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1時間目の授業前に軽い運動をしている子どもは睡眠習慣が良好――足立区での横断調査

小中学生の身体活動の強度やタイミングと、睡眠習慣との関連を国内で調査した結果が報告された。朝の学校の授業が始まる前に軽強度の身体活動をしている子どもには、夜更かしが少ないという有意な関連が認められたという。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男氏らの研究によるもので、「Frontiers in Pediatrics」に論文が掲載された。

1時間目の授業前に軽い運動をしている子どもは睡眠習慣が良好――足立区での横断調査

子どもたちの睡眠習慣改善につながる身体活動パターンを探る

睡眠習慣は成人の健康リスクだけでなく、子どもの健康のリスクとも関連のあることが報告されている。例えば、睡眠時間が短い子どもには肥満が多いことや、記憶力の低下、日中の眠気などとの関連が知られており、また、学業成績の低下との関連もあるとする報告もみられる。

子どもの睡眠習慣と身体活動習慣との関連も示唆されている。ただしそれらの研究の結果は一貫性がない。一貫性がみられない理由の一つとして、身体活動の強度や時間帯が考慮されていないことによる可能性が考えられる。仮に、睡眠習慣の改善と関連のある身体活動強度や時間帯が特定されるとすれば、学校でそのような身体活動を奨励することで、子どもたちの睡眠習慣が改善されて健康や学業上のメリットにつながる可能性がある。

藤原氏らは、このような背景の下、東京都足立区で行われた「子どもの健康・生活実態調査(A-CHILD Study)」のデータを用いて、子どもたちの身体活動の強度・タイミングと睡眠習慣との関連を検討した。

研究の方法について

A-CHILD Studyは、足立区と共同で実施された、子どもたちの生活習慣や健康の社会経済的要因を探るために実施されたコホート調査。今回の研究には、公立小学校9校の4年生455人、公立中学校6校の2年生281人に、7日間連続で3軸加速度センサーを身につけて生活してもらって身体活動パターンを評価。アンケート調査から把握した睡眠習慣との関連を調べた。

身体活動の強度は、0.9~1.5METsを座位行動、1.5超~3.0METs未満を軽強度、3.0~6.0METs未満を中強度、6.0METs以上を高強度とした。身体活動のタイミングについては、起床~1時間目の授業開始、授業開始~最後の授業終了、放課後~就寝という三つのタイムゾーンに分けて評価した。

睡眠習慣については、小学4年生は22時以降に就寝している場合、中学2年生は23時以降に就寝している場合を「就寝時刻が遅い」と定義した。

その他、BMI(Zスコア)、スポーツクラブ活動を行っているか否か、保護者へのアンケートから得た世帯収入などを共変量として調整した。

授業が始まる前に軽く体を動かすと睡眠習慣が良好になる可能性

加速度センサーのバッテリー切れやデータ欠落、研究参加の不同意などを除外し、最終的な解析対象者数は411人(小学4年生229人、中学2年生182人)となった。男児が45.5%を占め、70.6%がスポーツクラブに所属しており、55.7%は平日の起床時刻が7時前だった。また、65%がWHO小児成長標準のBMIzスコアの±1標準偏差内だった。

強度別の1日あたりの身体活動時間は、座位行動が299.3分、軽強度が327.0分、中強度50.1分、高強度8.6分であり、小学4年生は中学2年生よりも身体活動が活発だった。「就寝時刻が遅い」に該当する生徒は、小学4年生(夜10時以降に就寝)が40.6%、中学2年生(夜11時以降に就寝)は64.3%だった。

起床~1時間目の授業開始の身体活動パターンに有意差

就寝時刻が早い群と遅い群の身体活動パターンを比較すると、小学4年生、中学2年生ともに、起床~1時間目の授業開始の過ごし方に有意差が認められ、いずれも座位行動、軽強度および中強度の身体活動の時間が、就寝時刻が早い子どものほうが有意に長かった。

授業開始~最後の授業終了や、放課後~就寝の身体活動パターン、および1日のトータルの身体活動時間には、就寝時刻が早いか遅いかによる有意差はみられなかった。

交絡因子調整後も、授業前の軽強度身体活動が良好な睡眠習慣と有意に関連

次に、学年、性別、世帯収入、BMIzスコア、スポーツクラブ活動を行っているか否か、平日の起床時間の影響を調整したポアソン回帰分析を施行。その結果、起床~1時間目の授業開始の座位行動の時間が長いこと(1標準偏差あたり)は、就寝時刻が遅いことと有意な負の相関が認められ(発生率比〈prevalence ratio;PR〉0.79〈95%CI;0.66~0.95〉)、また、軽強度運動の時間の長さも同様に負の相関が認められた(PR0.82〈0.69~0.99〉)。

さらに、同じタイムゾーンの軽強度・中強度・高強度身体活動の時間を相互に調整した場合も、軽強度運動の時間の長さと就寝時刻が遅いことの負の関連の有意性が維持されていた(PR0.82〈0.68~0.99〉)。なお、この時間帯の軽強度運動時間の1標準偏差は10~20分の範囲。

以上の結果をもとに著者らは、起床から1時間目の授業開始までの軽強度身体活動時間が10~20分長いごとに、遅い時刻に就寝するリスクが18%少ないことが明らかになった。登校後の授業前に校庭や教室内で軽く体を動かすことが、子どもたちの睡眠習慣の改善に結びつく可能性があるのではないか」と結論を述べている。

なお、同じタイムゾーンの座位行動も良好な睡眠習慣に関連していた点については、「早起きであれば早朝に身体活動を行わなくても就寝時刻が早いことを意味しているのかもしれない。ただし、学校の授業時間以外に座位を保つという指導は、健康リスクの観点から推奨できない」としている。

文献情報

原題のタイトルは、「Timing and intensity of physical activity and late sleeping habits among children in Japan」。〔Front Pediatr. 2022 Sep 13;10:915758〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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