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スポーツ栄養と食品知識、マレーシアの大学生アスリートの現状

マレーシアから、大学生アスリートのスポーツ栄養に関する知識を調査した結果が報告された。同国ではこれまで、アスリートの栄養に関する知識レベルの調査はほとんど行われていなかったという。今回の調査結果は、栄養関連教育を強化する必要性を示すものとなったとのことだ。

スポーツ栄養と食品知識、マレーシアの大学生アスリートの現状

クアラルンプールの大学生アスリート対象に横断調査

アスリートにとって栄養要件はスポーツパフォーマンスの維持・向上や、健康の維持に重要であり、先進諸国ではさまざまな対象で栄養に関する知識レベルの調査が行われ、介入効果が確認されてきている。しかし本論文の著者によると、マレーシアでは現在、この点で立ち遅れているのが現状だという。そこで著者らは、同国の首都であるクアラルンプールにある大学に在籍するアスリートを対象として、栄養知識に関するオンラインによる横断調査を行った。

栄養知識質問票(NUKYA)を用いたオンライン調査

適格条件は、18歳以上のマレーシア国民であり、大学で何らかのスポーツ活動を行っていること。心血管疾患、高血圧、糖尿病などの慢性疾患を有する学生は除外した。

オンライン調査にはGoogleフォームを用いた。スポーツ栄養に関する知識は、若年者・成人アスリートのための栄養知識質問票(nutritional knowledge for young and adult athletes;NUKYA)を使用した。この質問票(NUKYA)は、別の場所で精度検証済みであり、最新の食事ガイドラインに基づきつつ、マレーシアの慣習や文化に則して変更が加えられている。

NUKYAでは、主要栄養素について27項目、微量栄養素は19項目、水分補給8項目、および食事摂取周期について3項目、計57項目の知識を問い、正解は1点、不正解または「わからない」は0点と判定。合計スコアは0~107点の範囲で、これを100%に換算して評価した。既報研究に基づき、スコアが60%以上の場合、適切な知識を有していると定義した。

栄養に関する知識の不十分さが示される結果に

解析対象は、18~22歳の大学生アスリート70人で、年齢20.6±1.0歳、女性52.9%、BMI22.4(範囲16.5~31.9。80.0%が基準値内)。

行っている競技は、団体競技が42.9%、個人競技のうちアスレチック系15.7%、格闘技14.3%、ラケットスポーツ7.1%で、20%はその他スキル系スポーツ。競技レベルは、学内レベル20.0%、州レベル45.7%、全国レベル24.3%、国際レベル10.0%。

なお、大半(95.7%)が栄養学の講義を受講済みであり、半数(50.0%)は「栄養士や管理栄養士(dietitians / nutritionists)に相談した経験がある」と回答していた。

タンパク質についてはよく知っているが、脂質の知識は不確か

栄養知識質問票(NUKYA)のスコアは、28~81%の範囲で、平均は58.6%であり、カットオフ値の60%に届かなかった。

領域別にみると、スコアが最も高かったのは食事摂取の周期性についてであり、平均スコアは84.8%、回答者の95.7%が60%のカットオフ値を超えていた。一方、脂質に関するセクションの知識スコアが最も低く、平均スコアは44.6%であり、60%のカットオフ値を超えたのは22.9%のみだった。

より詳細な小項目別の正答率をみると、果物と野菜の推奨摂取量の正答率は14.3%と低く、エネルギー生成におけるビタミンとミネラルの役割も21.4%と低かった。一方で食事性タンパク質源については平均スコア71.2%と高値だった。

栄養士に相談したことがある学生アスリートのほうがスコアが低い

以前に栄養士や管理栄養士に相談した経験の有無で比較すると(その割合は前述のとおり50%ずつ)、相談経験がある学生アスリートのスコアは55.6%であり、このスコアは相談経験がない学生アスリートの61.5%より有意に低かった(p=0.02)。

この点については論文中で「驚いた結果が示された」と述べられており、「この結果を説明できるような関連情報は、本調査からは収集されていない。また、大学内には現在、栄養士や管理栄養士が存在しない。よって、相談経験のある学生アスリートは、学外の他の機関に所属する栄養専門職者から食事のアドバイスを受けていることを意味する」と述べている。

なお、アスリートが、単に栄養専門職者に相談するだけでは知識の向上につながらない可能性は、ヨルダンで行われた調査からも示されている。

関連情報ヨルダンのアスリート&コーチ約9割はスポーツ栄養学の理解度が低い 約3,600人の調査結果

情報入手経路の4位に栄養士/管理栄養士

栄養に関する情報の入手経路は、学者(academicians)が81%、インターネット63%、医療関係者57%が上位3位であり、その次の4位に栄養士/管理栄養士54.3%がランク入りしていた。

結論には、「全体として、この研究では、大学のアスリートのスポーツ栄養と食品に関する知識は不十分であることが示された。誤った理解のためにアスリートの健康やスポーツのパフォーマンスに悪影響を与える可能性がある。よって、スポーツ栄養学と一般的な食品の知識レベルを改善するための対策が必要とされる」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Sports Nutrition and Food Knowledge among Malaysian University Athletes」。〔Nutrients. 2022 Jan 28;14(3):572〕
原文はこちら(MDPI)

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