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スポーツを行っている中学生・高校生は食習慣が良好 オーストリアで8,799人の生徒を全国調査

お詫びと訂正
当記事の調査が行われた国につきまして、当初は「オーストラリア」と表記されていましたが、正しくは「オーストリア」で行われた調査となります。既に該当箇所は修正させていただきました。ご迷惑をおかけしました皆様に深くお詫び申し上げます。

オーストリアの中等教育レベルの生徒(日本の中学生・高校生にあたる)の健康関連行動を詳細に検討した結果が報告された。スポーツを行っている生徒は食習慣が良好という関連も明らかになった。著者らは、身体活動と食行動という二重のアプローチによって、中学生・高校生の生活習慣を健康的なものへ導く必要性があると述べている。

スポーツを行っている中学生・高校生は食習慣が良好 オーストリアで8,799人の生徒を全国調査

オーストリア中のすべてのセカンダリースクールに調査協力を依頼

若年期に身に付いた生活習慣は、成人後にも引き継がれやすい。そのため生涯にわたる健康の維持の基盤は、若年期の生活習慣に左右される部分が大きい。より具体的には、身体活動習慣と食習慣が健康の基礎と言える。しかし、若年者の身体活動習慣や食習慣に関するビックデータは多くない。

それに対して、今回紹介する論文の研究は、オーストリアに存在するすべての中等教育機関に、在籍する生徒への調査回答を依頼するという方法で実施された大規模な研究。

中等教育レベルの全生徒の1%以上が回答

オーストリアのセカンダリースクールと呼ばれる中等教育機関は、2020年時点で2,688校存在し、生徒数は合計77万1,525人。本調査ではこの2,688校すべてに調査協力を呼び掛けた。回答は任意であり、匿名可とした。その結果、2020年7月10日までに、8,845人(同国の中等教育レベルの全生徒の1.15%)が、オンライン調査に回答した。そのうち、体重と身長に関する情報のない回答を除外し、最終的に8,799人の回答を解析対象とした。

8,799人のうち、約7割にあたる6,148人はセカンダリースクールのレベルII(15~18歳)で占められ、他の約3割にあたる2,261人がレベルI(11~14歳)で占めており、平均年齢は15.1±2.3歳だった。性別は女子が63.1%を占め、男子は36.9%であり、また12.0%は同国以外の国籍だった。

過体重は7.1%、肥満4.7%、低体重12.4%

BMIが90~97パーセンタイルを過体重とすると、7.1%がそれに該当。97パーセンタイル以上の肥満は4.7%であり、反対に10パーセンタイル未満の低体重は12.4%だった。過体重や肥満は男子に多く、低体重は女子に多かった(いずれもp<0.01)。

スポーツへの参加が過体重や肥満、および低体重の該当者率の低下と関連

全体の82.4%は余暇時間にスポーツを習慣的に行っていると回答した。ただし、スポーツクラブに所属しているのは42.5%だった。習慣的にスポーツを行っていると回答した生徒のスポーツの頻度は、週に2.9±2.0日だった。

性別で比較した場合、男子のほうがスポーツ実施率・頻度が高かった(クラブ所属率は52.0 vs 36.6%、頻度は3.3±2. vs 2.6±1.9日/週)。また、年次が上がるにつれスポーツ実施率・頻度が低下することがわかった。例えば、余暇時間にスポーツを習慣的に行っていると回答した割合は、10~12歳では92.7%に及ぶのに対して、17~19歳では76.9%であり、またスポーツ頻度は同順に3.7±2.0日/週、2.4±1.9日/週だった。

スポーツへの参加は、過体重や肥満、および低体重の該当者率の低下と関連していた。例えば、過体重の割合は、余暇時間にスポーツを習慣的に行っている群では6.8%であるのに対して、習慣的にスポーツをしていない群では8.6%、肥満については同順に4.1%、7.4%であり、低体重も12.0%、14.5%であって、結果的に普通体重の該当者はスポーツを習慣的に行っている群のほうが多かった(77.1 vs 69.5%)。

ベジタリアンが8.5%、ビーガンが7.2%

食事スタイルについては、84.3%が雑食(非ベジタリアン)であり、ベジタリアンは8.5%で、さらにその他の7.2%はビーガンだった。ビーガンは低年齢のほうがその割合が高かった。例えば10~12歳では16.7%がビーガンであり、17~19歳では3.5%だった。 ベジタリアンの割合は年齢による大きな違いがなかった。

スポーツへの参加が健康的な食習慣と関連

スポーツを行っていることは、以下に示すように、果物や野菜を毎日摂取している割合や、1日に2L以上の水分を摂取する割合が高く、ソフトドリンクの摂取が少なく、喫煙率が低いことと関連していた()。

表 スポーツ参加状況別の食習慣
 余暇時間にスポーツを1週間のスポーツ頻度は
 行う行わない1~3日4~7日
果物を毎日摂取する割合69.9%47.8%65.8%75.2%
野菜を毎日摂取する割合66.1%53.5%64.6%75.2%
1日に2L以上の水分を摂取する割合24.0%16.8%18.4%31.3%
ソフトドリンクをよく飲むと回答した割合3.9%8.3%3.5%4.5%
喫煙率7.6%17.3%7.8%7.2%

ビーガンはスポーツを行う頻度が高い

飲酒習慣については、スポーツへの参加の有無による有意な違いはなかった。他方、食事スタイルで比較すると、ビーガンの飲酒者率は25.3%であり、雑食者の48.8%やベジタリアンの46.3%より低かった。

またビーガンはスポーツを行う頻度が3.2±2.1日/週であり、雑食者の2.8±2.0日/週やベジタリアンの2.9±2.0日/週よりも高かった。

運動パフォーマンスと食習慣の関連が、研究の方向性の一つ

以上のまとめとして著者は、「オーストリアの未成年者の健康状態(BMIや身体活動習慣、食習慣)は全体的に良好と言える。ただし、身体活動量は国際的な推奨を下回り、果物と野菜を毎日摂取している生徒は3分の2程度にとどまり、さらに生徒のほぼ半数が飲酒し、約10%が喫煙をしている。この調査結果は、家族、教師、トレーナー・コーチ、栄養とスポーツの専門家など、健康関連教育の意思決定者に有益な情報となり得る。持続可能で生涯にわたる健康づくりのための食事と身体活動習慣の確立のため、食事と運動の相互作用のより深い理解が求められる」と述べている。

また、今後の研究の方向性として、「運動中の自覚的運動強度や、運動後の回復、パフォーマンスパラメータに、食生活がどのように影響するかについても調査する必要がある」と記している。

文献情報

原題のタイトルは、「Health Behaviors of Austrian Secondary Level Pupils at a Glance: First Results of the From Science 2 School Study Focusing on Sports Linked to Mixed, Vegetarian, and Vegan Diets」。〔Int J Environ Res Public Health. 2021 Dec 3;18(23):12782〕
原文はこちら(MDPI)

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