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バスケットボールのためのエルゴジェニックエイド、現在のエビデンスのシステマティックレビュー

バスケットボールに特化し、エルゴジェニックエイドのエビデンスをレビューした論文が発表された。カフェイン、ビタミンE、ビタミンD、EPAなどに、一定レベルの根拠が確認されたという。スペインの研究者の報告。

バスケットボールのためのエルゴジェニック介入 現在のエビデンスのシステマティックレビュー

瞬発力と持久力を必要とするバスケの栄養戦略

バスケットボールの試合中に、プレーヤーの運動強度は最大心拍数の85%に達し、血中の乳酸濃度は2.7~6.8mmol上昇するという。このような高強度のアクションに加えて、試合中の走行距離は4~5kmに達するため、好気性パフォーマンスも要求され、プレーヤーのVO2maxは50~60mL/Kg/分を要するとされる。このようなハイパフォーマンスを支え、また怪我の防止や回復の促進のために、適切な栄養戦略が欠かせない。食事からの栄養素摂取を補うために、スポーツサプリメントを利用しているバスケ選手は少なくない。

ただし、これまでにバスケ選手対象に実施されたエルゴジェニックエイドの有用性の検討結果は一貫性が欠けている。本論文の著者らは、既報論文を対象とするシステマティックレビューにより、バスケットに特化したエルゴジェニックエイドによる栄養戦略の可能性を検討した。

文献検索の方法と研究の選択

PubMed/MEDLINE、Web of Science、Cochrane Library、Scopusを用いて文献検索を実施。各文献データベースのスタート時点から2021年末までに公開された文献を対象とした。適格基準は、バスケ選手を対象にサプリメントを用いた介入を行った研究であり、除外基準は、治療目的での介入、対象者に疾患や外傷既往者を含む研究とした。

なお、分析力を高めるために、性別、年齢、競技レベル、人種などは限定しなかった。検索はPRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses)ガイドラインに則して行われ、2名の研究者が独立して実施。採否の意見の不一致は、3人目の研究者との話し合いによって解決した。

検索でヒットした295件から最終的に40件が分析対象として抽出された。検討されたサプリメントは、ビタミンが最も多く11件、続いてカフェインが9件だった。以下、プロテインが6件、炭水化物5件、クレアチン、硝酸塩、重炭酸ナトリウムが各2件、エイコサペンタエン酸(EPA)、β-アラニン、システイン、グルタミン、マグネシウムが各1件。

バスケ選手の回復とパフォーマンス向上のエビデンス

論文ではこれ以降、回復戦略を目的とした研究と、パフォーマンス向上を目的とした研究に二分し、分析を加えている。

回復を促進するためのエルゴジェニックエイド

炭水化物やプロテイン関連では、20gの炭水化物と20gのクレアチン7日間の摂取が、男性バスケ選手の回復マーカーにプラス効果があることが報告されている。また、プロテインサプリの摂取と運動中の脳の酸素化との間に正の関連があるとの報告もみられる。

ビタミン関連では、非エリートプレーヤーがビタミンEを200〜268mgの範囲で摂取した場合に、回復マーカーに有意な影響がみられたとの報告があった。ビタミンC500mgとビタミンE150mgの組み合わせや、ビタミンE268mgとEPA2gの組み合わせ、ビタミンC1,000mgとβカロテン8mgの組み合わせなども、回復マーカーを改善したという。このほか、マルチビタミンが風邪の罹患率や罹病期間を抑制したとの報告もあった。

その他には、マグネシウム400mg、グルタミン、硝酸塩などについて、一定程度の効果が報告されていた。

パフォーマンスを向上するためのエルゴジェニックエイド

24gのホエイタンパクまたはカゼインを8週間、トレーニング前後に摂取すると、無酸素パフォーマンスと体組成に有意な影響が認められたとの報告がある。

カフェイン3~6mg/kgを運動の60~75分前に摂取することで、無酸素パフォーマンスを改善すると報告されている。有酸素パフォーマンスに関しては3件の研究が見つかったが、比較対照群を置いた研究はなかった。また、概日リズムを考慮した研究からは、カフェインを夕方ではなく、朝に摂取すると有意な影響が観察されると報告されている。

このほか、β-アラニン、重炭酸ナトリウム、ビート根ジュースなどについて、一定程度の効果が報告されていた。

結論とレビューからの推奨

論文の結論では、「サプリメントを使用する前に、バスケットボール選手のニーズを満たすために、的確に計画された栄養価の高い食事療法を実践する必要があり、そのための栄養教育プログラムも必要とされる」と述べたうえで、システマティックレビューからの推奨事項を掲げている。以下はそこからの抜粋。

  • 無酸素パフォーマンスと感覚を高めるためのカフェインの有効量は、3~6mg/kgの範囲であり、朝の運動の60~75分前に摂取すると、より有効。
  • 回復を改善するために、プロテインなどの摂取が重要。運動の直前と就寝前にプロテイン約0.5g/kgまたは25g摂取する。もしくは炭水化物やクレアチンなどを組み合わせて摂取する。例えば、プロテインと炭水化物を1g/kgまたは炭水化物とクレアチン20gを7日間。
  • 回復と健康の促進のために、サプリメントがバスケ選手にメリットを与える可能性がある。例えば、ビタミンE200~268mg、ビタミンD1万IU、EPA2gなど。ただし、今後の研究によるエビデンスの強化が必要。

文献情報

原題のタイトルは、「Ergo-Nutritional Intervention in Basketball: A Systematic Review」。〔Nutrients. 2022 Feb 2;14(3):638〕
原文はこちら(MDPI)

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