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四肢除脂肪量(ALM)を体重などで補正するとメタボ発症予測が可能に 日本人女性対象縦断研究

日本人女性を7年間追跡した縦断研究から、骨格筋量とメタボ発症リスクとの関連が明らかになった。四肢除脂肪量は、それ自体はメタボリスクと有意な関連がないが、体重または身長で補正した値は有意な発症予測因子となり得るという。国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の山田陽介氏らの研究によるもので、「PLOS ONE」に論文が掲載された。

四肢除脂肪量(ALM)を体重などで補正するとメタボ発症予測が可能に 日本人女性対象縦断研究

骨格筋量の多さはメタボリスクの低さと関連するが、メタボでは骨格筋量が多い

骨格筋量(skeletal muscle mass;SMM)が少ないことはサルコペニアのリスクとなる。また、骨格筋はエネルギー代謝にとって重要な組織であり、SMM低値はメタボリックシンドローム(MetS)のリスクともなり得る。ただし、MetS該当者は体重の負荷が強いためにSMMが高値となりやすい。このため、SMMが多いにもかかわらず、MetSリスクは抑制されない、またはMetSリスクが高くなるという、相反する関連が生じる可能性もある。

これに対して、SMMを体重や身長またはBMIで補正することによって、MetSリスクとの関連が明確になる可能性が考えられる。山田氏らはそのような仮説のもと、以下の研究を行った。

日本人女性を平均7年追跡

研究対象は、同研究所にて継続的に定期健診を受けている20歳以上の日本人女性760人のうち、参加時点でMetSではなく、解析に必要なデータの欠落のない346人。平均7年(範囲1~10年)追跡して、骨格筋量(SMM)やそれを補正した値と、MetSの新規発症との関係の有無を検討した。

評価したSMM関連指標は、生体インピーダンス法により測定した四肢除脂肪量(appendicular lean mass;ALM)と、ALMを体重で除した値、ALMをBMIで除した値、ALMを身長の二乗で除した値の4種類。なお、MetSの診断は日本の基準に基づいて行った(腹囲長のカットオフ値は90cm)。

ALMは、体重や身長の二乗で補正すると関連が有意に

追跡期間中に24人がMetSを発症した。MetS発症とSMM関連指標との関連の解析に際しては、各指標の中央値で二分したうえで、MetS発症リスクに影響を及ぼし得る因子である、年齢、肥満(BMI25以上)、腹囲長、喫煙習慣、身体活動量(14日間の3軸加速度計の記録で評価)、糖尿病の家族歴を調整して解析した。

ALMはMetS発症の予測因子でない

まず、四肢除脂肪量(ALM)に補正を加えずに検討すると、低値群を基準とした高値群のMetS発症リスクはHR1.84(95%CI;0.62~5.45)と非有意であり、有意な関連が認められなかった。

ALMをBMIで補正した値もMetS発症と関連なし

ALMをBMIで除した値については、高値群を基準とした低値群のMetS発症リスクがHR0.83(95%CI;0.22~3.18)であり、やはり非有意だった。

ALMを体重で補正した値が低い場合、MetS発症リスクが有意に高い

AMLを体重で除した値については、高値群を基準とした低値群のMetS発症リスクがHR5.60(95%CI;1.04~30.0)であり、有意な関連が認められた。

ALMを身長の二乗で補正した値が高い場合、MetS発症リスクが有意に高い

AMLを身長の二乗で除した値については、低値群を基準とした高値群のMetS発症リスクがHR10.60(95%CI;1.27~89.1)であり、有意な関連が認められた。

年齢と体脂肪率がMetS発症に寄与

次に、上記の検討でMetSリスクとの有意な関連が認められた、ALMを体重または身長の二乗で補正した値、および、年齢、体脂肪量、体脂肪率を説明変数、MetS発症を目的変数とする多変量解析を施行。その結果、有意な関連因子として、年齢と体脂肪率の二つが抽出され、ALMを体重または身長の二乗で補正した値、および、体脂肪量は有意な関連が認められなかった。

なお、本研究ではALMのほかに、脚伸展力とMetSリスクとの関連を検討していたが、その関連も非有意だった。

体脂肪量を組み込んだ予測モデルの検討が求められる

著者らは本研究を、「相対的または絶対的なALMや下肢筋力、脂肪量、体脂肪率とMetS発症との関連を前向きに検討した初の研究」と位置づけている。

結論として、「交絡因子を調整後、ALMを体重で除した値は日本人女性のMetS発症リスクと負の相関があり、ALMを身長の二乗で除した値は日本人女性のMetS発症リスクと正の相関が認められた。ただし、体脂肪率を考慮すると、いずれもMetSリスクとの関連の有意性が消失し、MetS発症における体脂肪率の重要性が確認された」とまとめられている。また、「SMMとMetSリスクの関係は複雑であり、体脂肪率を勘案した発症予測モデルの構築が必要と考えられる」と付言されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Association between skeletal muscle mass or percent body fat and metabolic syndrome development in Japanese women: A 7-year prospective study」。〔PLoS One. 2022 Oct 6;17(10):e0263213〕
原文はこちら(PLOS)

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