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米国での外食店のカロリー表示義務化後に、メニューのカロリーはどう変わったか

2018年に米国で外食店のメニューへのカロリー表示が義務化されて以降、提供されている商品のカロリーがどのように変化したのかを調べた研究の結果が、米国医師会発行の「JAMA Network Open」に掲載された。全体では有意な変化がないものの、義務化後に加えられたメニューは低カロリーのものが多いという。ただし、店舗の業態によっては、新メニューも逆に高カロリーになっているとのことだ。

米国での外食店のカロリー表示義務化後に、メニューのカロリーはどう変わったか

59の外食チェーンの3万5千以上のメニューのカロリーの変化を検討

米国ではオバマ政権時代のいわゆるオバマケア政策の一環として制定された「患者保護と手ごろな価格の医療法(Patient Protection and Affordable Care Act of 2010)」に基づき2018年、米国内に20店舗以上の店舗を展開している外食チェーン店に対して、価格表示とともに調理済の状態でのカロリーを表示することが義務付けられた。今回紹介する研究は、このカロリー表示義務化の前後で、外食店が提供しているメニューのカロリーに変化が生じたのかどうかを検討したもの。

解析にはニューヨーク市保健局が開発したデータベースに収載されている、米国での売上高トップ100の外食チェーンの栄養成分情報を用い、そのうちカロリー表示義務化以前との比較が可能な59のチェーン店のデータを解析対象とした。解析対象期間は2012~2019年で、解析されたメニュー数は3万5,354品。

解析の結果、カロリー表示義務化前のメニューは1品あたり399±382kcal、カロリー表示義務化後は388±398kcalだった。義務化前からメニューにあり義務化後も継続して提供されていたメニューは、義務化前が369±330kcal、義務化後は373±319kcalになっていた。また、2013年以降2018年のカロリー表示義務化までに登場した新メニューは457±423kcal、2018年の義務化以降に登場した新メニューは376±415kcalだった。一方、2013年以降2018年のカロリー表示義務化までに削除されたメニューは478±396kcal、2018年の義務化以降に削除されたメニューは375±377kcalだった。

全体では有意な差が生じていないが、新メニューは低カロリー

解析対象期間の2012~2019年にかけて、外食チェーン店のメニューは、1品あたり1年につき17kcalずつカロリーが低下していることがわかった。この変化を考慮して統計的に調整後に、カロリー表示義務化前後の1品あたりのカロリーの変化の有意性を検討すると、以下の結果が得られた。

まず、メニュー全体では、1品あたりの変化が-2.0(95%CI;-8.5~4.4)kcalであり、有意な変化は起きていなかった。また、義務化前から義務後後も継続して提供されているメニューに関しても、-2.3(同-11.5~6.3)kcalであり、有意な変化は生じていなかった。

新メニューに限れば-25%と、4分の1のカロリーカット

それに対して、カロリー表示義務化前後の新メニューで比較すると、統計的な有意差が認められた。具体的には、2013年以降2018年のカロリー表示義務化までに登場した新メニューに比較し、2018年の義務化以降に登場した新メニューは-112.9(-208.6~-25.5)kcal低カロリーであり、1品あたりのカロリーは約25%低下していた。

なお、2013年以降2018年のカロリー表示義務化までに削除されたメニューと、2018年の義務化以降に削除されたメニューの差は、0.5(-79.4~84.0)kcalで有意でなかった。

ファストフードチェーン店の新メニューはのみが低カロリー

次に、外食チェーン店を、ファストフード、ファストカジュアル、フォーマルレストラン、コーヒーショップという4つの業態に分類して、カロリー表示義務化前後の変化を検討した。なお、ファストカジュアルは、ファストフードとフォーマルレストランの中間に位置する業態。

その結果、メニュー全体での解析、および、義務化前から義務後後も継続して提供されているメニューでの解析では、4つの業態いずれにおいても、提供しているメニューのカロリーに、統計的に有意な変化は認められなかった。ただし、カロリー表示義務化前後の新メニューで比較すると、ファストフード店とファストカジュアル店で、以下のように統計的な有意差が認められた。

先にファストフードチェーン店についてみると、2013年以降2018年のカロリー表示義務化までに登場した新メニューに比較し、2018年の義務化以降に登場した新メニューは、1品あたり-181.2(-369.9~-18.2)kcal、有意に低カロリーだった。

ファストカジュアルチェーン店の新メニューは高カロリーに変化

それに対してファストカジュアルチェーン店では、2013年以降2018年のカロリー表示義務化までに登場した新メニューに比較し、2018年の義務化以降に登場した新メニューは、1品あたり180.1(24.7~445.1)kcal、有意に高カロリーだった。ただし、ファストカジュアルチェーン店で、2018年の義務化以降に削除されたメニューは、2013年以降2018年のカロリー表示義務化までに削除されたメニューに比べ、178.3(76.5~353.7)kcal、有意に高カロリーだった。

つまり、ファストカジュアルチェーン店ではカロリー表示義務化以降、より高カロリーのメニューの削除と、より高カロリーのメニューの追加を同時に行っていることがわかった。著者らは、「米国の郊外の外食チェーン店の多くはファストカジュアル店で占められていることから、そのメニューの継続的なモニタリングが必要とされる」と指摘している。

なお、フォーマルレストランやコーヒーショップは、新メニューのカロリーについても、義務化前後での有意差はみられなかった。

米国では、一般市民の拙者エネルギー量の30%以上が外食店由来とされ、外食店のメニューへのカロリー表示義務化により生じる変化は、米国人の健康に影響を及ぼす可能性がある。

文献情報

原題のタイトルは、「Changes in Calorie Content of Menu Items at Large Chain Restaurants After Implementation of Calorie Labels」。〔JAMA Netw Open. 2021 Dec 1;4(12):e2141353〕
原文はこちら(American Medical Association)

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