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若年トライアスリートの栄養知識と食品の選択が、8週間のリモート指導で改善

エリートレベルにある若年トライアスロン選手に対し、リモートによる8週間の栄養指導の結果、トライアスロンに特化したスポーツ栄養の知識が向上したとする研究結果が、オーストラリアから報告された。果物や乳製品の摂取が増え、カルシウム摂取量が増えるという変化も認められたという。

若年トライアスリートの栄養知識と食品の選択が、8週間のリモート指導で改善

若いトライアスリートの食事・栄養の重要性

トライアスロンは最も身体的負荷の高い持久系スポーツとして位置づけられている。成人のトライアスリートにとっても、ふだんの食事管理が重要だが、未成年のトライアスリートの場合、トレーニングによる負荷だけでなく成長と発達のための栄養素の摂取が極めて重要となる。それにもかかわらず、未成年アスリートの食事は保護者や友人の影響を受けやすい。また、成人アスリートに比べて一般に栄養に関する知識が乏しく、食事にあてられる時間が限られていて、食費がかさむという問題があることもある。加えて、トライアスリートは全般的に、摂取エネルギー量が十分でなく、鉄やカルシウムも必要量を満たしていないことが多いと報告されている。

このような問題に加え、新型コロナウイルス感染症パンデミックによって、アスリートへの対面での栄養指導の機会が制限されるようになった。未成年アスリートの適切な食事摂取量は成長とともに変化するため、こまめなアレンジが必要とされ、栄養指導の欠如が長引くことの影響は成人より大きく、成長・発達の遅延、パフォーマンスの低下、怪我のリスクの増大などが考えられる。

これらを背景として、この論文の著者らは、エリートレベルの若年トライアアスリートに対するリモートでの栄養指導の有効性を検討した。

半数近くが世界レベルで活躍するエリートトライアスリートでの研究

リモートによるトライアスリート対象の栄養指導プログラム(triathlon australia performance health program;TAPHP)の参加者25人に対して研究協力を呼びかけ、21人(18.9±1.6歳、女性9人)が参加した。このうち18人が4日間の食事記録を報告し、プログラムの参加前と参加後ともにスポーツ栄養知識の評価を受けていたのは14人だった。

18人の主な特徴は以下のとおり。年齢18.9±1.6歳、女性と男性が各9人、トライアスロン歴5±1.8年、トレーニング時間19.2±3.6時/週。競技レベルは、世界大会レベルが45%、オセアニア大会レベルが22%、オーストラリア国内大会レベルが30%。全体の61%が過去にスポーツ栄養士による個別指導を受けた経験があり、72%は集団での教育セッションへの参加経験を有していた。17%は過去に栄養指導を受けたことがなかった。

リモートによる栄養指導の方法と、スポーツ栄養の知識の評価方法

リモート指導(TAPHP)は、1~5週はスポーツ栄養に関するトピックの配信であり、その内容は、トレーニングと栄養、エネルギーの可用性、水分補給、主要栄養素と微量栄養素、サプリメント、食品の安全性、遠征時の食事などであり、視覚教材とオンラインチャット、クイズなどで構成されていた。続く6~8週には、スポーツ栄養士による30分間の個別リモート指導が行われた。

スポーツ栄養の知識は、米国で開発された83項目からなる質問票(sports nutrition knowledge questionnaire;SNKQ)を用いて、8週間のリモート指導の前後で評価した。質問項目は、栄養素全般、水分補給、スポーツ栄養、サプリメントという四つのカテゴリーで構成されており、それらの一部は、トライアスリートに対する20年以上の栄養指導の経験を有するスポーツ栄養士によって、トライアスロンに特化した内容に修正された。

このほか、4日間(平日と週末各2日)に摂取したものをすべて写真で記録し、摂取したタイミングとともに報告してもらい、食事摂取状況を解析した。また、その4日間については、すべてのトレーニングセッションの内容(時間、距離、種目〈水泳、自転車、ランニング、筋力トレーニング〉とそれらのタイミング)の記録を求めた。

スポーツ栄養知識がリモート指導後に有意に向上

解析対象者のうち1人はパレオダイエットを行っており、2人は乳糖またはナッツアレルギーを報告。その他の17人は特定の食事スタイルを報告しなかった。

食事や栄養に関する主要な情報源として、コーチとスポーツ栄養士がそれぞれ61%のアスリートによって報告された。その他は親が61%、インターネット39%、学校や大学28%、医師やメディカルスタッフ22%、ソーシャルメディア10%などだった。

サプリメントに関する知識以外はすべて有意に改善

リモート指導の前のスポーツ栄養の知識は、83点満点で52.8±8.3点で百分率換算では63.6%だった。対してリモート指導後は60.7±8.8点で73.1%であり、有意に改善していた(p=0.000)。サブカテゴリー別にみると、栄養素全般、水分補給、スポーツ栄養はいずれも有意に改善していたが、サプリメントに関する知識のみ、56.1%から65.3%に上昇はしていたが、有意水準に至らなかった。

果物と乳製品、カルシウムの摂取量が増加

実際に摂取しているものの変化は、果物(1.9±0.9→2.7±1.5サーブ/日、p<0.05)、牛乳および乳製品(2.8±1.3→3.5±1.2サーブ/日、p<0.01)において有意な増加が認められた。野菜や肉類、穀物の摂取量は有意な変化がなかった。

栄養素での検討では、カルシウム(1,445±554→1,699±560mg/日、p<0.05)が増加していた。主要栄養素や摂取エネルギー量および鉄については、有意な変化がなかった。

このほか、リモート指導後には、その日のトレーニング量の多寡に応じて柔軟に摂取量を変更するような変化が認められた。

著者らは、「スポーツ栄養士によるリモートでの8週間の栄養教育プログラムで、若年エリートトライアスリートの栄養知識と食事摂取量を改善できることが示された。具体的には、栄養に関する知識が15%向上し、それに伴い、食事の摂取量を日々のトレーニングにより適切に調整するという前向きな変化が生じていた」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「The Impact of a ‘Remotely-Delivered’ Sports Nutrition Education Program on Dietary Intake and Nutrition Knowledge of Junior Elite Triathletes」。〔Nutrients. 2022 Dec 7;14(24):5203.〕
原文はこちら(MDPI)

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