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ω3脂肪酸摂取で最高酸素摂取量が有意に上昇 男性長距離ランナーでの無作為化プラセボ対照試験

今回紹介する論文は、オメガ3脂肪酸(omega-3 fatty acid;ω3FA)による持久力パフォーマンスへの影響を検討した報告で、米国スポーツ医学会発行の「Medicine and science in sports and exercise」に掲載された論文。12週間のω3脂肪酸摂取により、対プラセボで最高酸素摂取量(VO2peak)が有意に上昇したが、1500mタイムトライアルの成績は有意差がなかったという内容。

ω3脂肪酸摂取で最高酸素摂取量が有意に上昇 男性長距離ランナーでの無作為化プラセボ対照試験

ω3FAのスポーツ領域でのエビデンスの現状

ω3脂肪酸は一般人口においては心血管疾患リスク因子などの多くの健康指標に好影響を与えることが知られているほか、アスリートのパフォーマンスに関連するいくつかのマーカーと相関があることも報告されている。前者の健康アウトカムとの関連については、追加摂取の有用性を示すエビデンスが蓄積されており、ω3FAが医薬品として利用されている。それに対して後者については、ω3FAをサプリメントとして追加摂取した場合にパフォーマンスがより向上するかという点のエビデンスは、いまだ一貫性に欠けている。

ω3FAレベルの評価指標として、赤血球膜中の脂肪酸に占めるエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid;EPA)とドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid;DHA)の和の割合で表す「ω3FA指数(omega-3 index;O3I)」が用いられており、O3Iが4%未満は不足、8%以上は充足と判断することが多い。ただし、アスリートのO3Iは高いとは言えず、例えばドイツの冬季持久系スポーツアスリート106人を対象とする調査では、8%を超えていたのはわずか1人だったという報告がある。

本研究は、持久系アスリートがω3FAサプリメントを摂取した場合、このO3Iが8%を超え、ランニングエコノミーとパフォーマンスが向上するとの仮定の下、無作為化プラセボ対照試験として実施された。

男子アマチュア長距離ランナー40人で無作為化プラセボ対照比較試験

この研究の参加者は、ポーランドでインターネットを通じて、40人の男子アマチュア長距離ランナーが募集された。適格条件は、2016~2020年の間に10kmの公式レースで37~57分の記録を保有していることであり、除外基準は日常的にω3FAを含む医薬品やサプリメントを服用しているランナー、喫煙者、慢性疾患罹患者。

無作為に20人ずつの2群に分けられ、1群はω3FAサプリ(1日あたりEPA2,234mg+DHA916mg)を摂取するω3FA群、他の1群は中鎖脂肪酸トリグリセライド4,000mg/日を摂取するプラセボ群として、12週間介入。介入期間中は全員に対して、陸上競技コーチの指導の下、漸進性トレーニングが行われた。

評価項目は、12週間の介入前後のO3I、トレッドミルで測定したVO2peakとそれに基づくランニングエコノミー、および1500mのタイムトライアル。介入期間中は習慣的な食事を継続するよう求めた。

介入中に、健康的な理由で9人、個人的な理由で1人が脱落し、またトレーニング量が不十分(定義されていた量の8割未満)と判定された3人と、プラセボ群でω3FA摂取を報告した1人を解析対象から除外。最終的に26人(ω3FA群14人、プラセボ群12人)で解析した。主な背景は以下のとおり。

平均年齢は両群ともに37歳、VO2peakは両群とも53.6mL/kg/分、2016~2020年の10km公式ベストタイムはω3FA群45±4分、プラセボ群47±5分。

O3Iはω3FA群で有意に上昇

ベースラインのω3FAレベルとO3Iは、以下のように両群同等だった。ω3FA群はEPA1.1%、DHA4.7%で、O3Iは5.8、プラセボ群は同順に1.2%、4.4%でO3Iは5.6。

一方、介入後の値は、ω3FA群では同順に4.9±1.1%、6.7±0.8%でO3Iは11.6±1.7と有意に上昇(すべてp<0.0001)。それに対してプラセボ群は1.1%、4.5%でO3Iは5.6であり、ベースラインから変化がなかった。結果として介入後のω3FAレベルとO3Iはω3FA群のほうが有意に高値だった。

VO2peak、ランニングエコノミーはω3FA群で有意に向上

VO2peakについては、ω3FA群では介入前が53.6±4.4mL/kg/分、介入後が56.0±3.7mL/kg/分であり、有意に上昇していた(p=0.0219)。一方、プラセボ群は54.7±6.8mL/kg/分、56.4±5.9mL/kg/分であり、有意な変化がなかった(p=0.1308)。

トレッドミルを12km/時で走行中の酸素摂取量は、ω3FA群では介入前47.6±1.8mL/kg/分から介入後46.5±2.4mL/kg/分へと有意に減少し(p=0.0295)、ランニングエコノミーの向上が認められた。それに対してプラセボ群は同順に47.7±3.3mL/kg/分、48.7±2.9mL/kg/分であり、有意な変化がなかった(p=0.1127)。

1500mトライアルは両群で有意に向上して群間差は非有意

1500mタイムトライアルの成績は以下のように介入前後で両群ともに向上し、有意な群間差は認められなかった。ω3FA群は介入前が356.3秒、介入後が344.9秒(p=0.0002)、プラセボ群は同順に362.1秒、347.3秒(p<0.0001)。

1500mは短すぎた?

以上より論文の結論は、「12週間の持久走トレーニング期間中に連日2,234mgのEPAと916mgのDHAのω3FAを摂取すると、O3Iが現行の目標範囲と見なされている値まで増加し、VO2peakとランニングエコノミーが向上した。ただし1500mトライアルのパフォーマンスへの影響は、対プラセボで有意でなかった」とまとめられている。また、「今後は長距離ランナーのパフォーマンス向上に最適なO3I値の探索が求められる」としている。

なお、介入後のタイムトライアルの結果にプラセボと有意差がなかったことについて著者らは、「本研究の対象はふだん10kmの長距離でトレーニングしており、研究参加の適格性も10kmのベストタイムで判断していたため、1500mは経験不足であったことが影響を及ぼしていた可能性が考えられる」という。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of 12 Weeks of Omega-3 Fatty Acid Supplementation in Long-distance Runners」。〔Med Sci Sports Exerc. 2022 Sep 26〕
原文はこちら(American College of Sports Medicine)

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