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パラアスリート特有の栄養課題が明らかに 懸念や葛藤を理解した栄養士のサポートが必要

国際レベルで活躍する、下肢に障害のある現役のパラアスリートを対象とした食事と栄養に関するインタビュー調査から、パラアスリートが食事と栄養に関して抱える懸念や葛藤を十分に理解した栄養士が、スポーツ栄養の実践に向けてサポートすることの重要性が明らかになった。大阪公立大学の研究グループの研究によるもので、「Nutrients」に論文が掲載されるとともに、同大学のサイトにニュースリリースが掲載された。

パラアスリート特有の栄養課題が明らかに 懸念や葛藤を理解した栄養士のサポートが必要

研究の概要:アスリートとしての栄養と障害を持つことによる食事への影響

大阪公立大学都市健康・スポーツ研究センターと生活科学研究科の研究グループは、下肢に障害があり、国際レベルの競技会へ参加する現役の選手、ならびにパラスポーツ競技の健常者トレーナー計7名を対象として、「競技力向上のために理想的だと考える食事」「自身の食事評価」「支援者としての栄養士の位置づけ」について、インタビュー調査を行い、回答内容の計量テキスト分析※1を実施した。

※1 計量テキスト分析:文章・テキストデータに含まれる語の品詞や出現頻度などを計量的に分析する手法。

健常アスリートの場合、エネルギー源となる炭水化物、タンパク質、脂質等の摂取を重要視する傾向にあるが、本研究では、ほぼすべての対象者が、野菜を多く含み、栄養バランスに偏りのない食事が競技力向上のために理想的であると回答した。その背景には、競技力向上への効果よりも、「日常生活での車いす操作に支障をきたしたくない」「生活習慣病を発症したくない」などという意識から、食事摂取量を控えている実態があると考えられる。

本研究結果より、パラアスリートが「理想的」だと考える食事が、必ずしも競技力向上のために望ましい食事であるとは限らず、また、たとえ真に望ましい食事を理解していたとしても、実践には障害の特性によってさまざまな障壁があることがわかった。さらに、パラアスリートが抱える懸念や葛藤を十分に理解した栄養士が、彼らと良いパートナーシップを結び、スポーツ栄養の実践に向けてサポートすることが重要であると考えられた。

研究の背景:パラアスリートへの栄養サポートの課題を探る

東京2020パラリンピックでのパラアスリートによる、見るものに感動と勇気を与えるプレーの数々は記憶に新しい。スポーツ栄養学の理論に基づく栄養管理は、アスリートの競技パフォーマンスを向上させるだけでなく、怪我の予防、早期の疲労回復、さらには引退後の健康維持にとって欠かせない。しかし、健常アスリートに比べ、パラアスリートにとって、そのような栄養管理を受ける機会が十分に提供されているとは言えない。

本研究は、パラアスリートがスポーツ栄養を実践するうえで、どのようなことが課題となっているのか明らかにするために実施された。

研究の内容:パラアスリートと理学療法士にインタビュー調査

国際レベルの競技会(車いすのテニス、ソフトボール、卓球)に参加している下肢に障害を有するパラアスリート6名、ならびにボッチャ競技に帯同する健常な理学療法士1名の計7名を対象として、「競技力向上のために理想的だと考える食事」、「自身の食事評価」、「支援者としての栄養士の位置づけ」についてインタビュー調査を行い、回答内容の計量テキスト分析を実施した。

その結果、ほぼすべての対象者が、野菜を含み、栄養バランスに偏りのない食事が競技力向上のために理想的であると回答した(図1)。

図1

「競技パフォーマンスを向上させるために理想的だと考える食事とはどのようなものですか?」に対する回答の共起ネットワーク

「競技パフォーマンスを向上させるために理想的だと考える食事とはどのようなものですか?」に対する回答の共起ネットワーク※2。出現パターンの似通った語は4つのクラスターに分類できる。
※2 共起ネットワーク:文脈の中で出現パターンの似通った語を線で結び、語と語の関係性を視覚化したもの。
(出典:大阪公立大学)

一方で、競技力向上への効果よりも、「日常生活での車いす操作に支障をきたしたくない」「生活習慣病を発症したくない」などの思いから、食事摂取量を意識して控えている実態がうかがえた(表1)。

表1

 「競技パフォーマンスを向上させるために理想的だと考える食事とはどのようなものですか?」に対する回答内容のカテゴリー化

「競技パフォーマンスを向上させるために理想的だと考える食事とはどのようなものですか?」に対する回答内容のカテゴリー化。図1の4つのクラスターを参考に、4つの話題に分類される。
(出典:大阪公立大学)

また、高い競技レベルにありながら、食事のアドバイスを栄養士から日常的に受けているパラアスリートは、少なくとも今回の対象にはいなかった。

このことから、パラアスリートが「理想的」だと考える食事が、必ずしも競技力向上のために望ましい食事であるとは限らず、また、たとえ真に望ましい食事を理解していたとしても、実践には障害の特性によってさまざまな障壁があることがわかった。さらに、それらの障壁の根底にある、パラアスリートが抱える懸念や葛藤を十分に理解した栄養士が、彼らと良いパートナーシップを結び、スポーツ栄養の実践に向けてサポートすることが重要であると考えられた。

期待される効果・今後の展開

今回、インタビュー内容を計量テキスト分析によって客観的に評価し、視覚化することで、パラアスリートがスポーツ栄養を実践しようとする際に直面するさまざまな課題を明らかにすることができた。このことは、パラアスリートと、栄養士、トレーナーをはじめとする支援スタッフとの認識の“ずれ”を埋め合わせ、両者の協力を容易にすることに役立つ。

研究グループでは、「今後は、より幅広い年代、障害特性、競技種目に調査の対象をおき、栄養士が参照できる、類型化された栄養指導方法を構築するとともに、実際に食事のアセスメントを行い、パラアスリートのエネルギー消費量の推定方法を確立することで、パラアスリートに対する栄養サポートの実践をめざすとしている。

関連情報

野菜たっぷり、バランス良く…で大丈夫?? パラアスリート特有の栄養課題が明らかに ~栄養士による指導方法の確立に向けて~(大阪公立大学)

文献情報

原題のタイトルは、「The Role of Diets and Dietitians for Para-Athletes: A Pilot Study Based on Interviews」。〔Nutrients. 2022 Sep 9;14(18):3720〕
原文はこちら(MDPI)

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