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米国では思春期前の長距離ランナーの約半数がサプリメント利用の経験あり、4人に1人は定期的に摂取

平均年齢13歳の思春期前の小児長距離ランナーの約半数が、サプリメント等を摂取した経験があり、さらに4人に1人以上が定期的に摂取しているという実態が米国から報告された。また、定期的にサプリを摂取していることと、食習慣の乱れ、疲労骨折などと、独立した有意な関連があることもわかった。

米国では思春期前の長距離ランナーの約半数がサプリメント利用経験があり、4人に1人は定期的に摂取

小児期からサプリを利用しているアスリートの実態を探る

サプリメントの使用は健康な人が常識的な範囲で摂取する限りにおいて、安全性の懸念は低い。しかし、数多くの製品を過剰に摂取した場合や、何らかの健康リスクがある人が接種した場合、健康被害のリスクが生じる。一般に小児は成人よりも医薬品等の影響が現われやすい。また、サプリは習慣的に摂取されることが多く、小児期に摂取し始めた場合、その後の長い期間、摂取を続けることになると考えられる。

アスリートのサプリメント摂取状況はさまざまな集団で調査されている。しかし、思春期前の小児の長距離ランナーでの大規模な調査は行われていない。本論文の著者らは、これらを背景として、対象者数二千人以上の規模の調査を行った。

調査対象と調査の手法

この研究は、米国のニューイングランド地方で実施された。2020年5月に、約900人のコーチやランナーなどが登録されたデータベースを利用して、中学生のクロスカントリーランナーを募集し、Webベースの匿名調査として行った。調査協力のインセンティブとして、5ドルのギフトカードを付与した。

調査項目は、年齢や身長、体重、トレーニング歴、ベスト記録、女子の初経年齢・月経状態、摂食障害の既往、抑制的摂食行動(Dietary Restraint scoreが3.0以上で判定)のほか、サプリメント、スポーツ食品の摂取状況、ランニング関連傷害(running-related injury;RRI)や疲労骨折の既往など。

なお、サプリを過去1年間に週2回以上摂取している場合を、定期的な摂取と定義した。また、ランニング関連傷害(RRI)には、アキレス腱炎、膝の痛みや損傷、前十字靭帯裂傷、足底筋膜炎、足首の捻挫などを含めた。

サプリメントとして、マルチビタミン/ミネラル、鉄、亜鉛、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、カルシウム、マグネシウム、クロム、その他のリストを挙げ、利用しているものを選択してもらった。スポーツ食品については、クレアチン、グルタミン、クロム、アミノ酸、ダイエットピル、プロバイオティック、エネルギーバー、スポーツドリンクなどのリストを挙げ、利用しているものを選択してもらった。

RRIの既往が過半数で、5%は医師の診断による疲労骨折の既往あり

2,134人から回答を得られた。そのうち、年齢が対象外の(6~9年生でない)もの、解析に必要な情報に不備のあるものを除外し、2,113人を解析対象とした。年齢は13.2±0.9歳、男子59.4%、白人が79.9%で、BMI19.1±1.4、トレーニングでの平均走行距離が37.0km/週。

過半数の52.5%がランニング関連傷害(RRI)の既往を報告し、5%は医師の診断による疲労骨折の既往があった。また、13.5%はベジタリアンだった。

サプリ・スポーツ食品の定期的摂取と利用率

全体の半数近い47.2%がサプリメントまたはスポーツ食品の摂取経験を有していた。より詳しくは、14.6%はサプリメントのみの摂取経験があり、21.2%はスポーツ食品のみの摂取経験、11.5%は双方の摂取経験があった。

サプリメントの定期的な摂取(過去1年間に週に2日以上摂取)に該当するのは26.1%で、4人に1人以上だった。また、2.7%は4種類以上のサプリを定期的に摂取していた。

摂取率の高いサプリは、マルチビタミン/ミネラル18.4%、ビタミンD8.3%、カルシウム6.4%などで、スポーツ食品では、炭水化物・電解質飲料22.0%、エネルギーバー17.9%、プロテインバー/ドリンク15.0%などだった。

サプリの定期的摂取は女子、スポーツ食品は男子に多い

性別に比較すると、サプリの定期的摂取は女子に多く(32.5 vs 21.7%,p<0.001)、細かくみると、マルチビタミン/ミネラル、ビタミンD、カルシウム、鉄の利用率が女子のほうが有意に高った(すべてp<0.001)。ビタミンB群、C、Eの利用率は、性別による有意差がなかった。

一方、スポーツ食品の利用率はすべての製品について男子のほうが高く、また、クレアチンの利用率も男子のほうが高かった(すべてp<0.001)。

サプリ定期的摂取群と非摂取群の比較

次に、サプリを定期的に摂取している群(26.1%)と、それ以外の群を比較すると多くの因子に有意差が認められた。

例えば、サプリ定期的摂取群は、トレーニングでの走行距離が短く(37.6±11.0 vs 35.0±12.3km/週,p=0.002)、走行速度は速かった(6.12±0.36 vs 6.18±0.42マイル/分,p=0.02)。また、疲労骨折、ランニング関連傷害(RRI)の既往が有意に多かった。

食習慣関連では、欠食率や抑制的摂食行動のスコアが高く、前年に減量した割合も高かった。反対に、前年に体重が増加した割合はサプリ非摂取群のほうが高かった。これらはいずれも有意差があった。なお、本調査の対象が思春期前の小児であることから、本来、体重増加が自然であると考えられる。

減量、疲労骨折の既往、欠食などがサプリの定期的摂取と関連

最後に、サプリの定期的な摂取に独立して関連する因子が多変量解析により検討された。その結果、以下の六つの因子が抽出された。

前年の減量OR7.9(95%CI;3.7~16.8)、ベジタリアンOR4.3(同3.3~5.7)、疲労骨折の既往OR3.4(2.2~5.4)、性別(女子)OR1.8(1.5~2.3)、以上はp<0.001。減量の試行OR1.7(1.2~2.5,p=0.007)、欠食ありOR1.5(1.0~2.2,p=0.046)。

この結果から著者らは、「サプリメントを摂取している思春期前の小児アスリートが、食品からの栄養素の摂取を制限している一方でサプリメントを摂取するという不自然な利用をしている状況が示唆される。サプリメントは不足している栄養素の補給に役立つが、食品に含まれている栄養素は相互に関連しあいながら相乗効果を示し、サプリメントとして個別に摂取された栄養素で観察されるものを超える健康上のメリットをもたらす。よって、ユースランナーには、食品からの栄養素の摂取を最適化することを推奨する」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Dietary Supplement Intake and Factors Associated with Increased Use in Preadolescent Endurance Runners」。〔J Acad Nutr Diet. 2022 Mar;122(3):573-582〕
原文はこちら(Elsevier)

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