スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

身体活動の頻度が高いほど新型コロナ感染率が低い イスラエル市民11万人の横断研究

身体活動の頻度が高い人ほど、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性者が少ないという有意な関連のあることが、イスラエルから報告された。著者らは、「身体活動にはウイルス感染に対する保護効果があるのではないか」と述べている。

身体活動の頻度が高いほど新型コロナ感染率が低い イスラエル市民11万人の横断研究

身体活動はCOVID-19予防にも有効か?

適度な身体活動がさまざまな疾患のリスク抑制に働くことには、多くの研究結果の裏付けがある。とくに心血管代謝性疾患の予防効果は強固なエビデンスがあるが、そればかりでなく感染性疾患に対しても、身体活動によって免疫系が刺激され気道感染症が減ることが報告されている。また、インフルエンザワクチン接種後の免疫応答が、身体活動によって増強するというデータもある。

ただし、SARS-CoV-2の感染リスクと身体活動との関連はこれまでのところ明らかになっていない。今回紹介する論文の著者らは、イスラエルの一般住民を対象とする健康関連レジストリのデータを用いて、この点を検討した。

イスラエルの一般市民11万人の陽性率を検討

解析に用いたレジストリには、約71万5,000人の健康関連データが記録されている。その中から、2020年2~12月に1回以上、SARS-CoV-2検査を受けていた18歳以上の成人11万3,075人(平均年齢41.6歳、女性54.4%)を解析対象とした。なお、イスラエルでは2020年2月に、同国で最初のCOVID-19症例が報告されている。また、身体活動に支障のある人、例えば心不全、認知症、がん、腎疾患、肝疾患、呼吸器疾患などの患者は対象から除外されている。

SARS-CoV-2検査は、鼻咽頭スワブで採取した検体をリアルタイムPCRにより結果を判定した。身体活動の頻度については、同レジストリに記録されている患者はかかりつけ医への受診時に確認されており、その記録をもとに、「身体活動なし」、「時々」、「週に1~3回」、「週に3回超」というカテゴリーに分けられた。

そのほか、共変量として、喫煙習慣、肥満、社会経済的背景(対象者の居住地域の情報で判定)、ビタミンDレベル、基礎疾患(糖尿病、高血圧など)を把握した。

身体活動の頻度の高さがSARS-CoV-2陽性者率と逆相関

観察期間中に1万7,465人(15.4%)が、SARS-CoV-2陽性判定を受けていた。

SARS-CoV-2陰性群と陽性判定を受けていた群の比較

陰性者と比較してSARS-CoV-2陽性の判定を受けた群は若年で(41.8±16.4 vs 40.2±16.5歳、p<0.001)、男性の割合が高かった(44.9 vs 49.5%、p<0.0001)。また、社会経済的に低位群の割合が高く(60.9 vs 75.2%、p<0.0001)、BMIは高値であり(26.8±5.6 vs 27.1±5.8、p<0.001)、現喫煙者が多かった(9.4% vs 19.8%、p<0.001)

併存疾患については、糖尿病(13.8 vs 14.9%)、高血圧(15.8 vs 18.6%)ともにSARS-CoV-2陽性の判定を受けた群のほうが、該当者率が低かった。 陰性群は身体活動の頻度が高く、ビタミンDレベルが高い:

身体活動の頻度については、「時々」が陰性群34.6%、陽性群35.3%、「週1~3回」が同順に22.1%、17.8%、「週3回超」は10.3%、7.2%であり、陰性群は身体活動の頻度が低かった(p<0.001)。

また、免疫能との関連が知られているビタミンDレベルは、陰性群が21.0 ± 9.3ng/mLであるのに対して陽性群は18.8 ± 9.0ng/mLであり、有意に低値だった(p<0.001)。

身体活動の頻度が週3回超の人は感染リスクが半減している可能性

身体活動なし群を基準として他の群のSARS-CoV-2陽性者率を比較すると、「時々」ではOR0.84(95%CI;0.81~0.87)、「週1~3回」はOR0.66(同0.63~0.69)、「週3回超」はOR0.58(0.54~0.62)であり、身体活動の頻度が高いほど感染リスクが低かった。

この関係は、年齢や性別と前記の共変量を調整した解析でも変わらず、「時々」でOR0.71(0.67~0.74)、「週1~3回」はOR0.62(同0.57~0.65)、「週3回超」はOR0.54(0.49~0.59)であり、身体活動が週3回超の群は、SARS-CoV-2感染リスクが46%低かった。

COVID-19予防のために身体活動を

著者らは本研究の限界点として、身体活動の頻度を自己申告により判定していること、身体活動の量(強度や1回あたりの時間)を評価していないこと、COVID-19の重症度との関連が不明であること、観察研究であり因果関係は不明であることなどを挙げている。そのうえで、「身体活動の頻度がSARS-CoV-2感染率の低さと関連のあることが明らかになった」と結論づけ、COVID-19予防のためのガイドラインなどで身体活動を推奨すべきではないかと述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「A higher frequency of physical activity is associated with reduced rates of SARS-CoV-2 infection」。〔Eur J Gen Pract. 2022 Nov 7;1-7〕
原文はこちら(Informa UK)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ