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“うま味”で患者さんの予後とQOL改善! 全国栄養士大会レポートを「あじこらぼ」で公開

2022年03月02日
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患者さんの予後やQOL改善への“うま味”の臨床応用

改めて言うまでもないが、うま味は1908年に日本人研究者である池田菊苗氏が発見した成分。その後1世紀近くが過ぎ、2002年にうま味受容体が発見され、現在は基本五味の一つとして位置づけられ、世界的に「umami」として活用・研究されている。

日本では「うま味=だしの素」との捉え方が多いが、世界では「umami=ヘルシー」と認識されている。実際のところ、うま味に限らず味覚は、食事の楽しみを添えるためだけに存在するわけではなく、生きるために味を感じる必要があると理解されており、うま味も“だしの素”以上の機能性があると考えられる。

そのような「うま味の機能性」を、実臨床に生かす試みが続けられており、既に患者さんの予後やQOL向上など、多くの実績を挙げている。2021年全国栄養士大会では、うま味の研究と臨床栄養の実践の第一人者、徳島大学大学院医歯薬学研究部代謝栄養学分野講師の堤理恵氏による講演が行われた。講演のタイトルは、「うま味研究と活用の最前線~うま味を味方にする新しい栄養ケアのススメ~」。

その講演内容のレポートが、味の素株式会社の管理栄養士・栄養士向け情報サイト「あじこらぼ」に掲載された(以下のリンク先)。その内容の一部を紹介する。

うま味で患者さんの予後とQOL改善! 全国栄養士大会セミナーレポートを「あじこらぼ」で公開
管理栄養士・栄養士向け情報サイト「あじこらぼ」ではPDF版も公開。誰でもダウンロードできる

詳細はこちら(あじこらぼ)

COVID-19前から、BMI高値の人には隠れ味覚障害か多かった

「甘味」はエネルギー源である糖質の感知、「塩味」は電解質、「苦味」は毒物、「酸味」は腐敗を感知するために必要とされる。では、「うま味」の感知は何のために必要なのだろうか? 堤氏の講演はこのような問いかけから始まる。この問い掛けの答については、「あじこらぼ」のレポート記事を読んでいただくとして、ここでは、同氏らが行っている臨床研究の話題を取り上げたい。

その一つは、「隠れ味覚障害」が意外に多いという調査結果だ。現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状の一つとして味覚障害が注目されているが、COVID-19パンデミック以前から味覚障害は決して稀ではなかったようだ。調査対象の17%が、基本五味のうちの甘味、塩味、酸味、苦味のいずれかが低下していたという。また、うま味に関しては、感度が高い人と低い人を比較してみると、最も顕著な違いはBMIであり、うま味感度の低い人はBMIが高い人が多く、食塩やアルコールの摂取量が多くて野菜摂取量が少ない傾向がみられるとのことだ。

うま味による栄養介入で抗がん剤治療の副作用を抑制

「あじこらぼ」に掲載されている堤氏の研究から、もう一つ興味深い成果を紹介しよう。

がん化学療法は現在、多くが外来で実施される。外来では入院に比較し患者さんと接する時間が少なくなるため、患者さんの栄養関連の潜在的なニーズを把握しにくくなる可能性がある。それに対して堤氏が勤務する徳島大学病院で行った栄養サポートからは、8割以上の患者さんから副作用の訴えが聞かれたとのことだ。中でも食欲不振、体重減少、味覚障害が上位を占め、その一部は治療終了後も十分に回復しないケースがあるという。

そこで、同氏らはうま味の機能性に着目。抗がん剤の投与でうま味受容体が減少すること、およびその減少をうま味物質であるグルタミン酸が抑制することを、既に確認していたことから、外来化学療法中の患者さんにグルタミン酸による介入を行った。その結果、介入群は対照群に比較し有意に食事摂取量が多く、かつ、化学療法による食事量の減少が認められなかったという。

さらに興味深いことも明らかになった。徳島大学病院では以前から、化学療法中の患者さんを対象に行った食事アンケートを参考に開発した、「眉山食」と呼ばれるがん患者さん向けの病院食が提供されていた。眉山は徳島市内にある同市のシンボル的な山だ。

その眉山食の栄養成分を解析したところ、一般食に比べてグルタミン酸が有意に多く含まれていたのだという。「つらい状況にある患者さんはグルタミン酸の豊富な食事を求めていることの証しではないか」と堤氏は語っている。また、グルタミン酸添加食により、抗がん剤の副作用の一つとして好発する口内炎が減少したとの報告もあるとのことだ。

以上、うま味を巡る最新の研究報告の一部を紹介した。これら以外にも、知識欲を刺激される栄養介入の話題が「あじこらぼ」の記事には語られている。患者さんや他のメディカルスタッフから、「うま味って出汁の味でしょ?」と聞かれたときに、「そのとおり!」と答えるだけで終わりにしないよう、栄養管理に携わる皆さんにはぜひご一読いただきたい。

詳細はこちら(あじこらぼ)

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