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低炭水化物食 vs 高炭水化物&低脂質食、有酸素パフォーマンスへの影響に違いはあるか?

低炭水化物ダイエットのスポーツパフォーマンスへの影響はいまだ十分なエビデンスがない。しかし、低炭水化物ダイエットに期待し、実践を試みるアスリートも増えている。そうしたなか、低炭水化物ダイエットと、高炭水化物で低脂質のダイエットによる、有酸素パフォーマンスや体組成、血清脂質プロファイルへの影響を比較検討した結果が報告された。

低炭水化物食 vs 高炭水化物&低脂質食、有酸素パフォーマンスへの影響に違いはあるか?

身体パフォーマンスに焦点を当てて、クロスオーバー法で検討

近年、高炭水化物ダイエットと低炭水化物ダイエットのどちらが優れているのかという議論が白熱している。それは、減量や血糖管理、心血管疾患の抑制という医学的な面からのみではなく、スポーツパフォーマンスという面でも双方の考え方が主張される。

考え方の主張が繰り返されるということは、どちらが優れているのかはっきりしていないということにほかならない。つまりエビデンスが十分でないということだ。研究ごとに、対象者の年齢や性別が異なり、かつ医学研究であれば、代謝レベルや心血管疾患リスクレベルが異なる。アスリート対象の研究であれば、対象者のパフォーマンスレベル、評価指標により結果に差異が生じるだろう。また、医学研究でもアスリート対象研究でも、研究参加者が低炭水化物食をどの程度遵守できるかも結果に影響を及ぼす。

このような背景のもとで本論文の著者らは、日常的な身体活動量の多い成人を対象とするクロスオーバーデザインにより、両者の違いを心肺運動負荷試験(cardiopulmonary exercise test;CPX)で比較検討するという研究を行った。

研究デザインや研究対象について

研究参加者は、特別な食事療法を行っていない一般的食習慣の18~41歳の成人24名。このうち18名を介入群、他の6名を比較対照群とした。なお、無作為化クロスオーバー法を試みたが、COVID-19パンデミックによる外出制限の影響のため、無作為化が行われず、介入群の試行順序は全員同じだった。介入群18名は、女性13人、年齢24.9±1.3歳、BMI21.8±1.8、対照群の6人は、女性1人、28.5±6.9歳、BMI23.1±1.7。

各条件の食事療法について

介入群に対しては、まず3週間の高炭水化物/低脂質食(high-carbohydrate;HC)が試行された。主要栄養素の組成は、炭水化物75~80%、タンパク質15%、脂質5~10%。炭水化物は、全粒粉製品、ジャガイモ、玄米などの複合炭水化物を主体とし、ショ糖や果糖は避けることとした。

その後、3週間のウォッシュアウト期間を置いて、低炭水化物食(low-carbohydrate;LC)が試行された。このフェーズではまず1週間を導入期間として、炭水化物20〜25%、タンパク質15%、脂質60〜65%を実施。それに続く2週間は、ケトン食療法として、炭水化物5~7%、タンパク質15%、脂質80%とした。

研究参加者は、栄養士から教育を受け、それぞれのフェーズにおいて何を食べれば良いか、メニュー例が提示された。また、総摂取エネルギー量は両方のフェーズで等しくなるように指示をした。なお、食事条件の遵守状況は食事日誌によって確認した。

各食事条件の影響は、心肺運動負荷試験(CPX)によるVO2peak、ピークパフォーマンス、疲労困憊に至るまでの時間(time to exhaustion;TTE)、乳酸値、血糖値や、体重・体組の変化、身体活動量、安静時代謝量(resting metabolic rate;RMR)、および生化学パラメーターなどで評価した。

ピークパフォーマンスとTTEに有意差を確認

結果について、まず、食事摂取量に注目すると、摂取エネルギー量は低炭水化物食(LC)条件よりも高炭水化物/低脂質食(HC)条件のほうが有意に高かった(1,739±606 vs 1,939±430kcal/日.p=0.02)。炭水化物の摂取エネルギー比は、同順に7±2 vs 74±4%、タンパク質は22.1±3.4 vs 13.6±2.3%、脂質は68.5±5.5 vs 9.8±2.6%だった。活動量計で計測した消費エネルギー量や、安静時代謝量(RMR)には有意差がなかった。

心肺運動負荷試験(CPX)の結果

心肺運動負荷試験(CPX)によるVO2peakは、高炭水化物/低脂質食(HC)条件では46.8±6.7mL/kg/分、低炭水化物食(LC)条件では47.2±6.7mL/kg/分で有意差がなかった(p=0.58)。また、対照群は49.4±7.4mL/kg/分であり、二つの介入条件と有意差がなかった。

一方、CPXテスト中のピークパフォーマンスは、HC条件は251±43W、LC条件は240±45Wであり、HC条件のほうが有意に高かった(p=0.0001)。また、疲労困憊に至るまでの時間(TTE)は、HC条件14.5±2.4分、LC条件14.1±2.4分でありHC条件のほうが有意に長かった(p=0.002)。そのほかCPXテスト関連の指標である、心拍数、乳酸値、酸素化効率、血糖値などには有意差がなかった。

体重や体組成の変化

体重は両条件ともにベースライン時から有意に低下し、条件間には有意差がなかった。体脂肪量および内臓脂肪量も同様に、両条件ともに有意に低下して、条件間には有意差がなかった。除脂肪体重と骨格筋量は、両条件ともに介入による有意な変化がみられなかった。

生化学検査パラメーター

ケトン体(βヒドロキシ酪酸)はLC条件では有意に上昇し、HC条件では有意な変化がなく、両条件の比較では前者が有意に高かった。

血清脂質関連では、HC条件で総コレステロールとLDL-コレステロールの有意な低下、トリグリセライドの有意な上昇が認められ、LC条件では有意な変化がなかった。

炎症マーカーであるCRPやインターロイキン-6には、両条件ともに有意な変化がなかった。

以上、本検討からは、高炭水化物/低脂質食を支持する結果が得られた。ただし、前述のように、COVID-19の影響のため試行順序が無作為化されず、介入群では全員が高炭水化物/低脂質食を先に実施していたことは、結果解釈を制限する。

文献情報

原題のタイトルは、「The Impact of a High-Carbohydrate/Low Fat vs. Low-Carbohydrate Diet on Performance and Body Composition in Physically Active Adults: A Cross-Over Controlled Trial」。〔Nutrients. 2022 Jan 18;14(3):423〕
原文はこちら(MDPI)

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