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頻繁に「悪夢」を見てしまうアスリートは神経症傾向が強く、不安レベルが高い

「悪夢」を見るアスリートの性格特性を調査した結果が中国から報告された。思わぬ怪我や試合での大敗なども「悪夢」と呼ばれるが、この研究の悪夢はあくまで睡眠中に見る悪い夢のことである。睡眠中に悪い夢を見ることのあるアスリートは神経症傾向が強く、不安レベルが高いという。

頻繁に「悪夢」を見てしまうアスリートは神経症傾向が強く、不安レベルが高い

アスリートの悪夢の背景には何がある?

夢は、レム睡眠中の脳の神経生理学的働きによって生じると考えられている。夢のタイプの一つとして悪夢があり、命の危険や失敗、他人との対立などの場面が登場する。そのような悪夢は睡眠の質を低下させるだけでなく、否定的な感情や満足度の低下、作業効率の低下、さらに自傷行為の増加と関連のあることが報告されている。また、幸福感が低い人ほど悪夢を見やすいという関連の報告もある。

加えて、悪夢を見ることがストレス耐性の低下と関係していることが示されている。アスリートは、高いトレーニング負荷、過密なスケジュール、成績不振、コーチとの折り合いなど、非アスリートにはないさまざまなストレスにさらされている。アスリートのストレス耐性については、非アスリートより強いとする研究もあれば、その反対の結果を示すものや、非アスリートと差がないとするものもあり、見解は一致していない。

アスリートの約4人に1人が睡眠障害に該当する可能性があり、学生アスリートの場合は睡眠障害が学業成績の低下と関連することがわかっている。アスリートがストレスにさらされそれを処理できない場合、睡眠障害や悪夢のリスクが上昇することも考えられ、パフォーマンスへの影響にとどまらず、悪夢が頻繁な場合は病理学的な意味も発生する懸念もある。

これらを背景として、今回紹介する論文の著者らは、悪夢を見た経験のあるアスリート、その経験のないアスリート、および、悪夢を見た経験のある非アスリートという三つの集団で、性格特性や不安レベルなどを比較検討するという研究を行った。

北京周辺の大学生300人弱で調査

この研究には、コーチや大学教員を通じて個人的に募集された、北京地域に居住する計277人が参加。そのうち187人はアスリートであり、年齢20.44±0.85歳、女性48.7%で、団体競技アスリートが44人、個人競技アスリートが143人、競技歴は9.12±3.27年。全員が中国国家レベルの選手資格を有するハイレベルのアスリートだった。

非アスリートの悪夢体験のある人は90人で、20.34±1.65歳、女性57.8%。参加者はアスリート、非アスリートともに全員が学部教育を受けていた。

評価項目について

対象者の悪夢体験の有無や不安レベル、性格特性は、以下の3種類のアンケートや質問票で把握した。

悪夢体験アンケート(Nightmare Experience Questionnaire;NEQ)

悪夢を見たことによる身体的な影響、負の感情、意味の解釈、恐怖を感じる刺激という4種類の反応を20項目の質問で把握するアンケート。回答者は各質問に対して5段階のリッカートスコアで回答する。質問内容は、例えば「悪夢を見たために身体が弱くなったと感じる」、「悪夢の中でしばしば無力感を感じる」、「恐ろしい暴力シーンの夢を見た」など。

不安自己評価尺度(Self-rating Anxiety Scale;SAS)

20項目で構成される不安の自己評価尺度。4段階のリッカートスケールで評価され、スコアが高いほど不安が強いと判定される。 性格特性アンケート(Zuckerman–Kuhlman–Aluja Personality Questionnaire, Shortened Form(ZKA-PQ/SF):

80項目で構成され、攻撃性、活動性、外向性、神経症傾向、感覚探求という5因子を5段階のリッカートスコアで判定する。

アスリートの悪夢体験と不安レベルや性格特性の一部に有意な関連

悪夢体験があるアスリートのその頻度は年12回

アスリートのうち、悪夢を見た体験があると回答したのは87人(46.52%)だった。

悪夢体験の有無でアスリートを二分して性別や参加競技を比較すると、性別(女性の割合)、競技のタイプ(団体競技か個人競技か)、競技レベル(エリート/1st/2nd)、競技歴(9年未満/以上)などはすべて同等であり、群間に有意差はなかった。

次に、悪夢体験のあるアスリートと悪夢体験のある非アスリートとで、悪夢体験アンケート(NEQ)の結果を比較すると、これも有意差がなかった。なお、悪夢を見る頻度は、アスリート群が11.89±9.39回/年、非アスリート群は13.27±12.79回/年だった(p=0.42)。

悪夢を見るアスリートは不安レベルが高く神経症傾向が強い

続いて、不安自己評価尺度(SAS)および性格特性アンケート(ZKA-PQ/SF)の結果を3群で比較した結果、以下のような有意差が示された。

悪夢を見るアスリートの不安は、悪夢を見る非アスリートより強い

SASのスコアは、悪夢を見るアスリートが42.59±9.10で最も高く、続いて悪夢を見ないアスリートが40.40±8.73であり、悪夢を見る非アスリートは39.96±7.29で最も低かった。悪夢を見るアスリートと、悪夢を見る非アスリートとの間には有意差があった。

悪夢を見るアスリートは、そうでないアスリートより神経症傾向が強い

性格特性アンケート(ZKA-PQ/SF)の神経症傾向のスコアは、前記と同順に42.71±12.51、39.30±11.06、46.96±8.84であり、最も高いのは悪夢を見る非アスリート、次に悪夢を見るアスリートで、悪夢を見みないアスリートが最低であり、それぞれの群間に有意差があった。

その他、悪夢を見る非アスリートは、アスリートの2群よりも、攻撃性と感覚探求が有意に強いという結果だった。活動性と外向性については、3群間に有意差がなかった。

悪夢を見るリスクの高いアスリートを特定し、介入により悪影響を軽減へ

悪夢体験アンケート(NEQ)の結果を目的変数とする重回帰分析の結果、不安レベルが高く、神経症的傾向と感覚探求が強いアスリートは、より頻繁に悪夢を見る可能性が高いことが明らかになった。

著者らは本研究により、「性格特性の事前評価と不安レベルの定期的な評価が、悪夢に悩まされる可能性が高いアスリートの効果的な特定に役立つ。それによって、悪夢のリスクや悪夢を見ることでもたらされる影響を抑制するための介入が可能になる」と結論づけている。

文献情報

原題のタイトルは、「The Relationship between Nightmare Experience and Athletes’ Personality Traits and Anxiety」。〔Int J Environ Res Public Health. 2022 Oct 8;19(19):12900〕
原文はこちら(MDPI)

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