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10日間の断食でどのような変化が生じるか? 中国で成人男性13人を対象に医学管理下で調査

医学的な管理の下で、13人の成人男性が水だけで10日間過ごし、その後の回復期間も含めて諸々の検査値がどのように変化するかを調べた調査結果が報告された。体脂肪量は減少し、断食後に除脂肪体重は回復する可能性などが示されたという。中国からの報告。

10日間の断食でどのような変化が生じるか? 中国で成人男性13人を対象に医学管理下で調査

断食は良い? 悪い?

時間制限食などの断続的断食が減量や疾患リスク抑制につながる可能性を示す研究結果が報告されるようになった。反面で、長時間の断食によって末梢での糖取り込みが低下しインスリン抵抗性が誘発される可能性も報告されている。また、長時間の断食の安全性の評価も確立していない。

過去の研究から、長期間の断食によってエネルギー基質が炭水化物から脂質に切り替わることや糖新生などにより、健康な成人の場合30日以上生存できることが示されている。ただし、その間に生じる代謝や血圧、脈拍などの変化はほとんど研究されていない。今回紹介する論文の著者らは、医師の監督下で健康成人に10日間、完全な断食を行ってもらい、その間のさまざまな健康関連指標を測定するという研究を行った。

13人が10日間、完全断食

この研究には、関心のある60人の中国人成人がスクリーニングに参加。そのうち44人は年齢、健康状態などの理由で参加に至らず、また3人は研究開始前に個人的な理由で脱落した。最終的に13人の男性が、実験室内で10日間の完全断食を含む連続22日間生活するという研究に参加した。

22日間の研究は4つのフェーズからなり、最初の3日間はベースラインとして通常の生活期間として、続いて10日間の完全断食にうつり、この間は水のみを摂取可とした。10日間の完全断食終了後は、4日間にわたり摂取エネルギー量を制限して徐々に回復を図り、続く5日間は完全な回復期間にあてた。

13人の平均年齢は39.6±7.9歳、BMI24.6±3.5であり、全員が完全にこの断食研究を終了した。なお、研究期間中は研究棟内での歩行運動を励行した。

では、結果をみていこう。

脂肪量は回復期間後も低値である一方で、除脂肪量は回復

体重

体重は10日間の完全断食で有意に低下した(-7.28±1.46kg、-9.8±0.01%、p<0.001)。最初の3日間は平均-1.20±0.63kgと急速に減少し、それ以降の減量スビートは緩やかになり、10日目は-0.28±0.42kgだった。体重減少は摂取エネルギー量制限下での回復開始後2日目まで続き、完全回復期間で大幅な増加がみられた。完全回復期間終了時点の体重は断食前に比べて-3.45±2.10kgだった。

体組成

体組成の測定はDXA法によった。放射線曝露のリスク低減のため連日は施行しなかった。

脂肪量は完全断食6日目に-10.7%、完全回復5日目で-17.2%と大幅に低下していた。それに対して除脂肪量は完全断食6日目に-9.2%と著減していたが、完全回復5日目にはベースラインレベルに回復していた。

脈拍、血圧、CK、LDH

脈拍は徐々に上昇し、断食8日目には+36.4%で最高値となり、摂取エネルギー量制限下での回復開始後に低下し、完全回復期間の3日目にベースラインレベルに回復した。収縮期血圧は断食7日目に最低レベルとなり、やはり完全回復期間の3日目にベースラインレベルに回復した。

クレアチンキナーゼ(CK)、乳酸脱水素酵素(LDH)などは有意な変化を示さなかった。

栄養指標

総タンパク質、アルブミンは、一部を除いてほぼ安定していた。ただし、プレアルブミンは完全断食3日目に-13.8%と低下し、9日目には約4割低下して最低レベル(181.0±26.34mg/L、-39.6%)に達した。回復期間を経た研究終了時点でも-17.9%低下した状態にとどまっていた。

レチノール結合タンパクの変化傾向も、程度の違いはあるもののプレアルブミンと同様に推移した。トランスフェリンも同様だった。

糖代謝

血糖値はベースラインの86.2±7.9mg/dLから完全断食4日目には、63.1±7.1mg/dLと最低レベルとなった。その後はわずかに上昇して回復期間も含めてほぼ安定していた。

反対にケトン体のβ-ヒドロキシ酪酸は、完全断食開始とともに上昇し、ベースラインの0.177±0.044mmol/Lに対して断食5日目には1.308±1.053mmol/Lと最高レベルに達した。回復期間中にβ-ヒドロキシ酪酸は直線的に低下し、摂取エネルギー量制限下での回復開始後3日目にベースラインレベルとなった。

インスリンは断食開始とともに即座に低下し、3日目に最低レベルとなった。HOMA-IRは断食期間中、インスリンと同じ傾向で低レベルを維持した。逆に、グルカゴンは断食3日目に3.56%、6日目は15.96%、9日目は14.51%、それぞれベースライン比で高値となった。

このほか、脂質代謝関連では、総コレステロール、LDL-C、ApoA1は上昇、TGとHDL-Cはほぼ不変だった。肝機能には影響が生じなかった一方、腎機能はわずかな低下した。また、論文において「非常に興味深い点」として挙げられていることとして、脂溶性ビタミンレベルが著しく増加したこと、ナトリウムとクロール(塩素)レベルが大幅に減少していた。

著者らは本研究を「臨床での新しい断食戦略を計画する際のエビデンスとなり得る」としている。結論としては、「成人は10日間の完全な断食に耐えることができ、その間に新たな代謝恒常性が達成される。ただし、ナトリウムとクロールをサプリメントとして摂取することを考慮する必要があるかもしれない」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of 10-Day Complete Fasting on Physiological Homeostasis, Nutrition and Health Markers in Male Adults」。〔Nutrients. 2022 Sep 18;14(18):3860〕
原文はこちら(MDPI)

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