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バスケットパフォーマンスに対するカフェインの急性効果 システマティックレビューでの検討

バスケットボールのパフォーマンスに対するカフェイン摂取の急性効果に焦点を絞ったシステマティックレビューの結果が報告された。カフェイン摂取によって全般的なパフォーマンス向上が認められ、一貫性に欠けるもののバスケ特有のパフォーマンスも向上する可能性がみられたという。

バスケットパフォーマンスに対するカフェインの急性効果 システマティックレビューでの検討

カフェインは、バスケ特有のパフォーマンスに影響を及ぼし得るか?

バスケットボールは試合中の40分間で4,000~5,000m走行し、50回以上のジャンプを行うという好気性と嫌気性双方のパフォーマンスが要求されるスポーツで、倦怠感がパフォーマンスの低下につながりやすい。倦怠感に対しては、スポーツアスリートか否かにかかわらずカフェインが広く用いられている。スポーツアスリートに関しては、2004年にドーピングの禁止薬物リストから削除されて以降、急速に利用されるようになった。現在、アスリートの4人に3人はカフェインを競技前または競技中に摂取しているとの報告がある。

バスケットボール選手を対象にカフェイン摂取の急性効果を検討した研究はこれまでにも複数報告されている。ただしそれらそれぞれの研究は検討対象者数が少なく、カフェイン摂取がバスケットボールのパフォーマンスに影響を与えるのか否かを総合的に判断することは難しかった。そこで本論文の著者らは、これまでの無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)の結果を統合して考察するシステマティックレビューによって、この点を検討した。

システマティックレビューの手法について

文献検索には、Web of Science、PubMed、Scopus、ProQuest、MEDLINE、ERICという文献データベースが用いられた。

適格基準は以下の通り。

  1. 英語で執筆され全文が公開されていること、
  2. バスケットボールのパフォーマンスに対するカフェインの急性効果を調査していること、
  3. プラセボの対照群を置いてランダム化比較デザインで行っていること、
  4. 用いたカフェインの量や介入期間が明確であること、
  5. クロスオーバーデザインの場合、ウォッシュアウト期間が24時間以上設定されていること、
  6. 2000年以降に発表されていること、
  7. 倫理委員会の承認を得ていること。

除外基準は以下の通り。

  1. 英語以外の論文、
  2. 抄録のみ閲覧可で全文が公開されていない論文、
  3. カフェイン摂取の長期的影響(慢性効果)を検討した研究、
  4. カフェイン介入の用量が2mg/kg未満の研究、
  5. プラセボ群を設定していない研究、
  6. バスケットボール以外の球技での研究、
  7. システマティックレビューなどの研究、
  8. パラアスリート対象の研究。

検索キーワードには、カフェイン、バスケットボール、耐久性、パフォーマンス、パワー、瞬発力、スピード、柔軟性、敏捷性、精度などを設定。システマティックレビューとメタアナリシスのガイドライン(PRISMA)に則して、2名の研究者が独立して検索を行い、採用の意見の不一致は協議により解決した。

一次検索で1,200報がヒットし、ハンドサーチによる7報を追加後、重複削除により160報となった。論文タイトルと抄録によるスクリーニングで35報に絞り込み、全文精査を経て最終的に8件の研究報告を解析対象として抽出した。

抽出された研究報告の特徴

抽出された8件の研究は、2014~21年に発表されていた。研究参加者数は合計120人(範囲5~21人)であり、3件は男性のみ、1件は女性のみを対象としていた。平均年齢は、最も若いアスリート対象研究が14.9±0.8歳であり、最高齢の研究は27.9±6.1歳だった。また、8件中6件はプロ選手対象の研究であり、1件は大学生アスリート、1件はジュニアアスリート対象だった。

カフェインの用量は7件が3mg/kg、1件は6mg/kgだった。8件中7件はカプセルとして摂取され、1件はエナジードリンクとして摂取されていた。カフェイン摂取のタイミングについては8件すべてがテストの60分前だった。試験の質の評価指標であるPEDroスケールのスコアは、10点が5件、9点が2件、8点が1件であり、中程度から高品質であるとみなされた。

バスケ特有のパフォーマンスへの影響についてはより多くの研究が必要

これら8件の研究を基に論文では、全般的な身体能力への急性効果、バスケ特有のパフォーマンスへの急性効果、およびその他の個々の評価指標への影響という3つの視点で検討を加えている。

バスケットボール選手の身体能力に対するカフェインの急性効果

カフェイン3mg/kgの摂取による、垂直跳び、ドリブルを伴わない10mおよび20mスプリント、シミュレーションゲーム中のパフォーマンスなどの有意な向上が認められた。

バスケットボールのパフォーマンスに対するカフェインの急性効果

バスケットボールの試合中の全体的な精度とドリブル速度に対するカフェイン摂取の急性効果は一貫してなかった。フリースローの回数は増加するとの報告があったが、3および6mg/kgのカフェイン摂取は、シュートの精度の向上につながらなかった。

カフェインの覚醒作用を考慮し、午前と午後で比較した研究が存在した。それによると、3mg/kgのカフェインは、午後のテストと比較して午前のパフォーマンスの改善に影響を及ぼしていた。

一方、カフェインによる介入で不眠症や排尿回数の増加を報告している研究もみられた。結論としては、「カフェイン摂取とプラセボ摂取との間に、有酸素能力、フリースローや3ポイントシュートの精度、およびドリブル速度などに関して、一貫性のない差がみられた。自覚的運動強度(rating of perceived exertion;RPE)の有意な違いは認められなかった。とは言え、カフェイン摂取により全般的なパフォーマンスの向上と、一部のバスケットボール固有のパフォーマンスが向上する可能性がみられた」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Acute Effects of Caffeine on Overall Performance in Basketball Players—A Systematic Review」。〔Nutrients. 2022 May 5;14(9):1930〕
原文はこちら(MDP)

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