ジムユーザーの栄養知識は十分でない? ローマ近郊のアマチュアアスリートでの調査
イタリアのローマとその近郊のスポーツジムに通う、アマチュアアスリートのサプリメントの利用状況と栄養知識を調査した結果が報告された。半数近くがサプリを利用していること、栄養知識は十分とは言えず、ジムユーザーの環境には、正しい栄養知識を伝えるスタッフが少ないという実態が浮かび上がったという。
不適切なサプリ利用や栄養知識の欠如の実態を調査
この論文の著者によると、イタリアではエリートアスリートを対象として、栄養知識やサプリ利用状況を調査したデータは多いものの、非エリートを対象とする研究はほとんど行われていないという。アスリートの人口としては当然ながら非エリートのほうが多く、適切でないサプリ利用や誤った栄養知識による健康面への影響の大きさが懸念される。そこで著者らは、非エリートアスリートの栄養知識とサプリ利用の実態を調査した。
対象は、ローマとその周辺に所在する5つのスポーツジムの利用者のうち、年齢が20~50歳での範囲で何らかのスポーツ活動を行っていること。行っているスポーツの種類やトレーニング量、スポーツ栄養に関する知識、サプリの利用状況など、合計52項目の質問を行った。
スポーツ栄養に関しては5領域、33の質問で評価
スポーツ栄養に関する知識の評価には、33の質問で構成された質問票(nutrition knowledge on sport;NKS)を用いた。この質問票は、主要栄養素、微量栄養素、水分補給、エネルギーバランス、およびサプリメントという5つのトピックスをカバーしており、正解した場合は1点、不正解や「わからない」を選択した場合は0点で、満点は33点。既報研究に基づき、60%以上正答した場合に、スポーツ栄養に関する十分な知識があると判定した。
3割強が何らかの食事療法を実施。栄養士の指導を受けているのは半数弱
解析対象は581人で、20~30歳がほぼ半数(50.3%)を占め、男性がやや多く(56.5%)、教育歴は中等教育レベルが約半数だった(52.8%)。BMIは約7割(69.4%)が基準範囲にあり、25.0%が過体重、2.8%が肥満だった。62.7%が飲酒習慣があり、非喫煙者は69.5%であって、91.4%は疾患を有していなかった。
食習慣に関しては、3割強(31.0%)がスポーツのために何かしらの食事療法を実践していると回答した。食事療法の助言は、48.3%が栄養士から得ていたが、24.4%は自己判断で行い、16.1%はジムスタッフのアドバイスを受けていた。
ほぼ半数がサプリメントを利用
マルチビタミン/ミネラル、アミノ酸、プロテインがいずれも約3割
回答者のほぼ半数(46.4%)が、スポーツサプリメントを利用していると回答した。サプリユーザーは、女性より男性に多かった(38.1 vs 61.9%,p<0.05)。
利用率の高いサプリは、マルチビタミン(31.0%)、アミノ酸(29.5%)、ミネラル(29.1%)、プロテインパウダー(28.7%)などであり、ハーブサプリメントの利用は報告されなかった。クレアチン、グルタミン、カゼインについては、利用者はすべて男性だった。
利用しているサプリの種類を年齢層で比較すると、乳清タンパクやビタミンB、カルシウムは20~30歳の利用率が他の世代よりも有意に高く、鉄は41~50歳の利用率が他の世代よりも有意に高かった。
サプリを利用する目的は、「筋肉量を増やす」が36.9%、「筋肉の修復」が35.1%、「トレーニング後の倦怠感の軽減」が27.6%、「筋力を高める」が25.4%、「パフォーマンスの向上」が16.8%だった。
サプリ利用のアドバイスはトレーナーと栄養士がともに3割弱
誰の勧めでサプリを利用したかとの質問では、ジムトレーナーが27.9%、栄養士が27.1%、医師が21.9%だった。また購入場所は、スポーツ栄養専門店が36.6%、薬局が31.7%、オンラインが27.1%であり、トレーナーから購入したとの回答も4.6%みられた。
性別に比較した場合、男性は女性よりも頻繁にジムトレーナーに相談していることがわかった。
ジム環境にはスポーツ栄養の知識を伝える仕組みがない?
33点満点で評価したスポーツ栄養に関する質問票(NKS)の平均スコアは18.8±5.4点、平均正答率は57.1%だった。60%のカットオフ値に到達した回答者は47.3%であり、満点はいなかった。
正答率は、女性よりも男性のほうが有意に高く(38.5 vs 61.5%)、また、サプリを利用していない人よりサプリ利用者のほうが有意に高かった(41.5 vs 58.5%)。
これらの結果をもとに著者は、「全体として、プロでないアスリートは栄養に関する十分な知識を持っていない。また、ジム環境はサプリメントの役割に関する正しい情報を提供する場として機能しておらず、ジムスタッフは適切な能力を持っていない可能性がある」とまとめ、そのうえで「サプリメントを使用することの利点とリスクに関する科学的に正しい情報を提供することが重要。そのことによってジムユーザーは、彼ら個々の目標を達成するための食事療法を実践することが可能になる」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「Sportsmen’s Attitude towards Dietary Supplements and Nutrition Knowledge: An Investigation in Selected Roman Area Gyms」。〔Nutrients. 2022 Feb 23;14(5):945〕
原文はこちら(MDPI)