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筋力トレーニングのパフォーマンスに対する炭水化物摂取の影響 システマティックレビュー

筋力トレーニングのパフォーマンスに対する炭水化物摂取の影響に関する研究を対象とした、システマティックレビューの結果が報告された。炭水化物摂取のパフォーマンスへの影響は、主として持久系スポーツで検討されていることもあり、著者らによると、これまでの筋力トレーニング時の炭水化物摂取に関する推奨は、ナラティブレビューに基づくものにとどまっていたとのことだ。

筋力トレーニングのパフォーマンスに対する炭水化物摂取の影響 システマティックレビュー

筋力トレーニングにおける炭水化物の役割を探る

筋力トレーニングのパフォーマンスを支える栄養素としては、第一にタンパク質が重要視され、両者の関係に関するエビデンスは枚挙に暇がない。それに対して炭水化物は、これまで主に持久系スポーツのパフォーマンスとの関連が主に研究されてきており、最近もそれらの研究を対象とするシステマティックレビューとメタ解析の結果が報告され、持久力における炭水化物の重要性が改めて確認された。

参考持久力パフォーマンスに対する炭水化物摂取の影響 約半世紀にわたる142件の研究のメタ解析

このような背景から、筋力トレーニングと炭水化物摂取の関係に関する研究は多いとは言えない。

現在、既報文献のレビューから、「激しい無酸素運動では8~10g/kg/日の炭水化物摂取を推奨する」との報告や、「ストレングスアスリートには4~7g/kg/日の炭水化物摂取を推奨する」といった報告がみられる。これらの推奨値は、持久系アスリートに対する一般的な推奨である6~12g/kg/日と大きくかけ離れたものでない。ただし、筋力トレーニング時の炭水化物摂取に関するそれらの推奨は、ナラティブレビューに依拠している。

これを背景として本論文の著者らは、炭水化物摂取の筋力トレーニングのパフォーマンスに対する影響の研究を対象とする、システマティックレビューを行った。

システマティックレビューの手法について

システマティックレビューとメタ解析のための優先レポート項目PRISMA(preferred reporting items for systematic reviews)に則してSci ELO、MEDLINE、SPORT Discus、Google Scholarを用いた文献検索を行った。設定したキーワードは、炭水化物、グリコーゲン枯渇、高炭水化物、低炭水化物、マルトデキストリン、サプリメント、グルコース、レジスタンストレーニング、ウェイトリフト、筋力トレーニング、トータルワーク、トルクなどで、2022年1月1日までに公開された論文を対象に2名の研究者が独立して検索した。

適格基準は、サプリメントを含むさまざまな炭水化物の摂取の影響を、動的筋力トレーニングのパフォーマンスで測定したものとし、より具体的には以下の四つのカテゴリーに該当するものとした。(1)筋力測定前の炭水化物摂取の急性効果(最大24時間以内)を検討した研究、(2)筋力測定前の運動誘発性グリコーゲン枯渇と炭水化物摂取の効果を検討した研究、(3)筋力測定前の炭水化物摂取の短期的効果(1日~最大1週間以内)を検討した研究、(4)筋力測定前の炭水化物摂取の長期的効果(1週間以上)を検討した研究。

研究対象者は慢性疾患のない健康な60歳未満の研究とした。論文の言語は制限せず、すべての言語を対象とした。

628件の報告がヒットし、重複の削除、2名の研究者によるタイトルとアブストラクトに基づくスクリーニング、全文精査を経て、適格論文を抽出した。採否に関する意見の不一致については、すべての研究者のコンセンサスが得られるまで検討を重ねた。

49件の研究報告からの考察

最終的に49件の研究報告が抽出された。論文では、前記の四つのカテゴリーごとに解析した結果がまとめられている。

筋力測定前の炭水化物摂取の急性効果(最大24時間以内)

このトピックに関する研究報告は、19件抽出された。16件はクロスオーバー試験で被験者数は11±4人、3件は無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)で被験者数は11±5人。被験者の年齢は23±2歳であり、1件を除いてすべて男性だった。

19件中11件は、炭水化物摂取の筋力トレーニングパワーに対する急性効果は認められないという結論で、有意性を報告していた研究は8件だった。有意性を報告していた8件の解析からは、炭水化物の摂取量とパフォーマンスとの関係に、用量反応効果は認められなかった。一方、トレーニング量との関係については、トレーニング量がより多い場合に炭水化物摂取のプラス効果が大きい傾向が認められた。

筋力測定前の運動誘発性グリコーゲン枯渇と炭水化物摂取の効果を検討した研究

このトピックに関する研究報告は、6件抽出された。すべてクロスオーバー試験で検討されており、被験者数は9±4人、年齢24±2歳。5件は男性のみで1件は男性と女性を対象としていた。

6件中3件は、炭水化物摂取の有意性を報告していた。有意性を報告していた3件の解析からは、炭水化物の摂取量およびトレーニング量とパフォーマンスとの関係に、用量反応効果は認められなかった。

筋力測定前の炭水化物摂取の短期的効果(1日~最大1週間以内)を検討した研究

このトピックに関する研究報告は、7件抽出された。4件はクロスオーバー試験で被験者数は15±11人、3件はRCTで被験者数は19±5人。被験者の年齢は26±3歳で、3件は男性のみ、2件は女性のみ、他の2件は男性と女性を対象としていた。

7件中6件は有意な効果が認められないという結論で、有意性を報告していた研究は1件のみだった。

筋力測定前の炭水化物摂取の長期的効果(1週間以上)

このトピックに関する研究報告は、17件抽出された。4件はクロスオーバー試験で被験者数は23±7人であり、その他はRCTが10件、無作為化されていない対照試験が3件で、被験者数は37±56人。被験者の年齢は29±8歳で大半は男性であり、2件が女性のみ、6件は男性と女性を対象としていた。研究期間は3週間~3カ月の範囲で、平均および中央値は8週間だった。

17件中15件は有意な効果が認められないという結論だった。有意性を報告していた研究の一つは、ケトン産生食との比較でスクワットやベンチプレスのパフォーマンスが有意差が認められたと報告していた。

この領域についてはより多くの研究が求められる

これらの結果のまとめとして著者らは、「49件の研究の39件という大多数は、筋力トレーニングのパフォーマンスに対する炭水化物摂取の有用性を見いだしていなかった。ただし、研究をサブグループ化した場合、有意性が認められる可能性のある条件が示された。トレーニング量がより多い場合に、炭水化物摂取の恩恵が現れるようだ。ただし、筋力トレーニングパフォーマンスに対する炭水化物摂取の影響の検討には、さらに多くの研究が必要とされる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「The Effect of Carbohydrate Intake on Strength and Resistance Training Performance: A Systematic Review」。〔Review Nutrients. 2022 Feb 18;14(4):856〕
原文はこちら(MDPI)

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