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カロリー制限に時間制限食を加えても減量効果は高まらない 介入期間1年の無作為化比較試験

手軽なダイエットとして、時間制限食の人気が高まっている。では、従来から行われているカロリー制限に、時間制限を追加したとしたら、より高い減量効果を得られるだろうか。残念ながら、そうとは言えないことを示唆するデータが、中国で行われた介入期間が1年に及ぶ無作為化比較試験の結果として、医学のトップジャーナルの「The New England Journal of Medicine」に論文掲載された。

カロリー制限に時間制限食を加えても減量効果は高まらない 介入期間1年の無作為化比較試験

BMI 28以上の地域住民対象の1年間に及ぶ無作為化比較試験

この研究の参加者は、中国の広州の地域住民から、ポスターやチラシ、インターネットを通じて募集された。参加の適格条件は、年齢が18~75歳、BMIが28~45であり、除外基準として、急性疾患罹患者、悪性腫瘍、糖尿病、ウイルス性肝炎、重度の肝機能または腎機能の低下、6カ月以内の心血管疾患、12カ月以内の消化器疾患または体重に影響を与える疾患、消化器手術の既往、および現喫煙者が設定されていた。

強力な介入により25%の摂取制限を課し、さらに1群には摂取時間制限

この研究は介入期間が12カ月であり、時間制限食の効果を検討した研究としては長期であることが特徴の一つ。

介入期間中、研究参加者全員に、摂取エネルギー量を男性は1,500~1,800kcal/日、女性は1,200~1,500kcalとするように指示された。この摂取エネルギー量は、研究参加前の摂取量の約75%に相当する。

研究参加者を無作為に2群に分け、1群は摂取エネルギー制限のみ、他の1群は摂取エネルギー制限とともに、毎日8~16時までを摂取可とし、その他の時間帯はエネルギー量のない飲料のみを摂取するという、摂取時間制限を加えた。

すべての研究参加者は、介入の前半(6カ月間)に毎日、食事内容を記録するとともに写真を撮影し、それらを研究者へ送信して、週に2回、電話やアプリを介した改善指導を受けた。また、2週間に1度は個別に面談を行い指導された。後半の6カ月は、電話やアプリを介した改善指導が週に1回、対面での指導は月に1回の頻度で続けられた。

すべての評価指標が、介入前に有意差なく、介入中の変化量に有意差なし

研究参加者は139人(年齢31.9±9.1歳、体重88.2±11.6kg)で、うち69人が時間制限を伴う群に割り当てられた。

ベースライン時の各指標に有意差なし

まず、ベースライン時の群間差をみると、BMIや体脂肪率、腹部内臓脂肪・皮下脂肪面積、摂取エネルギー量、食事にあてる時間、身体活動量、血圧、血糖値、血清脂質など、評価した指標のすべてに有意差はなかった。

12カ月の介入を終了したのは118人(84.9%)であり、介入が遵守された日数の占める割合は、時間制限を伴う群が84.0±16.1%、摂取エネルギー制限のみの群は83.8±12.6%で、有意差はなかった。

体重・体脂肪量の変化に有意差なし

次に、本研究の主題である、介入期間中の変化をみてみよう。

体重の変化は、時間制限を伴う群が-8.0(95%CI;-9.6~-6.4)kg、摂取エネルギー制限のみの群は-6.3(同-7.8~4.7)kgであり、両群ともに有意に減少していた。ただし、変化量の差は-1.8(-4.0~0.4)kgと95%信頼区間が0を跨ぎ、有意差はなかった(p=0.11)。

体脂肪量の変化も同様に、両群ともに有意に減少していたが、変化量の差は-1.5(-3.1~0.2)で群間の有意差はなかった。BMIや腹部内臓脂肪・皮下脂肪面積など、体組成関連指標の変化量もすべて同様であって、両群ともに有意に改善していたが、改善幅に有意差がなかった。

心血管代謝関連指標の変化に有意差なし

続いて、介入中の血圧、血糖、インスリン初期分泌、インスリン抵抗性、血清脂質などの心血管代謝指標の変化に目を向けると、それらもすべて(インスリン分泌指数以外)、両群ともに有意に改善していたが、変動幅に有意差がなかった。

有害事象に有意差なし

有害事象の発生率は、時間制限を伴う群が27.5%、摂取エネルギー制限のみの群は32.9%で、有意差はなかった(p=0.49)。

摂取エネルギー制限に摂取時間制限を加えても、有意な変化は現れない

以上より論文の結論は、「肥満者が減量目的で摂取エネルギー制限を行い、それに摂取時間制限を加えても、体重、体組成、心血管代謝リスク因子に、有益な効果はみられなかった」とまとめられている。

結果としてネガティブな結論ではあるが、論文からは、介入による変化幅に有意差はないものの、評価されている指標の大半は時間制限を追加した群の改善幅のほうが大きいことも見てとれる。とは言え、時間制限食は、従来からのカロリー制限の高いハードルを下げる一法として試みられることが多いため、摂取エネルギー制限を遵守して、さらに時間制限を加えるという方法にトライしようという人は、それほど多くはないかもしれない。

文献情報

原題のタイトルは、「Calorie Restriction with or without Time-Restricted Eating in Weight Loss」。〔N Engl J Med. 2022 Apr 21;386(16):1495-1504.〕
原文はこちら(Massachusetts Medical Society)

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