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ジュニアアスリートがライフスキルを身につけるために必要なこと、その支援に必要なこと

青少年が健康的に成長し、健全な社会性やライフスキルの獲得を促すには何が必要なのかを、高校野球の選手を対象に食事管理の観点から検討した研究結果が報告された。自己効力感と社会的な支援(ソーシャルサポート)の双方が重要であるが、行動変容のステージによって、それら両者の影響の現れ方が異なる可能性が明らかになったという。立命館大学スポーツ健康科学部研究科の首藤由香氏、海老久美子氏らの研究によるもので、「Frontiers in Sports and Active Living」に論文が掲載された。

ジュニアアスリートがライフスキルを身につけるために必要なこと、その支援に必要なこと

健全な社会性を獲得するのに必要なものは何?~食事管理の視点からの検討

子どもから思春期を経て成人へと成長する過程では、健全な社会性を獲得し、遭遇する課題を適切に対処するライフスキルを向上していくことが求められる。このプロセスでは、周囲との交渉、自己管理、情報の批判的考察などのスキルを高めることなどが必要となる。より具体的な例で、ジュニア期のアスリートの食事について言えば、自分が食べるべきものを自分で判断できるスキルをジュニア期に身につけることが大切であり、そのことが以降の成長の鍵ともなり得る。とはいえ、ジュニアアスリートのライフスキル獲得を促すために何が必要で、どのような支援が有効なのかといった研究はあまり行われていない。

一方、行動変容に関する研究では、本人の自己効力感と社会的な支援という環境要因の双方が重要であり、その両者が相互に作用して行動変容につながると理解されている。そこで首藤氏らは、ジュニアアスリートのライフスキル獲得に関連する個人的因子として「食事に関する自己効力感(self-efficacy on dietary control;DSE)」、環境因子として「健康的な食事のための社会的支援(social support on healthy diets;DSS)」を位置づけ、ライフスキルの獲得レベルとの関連性を横断的に検討した。また、この関連性が、行動変容のステージによって異なる可能性についても検討した。

8校、179人の高校野球選手を対象に検討

解析対象は、高校野球8チームの選手179人で、全員が1年生であり平均年齢は15.1±0.3歳。すべて全日制高校であり、7校は公立、1校は私立だった。入学から本調査実施までに、特別な栄養教育は行われていなかった。

ライフスキルの獲得レベルや食事に関する自己効力感(DSE)、健康的な食事のための社会的支援(DSS)については、既報研究で信頼性が確認されている調査票を用いて評価した。

このうちライフスキルについては、ストレスマネジメント、目標設定、考える力、感謝する心、コミュニケーション能力、礼儀・マナー、最善の努力、責任ある行動、謙虚な心、体調管理という10項目について合計40問の質問の回答を得て、合計得点をライススキルの指標とし、それぞれの得点をサブスケールとして評価した。

行動変容のステージについては、保健指導などの領域でも広く用いられている、前熟考期、熟考期、準備期、実行期、維持期という五つのステージの分類を示し、生徒本人に該当すると思うものを選んでもらった。

行動変容ステージによって、自己効力感と社会的支援の影響が異なる

結果について、まず、ライフスキル、食事に関する自己効力感(DSE)、健康的な食事のための社会的支援(DSS)の相互の関係をみると、DSEが高いほどライフスキルの総合スコアおよび10項目のサブスケールのすべてが高いという、正の関連があることが明らかになった(r=0.20~0.62)。

一方、DSSは、ライフスキルの総合スコア、および、10項目のサブスケールのうち、礼儀・マナー、謙虚な心を除く8項目との間で、有意な正の相関が認められた(r=0.19~0.39)。

行動変容のステージ別に検討すると、実行期に至っていない生徒での解析結果は、上記の全体解析の結果と同様だった。それに対して実行期・維持期の生徒では、DSEは礼儀・マナー以外のライフスキルと有意に正相関していたが、DSSはライフスキルの総合スコアやサブスケールとの有意な関連が認められなかった。

実行期より前段階ではDSEとDSSの相互作用は非有意

次に、実行期に至っていない生徒のライフスキルの総合スコアへの関連の強さを階層的重回帰分析で検討。まず、DSEとDSSを投入した場合の決定係数(R2)は0.42で有意だった(p<0.001)。これにDSEとDSSの相互作用を追加して投入した場合、R2は同じく0.42であって、実行期より前段階の生徒の場合は、DSEとDSSの相互作用は有意に作用していないと考えられた(β=0.11、p=0.158)。

ライフスキルのサブスケールについて同様の解析を行うと、目標設定についてのみ、DSEとDSSの相互作用を追加して投入した場合にR2が有意に大きくなるという結果が示された(β=0.19,p<0.05)。

実行期・維持期ではDSEとDSSの相互作用が有意

続いて、実行期以降の生徒を対象に同様に検討。すると、DSEとDSSを投入した段階のR2は0.24で有意であり(p<0.001)、これにDSEとDSSの相互作用を追加して投入すると、R2は0.28へと有意に大きくなり、実行期以降の生徒の場合は、DSEとDSSが相互に作用してライフスキルの総合スコアを押し上げていると考えられた(β=0.32、p<0.05)。

ライフスキルのサブスケールについて同様の解析を行うと、コミュニケーション能力についてのみ、DSEとDSSの相互作用を追加して投入した場合にR2が有意に大きくなるという結果が示された(β=0.34,p<0.05)。

行動変容ステージに応じたサポートでライフスキルが向上する可能性

以上一連の結果をまとめると、ジュニアアスリートのライフスキル獲得には、本人の自己効力感と社会的支援の双方が重要であることが示された。その詳細は、前熟考期~準備期では目標設定、実行期・維持期ではコミュニケーションというように、行動変容段階により異なるライフスキル獲得に、DSEの程度及びDSSの作用が関連する可能性が示唆された。

著者らは、本研究が横断研究であるため結果の解釈は制限されることなどを限界点として挙げたうえで、以下のような方法での実践への応用を提案している。

まず、実行期より前段階にあり自己効力感が高いジュニアアスリートには、目標設定に関連する支援が効果的と考えられるとのことだ。一方、自己効力感が低い場合はその理由の特定を第一にすべきであり、それが向上されてから目標設定を促すとよいのではないかという。また、実行期と維持期のジュニアアスリートには、コミュニケーション能力への自己効力感と社会的支援の相互作用を生かし、利用可能な社会的支援に関する情報を提供したり、保護者や目標を共有できる仲間とのつながりの強化を促すとよいという。

なお、この領域の今後の展開としては、社会経済的因子との関連も考慮した縦断的研究が必要と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Dietary self-efficacy and social support interactions in junior athletes' acquisition of life skills」。〔Front Sports Act Living. 2022 Sep 28;4:673633〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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