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水泳選手のパフォーマンスは競技歴8年で最高レベルに到達? 欧州60万人、3,700万回のレース記録を解析

水泳選手は男性、女性ともに、競技歴が約8年になった時点で、パフォーマンスが最高レベルに到達することを示唆するデータが報告された。欧州水泳連盟の20年間、約60万人、3,700万回の公式データベースの記録を解析した結果、明らかになった。

水泳選手のパフォーマンスは競技歴8年で最高レベルに到達? 欧州60万人、3,700万回のレース記録を解析

水泳選手が最高のパフォーマンスを発揮する期間は2.6年間

一部のスポーツでは、アスリートとして世界的なレベルで活躍するために、身体的に最もハイパフォーマンスを発揮し得る年齢に狙いを定め、小児期から例えば10年間というスパンの計画的なトレーニングを行う戦略がとられることがある。水泳は、テクニカルな面と、長年のトレーニングの蓄積で得られる持久力の双方が成績に影響するという特徴があり、そのような長期的計画に基づく育成戦略のメリットがより生きてくる可能性がある。

長期的なスパンでの育成戦略を立てるに際しては、年齢が重要な鍵を握る。アスリートのパフォーマンスに影響を与え得る年齢に関する指標としては、実年齢(chronological age.暦年齢)、相対的年齢(relative age.早生まれや遅生まれを考慮する年齢)、そして競技年齢(competition age.競技歴)が挙げられる。今回紹介する論文の研究では、これら三つの年齢と、水泳選手が最高のパフォーマンスに到達したタイミングとの関連を検討している。

なお、世界的な成功を収めたスイマーの多くは21~26歳の間にベストタイムを記録し、その前後の最高のパフォーマンスを発揮し得る期間は平均2.6±1.5年と報告されているという。

過去20年間の選手のパフォーマンスを評価

研究のためのデータは、欧州水泳連盟(Ligue Européenne de Natation; LEN)の公式データベースを用いて、2000~19年の20年間、58万8,938人(平均年齢14.2±6.3歳〈男性15.9±5.8歳、女性14.7±4.7歳〉)、3,668万7,573回のレースの記録を解析対象とした。

FINAポイントと年齢に関する指標との関係を分析

各選手のパフォーマンスは、国際水泳連盟(Fédération Internationale de Natation;FINA)の公式指標である「FINAポイント」で評価した。FINAポイントは、その時点の世界記録を分子、選手のベストの記録を分母にとり、千分率で表した値。評価時点で世界トップに立つ選手は1000ポイントであり、その記録よりベストタイムが1割長い選手は909ポイントとなる(10÷11×1,000)。この方法で、約60万人の選手のFINAポイントを算出した。

解析したのはすべての種目・レース距離であり、前述のように20年間で約3,700万回分のレース記録が解析された。なお、各カテゴリー(種目・距離)の平均記録から3標準偏差以上長いタイムは、外れ値として解析から除外した。

FINAポイント900点台の選手の暦年齢と競技歴

男性選手:全種目平均では、23.5歳、競技歴7.7年で自己ベストに

解析対象者のうち男性選手は30万6,877人だった。

FINAポイントに基づき、900点台、800点台、700点台…と10段階に分類すると、トップのカテゴリーである900点台は、155人(0.05%)だった。なお、該当選手が最も多い層は200点台であり、18.2%が含まれていた。

FINAポイント900点台の選手の平均年齢(暦年齢)は23.5±3.6歳、競技年齢(競技歴)は7.7±4.2年だった。

後述するが、暦年齢、競技歴、相対的年齢のうち、ベストタイムに最も安定した影響を及ぼしていたのは競技年齢であり、種目別にFINAポイント900点台に該当する選手の競技年齢を解析した結果は以下のとおり。バタフライ10.0±3.7年、背泳8.9±4.1年、平泳ぎ6.2±3.0年、フリースタイル8.9±4.1年、個人メドレー9.3±6.1年。

女性選手:全種目平均では、21.4歳、競技歴8.0年で自己ベストに

次に女性選手の解析結果をみると、全体で28万2,091人であり、FINAポイント900点台は111人(0.04%)だった。該当選手が最も多い層は300点台であり、20.8%が含まれていた。

FINAポイント900点台の選手の平均年齢(暦年齢)は21.4±2.7歳、競技年齢(競技歴)は8.0±3.2年だった。種目別にFINAポイント900点台に該当する選手の競技年齢を解析した結果は、バタフライ11.0±4.6年、背泳7.4±2.7年、平泳ぎ9.4±3.8年、フリースタイル8.6±3.1年、個人メドレー8.4±1.9年。

競技歴は男女すべての種目の成績に安定した影響

競技年齢は、男性選手と女性選手のベスト記録(全種目平均のβ値が男性・女性ともに0.34)、およびレース距離別のベスト記録(β=0.19~0.33)に、安定した影響を示していた。また、レース距離が長いほど暦年齢の影響が低下し(β値が0.4から-0.13に変動)、相対的年齢の影響が増加(β値が0.02から0.11に変動)するという傾向も認められた。

著者らは、「本研究での解析結果は、特定のパフォーマンスレベルに到達するために必要な競技年数の現実的な目標を設定するために援用可能と考えられ、選手育成の指針の確立に寄与する可能性がある。今後の研究では、キャリアの途中で目標とする種目の泳法やレース距離を変更した場合に、ベストパフォーマンスにどのように影響が生じるかといった解析が必要だろう」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Competition age: does it matter for swimmers?」。〔BMC Res Notes. 2022 Feb 23;15(1):82〕
原文はこちら(Springer Nature)

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