される

解析の結果、起床後の覚醒レベルの違いの25%は、遺伝的因子で説明可能であることがわかった。逆に言えば、75%は遺伝とは関係のないことが規定していると考えられた。

遺伝的因子以外で検討された項目の覚醒レベルとの主な関連は以下のとおり。なお、それぞれの変数、および性別とBMIの影響は、統計学的に調整されており、以下で示される有意な関係は、覚醒レベルに独立した関連があることを意味する。

睡眠効率は関連がなく、入眠時刻の遅さや睡眠時間が関連

前日の睡眠時間が長いほど覚醒レベルが高かった(β=0.90〈95%CI;0.59~1.20〉)。また、意外なことに、前日の入眠時刻が遅いことも、覚醒レベルの高さと関連していた(β=0.75〈0.33~1.16〉)。その一方で睡眠効率は有意な関連がなかった。

身体活動量の多さがプラス、中途覚醒の多さはマイナスの関連

加速度計で把握された24時間の活動量のうち、1時間あたりの活動量が多かった上位10時間の加速度の平均は、覚醒レベルの高さと関連していた(β=0.02〈0.00~0.03〉)。これは、前日の身体活動量の多さが、翌日の覚醒レベルの高さにつながると解釈される。

反対に、1時間あたりの活動量が低かった下位5時間の加速度の平均は、覚醒レベルの低さと関連していた(β=-0.21〈-0.36~-0.07〉)。これは、本来は身体活動を行わない睡眠中に中途覚醒し身体を動かしていることが、翌日の覚醒レベルの低さにつながると解釈される。

単純糖質の摂取は覚醒レベルを大きく低下させ、複合糖質は上昇させる

朝食の組成との関連では、高炭水化物(複合炭水化物)食を摂取した後の覚醒レベルが高く(β=1.42〈0.52~2.33〉)、反対に高タンパク食の摂取後は低かった(β=-1.36〈-2.43~-0.30〉)。高脂肪食や高繊維食は有意な関連がなかった。

ただ、食事ではないものの、覚醒レベルに最も強い影響を及ぼしたのはOGTTであり、覚醒レベルが大きく低下し(β=-6.97〈-7.95~-5.98〉)、単純糖質の摂取は眠気を誘発する可能性が示唆された。

朝食後の血糖上昇が覚醒レベルを下げる

朝食後の血糖値の高さは、覚醒レベルの低さと関連していた(β=-2.89〈-4.40~-1.39〉)。また、前夜の睡眠時刻から朝食までの時間が長いほど、覚醒レベルが高いという関連も認められた(β=2.03〈1.68~2.39〉)。

このほか、週末は覚醒レベルが低いこと(β=-1.66〈-2.34~-0.99〉)、高齢であるほど覚醒レベルが高いこと(β=0.39〈0.30~0.48〉)も明らかになった。著者らは、「我々の研究結果は、覚醒レベルには変更可能な多くの因子が関与していることを示している」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「How people wake up is associated with previous night’s sleep together with physical activity and food intake」。〔Nat Commun. 2022 Nov 19;13(1):7116〕
原文はこちら(Springer Nature)

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