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食事の質が低い人は嗅覚障害の有病率が高い 米国国民健康栄養調査解析の結果

食事の質が低い人は嗅覚障害の有病率が高いことを示唆するデータが、米国の国民健康栄養調査から示された。エネルギー密度の高い食品や飽和脂肪酸、添加糖などの摂取量の多さが嗅覚障害と関連しているが、これらの関連は年齢や性別によりやや異なることも明らかになった。

食事の質が低い人は嗅覚障害の有病率が高い 米国国民健康栄養調査解析の結果

6千人以上のNHANEビッグデータを用いた解析

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、嗅覚障害への人々の関心が高まっている。COVID-19に伴う嗅覚障害は発症後の早期に出現することから、COVID-19陽性であることを判断する最良の予測因子の一つとされている。一方で、過去の研究から、摂取エネルギー量や食事の質が嗅覚機能に影響を及ぼす可能性が指摘されている。

今回紹介する研究では、米国の国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey;NHANES)のビッグデータを用いて、この関係が検討された。2011~14年のNHANESでは、嗅覚機能状態の自己評価が質問されており、この回答と食事インタビューで把握した食習慣との関連が解析された。

解析対象者は40歳以上の成人6,356人。主な特徴は、年齢57.9±0.2歳、男性47.4%、既婚者(パートナーとの同居を含む)65.6%、BMI29.3±0.2、ウエスト周囲長101.4±0.4cmなど。

5人に1人強が自己申告による嗅覚障害を報告

過去12カ月の間に嗅覚上の問題を感じたことがあるか、25歳時点に比べて嗅覚が低下したと感じるか、および幻臭がある場合を、自己申告に基づく嗅覚障害と定義すると、全体の22%にあたる1,399人がこれに該当した。なお、自己申告による嗅覚障害の判定は、嗅覚機能検査による判定結果と、最大80%の精度で一致することが報告されているという。

嗅覚障害を有する群は嗅覚正常群に比較して、高齢(58.6±0.4 vs 57.7±0.2歳,p=0.005)で、BMI(30.0±0.3 vs 29.2±0.2,p<0.001)やウエスト周囲長(103.3±0.7 vs 100.9±0.4,p<0.001)、大量飲酒者の割合(10.8±2.3 vs 6.2±1.1%,p<0.001)が高く、喫煙歴のない人の割合は低かった(45.0±2.2 vs 53.7±1.4%,p=0.001)。また、貧困率が高く、主観的健康感が低いという有意差も認められた。一方、性別や身体活動習慣、教育歴には有意差がなかった。

性別や年齢層によって、嗅覚障害に独立して関連する因子がやや異なる

では、食事の質と自己申告による嗅覚障害との関連をみていこう。なお、食事の質は24時間思い出し法に基づき、米国の食事ガイドラインの遵守状況の評価などに用いられる指標である「Healthy Eating Index(HEI)-2015」のスコアや、脂肪酸、野菜、果物、アルコールの摂取量(エネルギー比率〈%エネルギー〉)などで評価している。

全体的に、HEI-2015の低下(食事の質の低下)および食品のエネルギー密度が、嗅覚障害の有病率の上昇と関連していた。ただ、性別や年齢によってそれらの関連がやや異なっていた。

脂質摂取量、添加糖摂取量などの影響も示される

加重回帰モデルにて、年齢、性別、収入、教育歴、人種/民族、喫煙・身体活動習慣、慢性疾患スコアを調整し、嗅覚異常と独立して関連する因子を検討。

その結果、食品のエネルギー密度(平均差〈MD〉0.06〈95%CI;0.004~0.11〉,p<0.05)、摂取エネルギー量に占める脂質の比率(MD0.96〈0.22~1.70〉,p<0.05)、飽和脂肪酸の摂取エネルギー比率(MD0.47〈0.12~0.81〉,p<0.01)、添加糖の摂取エネルギー比率(MD1.00〈0.33~1.66〉,p<0.01)が高いことが、味覚障害の有病率と関連していた。また、HEI-2015の節度スコア(スコアが高いほど、精製穀物、ナトリウム、飽和脂肪酸、添加糖の摂取量が少ないことを意味する)とは、負の関連が認められた(MD-0.67〈-1.22~-0.11〉,p<0.05)。

一方、アルコール(%エネルギー)や、野菜、全粒穀物の摂取量、および食事の多様性は、嗅覚障害の有意な独立した関連因子としては抽出されなかった。果物の摂取量は、前記の共変量を未調整のモデルでは有意だったが、調整後のモデルでは非有意だった。

高齢者では男性・女性ともに食品のエネルギー密度と有意に関連

前記の関連を性・年齢別に解析すると、以下の関連が明らかになった。

男性:中年は添加糖が多いこと、高年では食品のエネルギー密度が関連

まず、中年男性では添加糖の%エネルギーのみが、嗅覚障害を有することと有意に関連していた(MD1.57〈0.49~2.65〉,p<0.01)。一方、高年男性では食品のエネルギー密度のみが、嗅覚障害を有することと有意に関連していた(MD0.10〈0.01~0.19〉,p<0.05)。

中年女性:4つの食事関連因子が関連

中年女性では、HEI-2015の節度スコアが高いこと(精製穀物、ナトリウム、飽和脂肪酸、添加糖の摂取量が少ないこと)と嗅覚障害との間に負の関連が存在していた(MD-1.62〈-2.47~-0.77〉,p<0.001)。また、アルコールの摂取量(%エネルギー)との間にも負の関連が認められた(MD-1.71〈-3.18~-0.25〉,p<0.05)。

正の関連が認められた因子は、脂質摂取量(1.90〈0.71~3.10〉,p<0.01)と脂肪酸摂取量(MD0.96〈0.31~1.61〉,p<0.01)だった(いずれも%エネルギー)。

高年女性:野菜摂取量の少なさも有意に関連

高年の女性では、食品のエネルギー密度の高さと(MD0.12〈0.01~0.23〉,p<0.05)、野菜摂取量が少ないことが(MD-0.17〈-0.28~-0.05〉,p<0.01)、嗅覚障害と独立して関連していた。

COVID-19関連嗅覚障害の評価にも、食事の質が影響を及ぼす可能性

著者らは、「本研究には食事の質をインタビュー形式で把握しているため、想起バイアスが存在し得ること、嗅覚障害の有無を自己申告で判定していることなどの留意点があるものの、NHANEというビッグデータを用いたい検討で既報研究と概ね一致する結果が得られた」とまとめている。そのうえで、「嗅覚障害と食事の質の関連が、男性や高齢の女性に比べて中年期の女性で強く認められたことは、新たな知見である」としている。

また、COVID-19の罹患に伴い嗅覚障害を来す患者数が急増していることに関連し、「栄養関連リスク因子の評価や管理も重要と言えるのではないか」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Self-Reported Olfactory Dysfunction and Diet Quality: Findings from the 2011–2014 National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES)」。〔Nutrients. 2021 Dec 20;13(12):4561〕
原文はこちら(MDPI)

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