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BMIカテゴリー別にみた日本人若年女性の食品群摂取量の経年推移 ―過去20年間の国民健康・栄養調査の解析から―

2001年から2019年の20年弱の間、日本人若年女性の食品群摂取量がどのように推移したかを、BMIカテゴリー別に検討した結果が報告された。非肥満女性では果物や乳製品の摂取量が減り、肥満女性では菓子の摂取量が増加したという。国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の松本麻衣氏、瀧本秀美氏らの研究によるもので、「Nutrients」の国民健康・栄養調査特集号に論文が掲載された。

BMIカテゴリー別にみた日本人若年女性の食品群摂取量の経年推移 ―過去20年間の国民健康・栄養調査の解析から―

やせ/肥満の若年女性の食べているものは、変化している?

世界的には、先進国か発展途上国かにかかわらず、肥満の増加が公衆衛生上の重要な課題となっている。日本においても、男性および中年期以降の成人女性では同様の問題が指摘されているものの、若年女性に限っては、やせの割合が少なくないことが懸念されている。若年女性のやせは、将来の妊孕性の低下、骨粗鬆症やサルコペニアのリスク増大などにつながることが報告されているため、改善に向けた適切な対策が必要となる。対策に向けた第一ステップとして、食習慣や栄養素摂取状況の把握が重要であるが、日本人若年女性がふだん食べているものが時代とともにどのように変化してきているのか、もしくは変化していないのかについては明らかにされていない。

この現状を背景として松本氏らは、厚生労働省が長年にわたり同様の手法で実施している大規模な疫学調査である「国民健康・栄養調査」のデータを用いて、若年女性が摂取している食品群の変化をBMIカテゴリー別に検討した。

2001年以降の栄養素別、食品群別摂取量の変化

解析対象は、2001~2019年の国民健康・栄養調査の参加者のうち、20~39歳の女性13,771人。BMIによりやせ(18.5未満)、普通体重(18.5~24.9)、肥満(25.0以上)に分類したところ、やせの割合は、20年の間、ほぼ20%で一定していた。それに対して肥満者は、約10%から約13%へと有意に増加していた(p<0.05)。年間変化率(annual percentage change;APC)は1.4%だった。

やせ・普通体重の者は歩数が減り、肥満者は変化なし

食事・栄養関連の解析結果の前に、身体活動量としての歩数の変化をみると、やせの者の歩数は有意に減少し(APC=-0.9%,p<0.001)、普通体重の者も有意に減少していた(同-0.5%,p<0.001)。それに対して肥満者の歩数は2001年から有意な変化がなかった(同-0.1%,p=0.823)。

エネルギー摂取量・栄養素摂取量の変化

では、栄養関連の指標の変化をみていこう。まずは、エネルギー摂取量・栄養素摂取量の変化に着目してみる。

エネルギー

エネルギー摂取量は、やせ群(APC=-0.4%)と普通体重群(同-0.3%)で経年的に有意に減少していた。肥満群も減少傾向にあったが、変化は有意でなかった。

たんぱく質

たんぱく質摂取量は、2001年から2009年にかけて、やせ群(-0.8%)と普通体重群(-0.6%)で経年的に有意に減少していた。ところが2009年を境に下げ止まり、とくにやせ群は有意な増加に転じていた(0.4%)。
一方、肥満群では、解析対象期間全体(2001年から2019年)を通して、有意な変化がみられなかった。

脂質

脂質摂取量は、3群すべてで有意に増加していた。APCは、やせ群が0.4%、普通体重群が1.1%であり、肥満群は2001年から2017年にかけて0.5%であった。

炭水化物

やせ群と普通体重群においては2013年までは変化がなく、2013年を境に減少し始めた(APCは低体重群が-0.8%、普通体重群は-0.7%)。
一方、肥満群では解析対象期間全体を通して、摂取量は経時的に減少していた(APC-0.3%)。

食品群別摂取量の変化

次に、食品成分表に基づき分類した食品群摂取量の結果をみてみる〔密度法(摂取量1,000kcalあたりの摂取量)により調整〕。

穀類

肥満群では、解析対象期間全体を通して、経時的に減少していた(APC-0.6%)。他の2群では有意な変化はみられなかった。

解析対象期間全体を通して、普通体重群(APC-0.3%)と肥満群(APC-1.1%)で経時的に減少したが、やせ群では有意な変化はみられなかった。

イモ類

解析対象期間全体を通して、やせ群(APC-1.3%)と普通体重群(APC-0.9%)で経時的に減少したが、肥満群では有意な変化はみられなかった。

野菜類

3群ともに有意な変化がみられなかった。

きのこ類

肥満群では、2005年以降で有意に減少していた(-2.1)。一方で、他の2群では有意な変化がみられなかった。

果物類

解析対象期間全体を通して、やせ群(APC-1.6%)と普通体重群(APC-1.4%)は経時的に減少していた。なお、肥満群は減少傾向にあるものの有意ではなかった。

海藻類

3群ともに解析対象期間全体を通して、有意に減少していた。APCは、やせ群が-2.7%、普通体重群が-2.5%、肥満群が-3.9%であった。

魚介類

3群ともに有意に減少していた。APCは、やせ群が-2.3%、肥満群が-2.5%で、普通体重群は2008年までは-3.9%、2008年以降は-1.2%であった。

肉類

3群ともに解析対象期間全体を通して、有意に増加していた。APCは、やせ群が1.7%、普通体重群が1.6%、肥満群が2.3%であった。

乳製品類

やせ群では2001年から2004年にかけて、APCが-14.8%と大きく減少していた。普通体重群も2003年にかけて-19.1%と著減していた。なお、2群ともにその後に変化はみられなかった。肥満群は解析対象期間全体を通して、減少傾向にあるものの、有意な変化はみられなかった。

菓子類

肥満群では解析対象期間全体を通して、有意に増加していた(1.9%)が、他の2群では有意な変化がみられなかった。

ソフトドリンク

3群ともに解析対象期間全体を通して、有意に増加していた。APCは、やせ群と普通体重群が6.9%、肥満群が5.8%であった。

非肥満者では健康的な食品群の摂取量が減少し、肥満者では健康的でない食品群の摂取量が増加

著者らは本研究を、「日本人若年女性が摂取している食品群の経年的な変化をBMIカテゴリー別に検討した初の研究」と位置づけている。得られた結果については、「日本の若年女性全体で、魚介類、海藻類の摂取量が減少傾向にあり、肉類とソフトドリンク類の摂取量が増加傾向であることが確認された。また、やせおよび普通体重の若い女性では、果物類や乳製品類などの健康的な食品の摂取量が減少傾向である一方で、肥満の若い女性では、菓子類のような健康的でない食品の摂取量が増加傾向である」と総括。

結論として、「若い日本人女性は、BMIのカテゴリーにかかわらず、健康的でない食生活をしている可能性があるが、その傾向はBMIのカテゴリーごとに異なる可能性があるため、BMIのカテゴリーごとに応じた対策が必要かもしれない」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Trends in Food Group Intake According to Body Size among Young Japanese Women: The 2001-2019 National Health and Nutrition Survey」。〔Nutrients. 2022 Sep 30;14(19):4078〕
原文はこちら(MDPI)

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