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オーラルフレイルは中年期から始まっている! 非高齢者でも口腔機能低下と栄養不良に有意な関連

口腔機能の低下と栄養状態の悪化の相関は、高齢者ばかりでなく、中年期の成人でも認められることが報告された。東京歯科大学老年歯科補綴学講座の上田貴之氏らが、都内歯科医院の患者を対象に行った横断研究の結果であり、「Clinical and Experimental Dental Research」に論文が掲載された。高齢期に入る前からオーラルフレイルのリスクが上昇する可能性を示唆するデータと言える。

オーラルフレイルは中年期から始まっている! 非高齢者でも口腔機能低下と栄養不良に有意な関連

口腔機能からみた中年期のプレフレイルの実態は?

フレイルは、加齢や疾患によって身体的・精神的機能が低下し、種々のストレスへの耐性が低下した“要介護予備群”の状態。高齢者人口の増大を背景に、フレイルに対する早期介入の重要性が高まっている。

フレイルの予防や改善には、栄養介入や運動、社会活動への参加などが役立つと考えられている。ところが、口腔機能が低下した「オーラルフレイル」では、嚥下機能低下や構音不良のために栄養摂取や社会活動への参加がスムーズにいかず、フレイル状態がいっそう進行するという悪循環が生じやすい。つまり、フレイル予防・改善には口腔機能の維持・改善が欠かせない。

現在、フレイルとその前段階である「プレフレイル」のスクリーニングは、65歳以上の高齢者を対象に、「基本チェックリスト」を用いて実施されている。ただし、口腔機能から見るとプレフレイルのリスクは、65歳以前にも生じている可能性がある。しかし、その実態はこれまで十分検討されていない。上田氏らは、この点を明らかにするため、以下の検討を行った。

BMI、除脂肪量指数(FFMI)、骨格筋量指数(SMI)で栄養状態を評価

研究の対象は、東京都内の歯科医院(単施設)で2016年7月~2018年6月に歯科健診を受けた40~64歳の中年期成人117名(平均年齢50±7歳、男性37.6%)。急性歯科疾患や糖尿病、嚥下障害などを有する患者は除外されている。

口腔機能の評価結果

口腔機能は、残存歯数、口腔水分、口唇と舌の運動機能、舌圧、口唇閉鎖力、および咀嚼能力で評価した。主な評価結果は以下のとおり。

なお、これらのうち、舌圧(p<0.01)や口唇閉鎖力(p=0.04)は、女性より男性のほうが有意に強かった。残存歯数は性別による有意差はなかった。

舌圧:男性 40.1±8.3、女性 34.9±7.0kPa
口唇閉鎖力:男性 13.6±3.9N、女性 12.0±3.1N
残存歯数:男性 25.7±4.2(中央値27.0)、女性 25.3±4.6(同27.0)。2名が義歯を装着しており、1名はインプラント装着者

栄養状態の評価結果

栄養状態は、体格指数(body mass index;BMI)、除脂肪量指数(fat-free mass index;FFMI)、および骨格筋量指数(skeletal muscle mass index;SMI)で評価した。評価結果は以下のとおり。

なお、これら三つの指標はすべて、女性より男性のほうが高値だった(いずれもP<0.01)。

体格指数(BMI):男性 23.7±2.6kg/m2、女性 22.7±4.2kg/m2
除脂肪量指数(FFMI):男性 18.3±1.5kg/m2、女性 15.6±1.6kg/m2
骨格筋量指数(SMI):男性 10.2±1.0kg/m2、女性 8.4±1.0kg/m2

舌圧や口唇閉鎖力が低いことは、すべての栄養関連指標の低さと関連

口腔機能の評価結果と栄養状態との相関分析の結果、以下のような有意な正相関が認められた。

まず、舌圧は評価したすべての栄養関連指標と正相関した。具体的には、BMIとはr=0.302(p=0.001)、FFMIとはr=0.417(p<0.001)、SMIとはr=0.423(p<0.001)。口唇閉鎖力はBMI、FFMIと正相関していた。BMIとはr=0.261(p=0.004)、FFMIとはr=0.359(p<0.001)。

舌圧と口唇閉鎖力は、栄養関連指標の有意な説明変数

続いて、栄養状態関連指標を目的変数、口腔状態関連指標を説明変数とする線形重回帰分析を施行。その結果、舌圧および口唇閉鎖力が低いほど、すべての栄養関連指標が低いという有意な関連が認められた。

なお、舌圧と口唇閉鎖力という口腔機能のほかに、FFMIとSMIについては、性別も有意な説明変数として抽出され、女性では低値だった。

BMI:舌圧 β=0.204(p=0.047)、口唇閉鎖力 β=0.252(p=0.015)
FFMI:舌圧 β=0.156(p=0.048)、口唇閉鎖力 β=0.208(p=0.009)、性別 β=0.543(p<0.001)
SMI:舌圧 β=0.149(p=0.048)、口唇閉鎖力 β=0.200(p=0.009)、性別 β=0.576(p<0.001)

歯科介入と栄養介入による、オーラルフレイルの改善に期待

これらの結果を上田氏らは、「中年期成人においても、既に口腔機能が低下している人の存在が認められ、舌圧と口唇閉鎖力がBMI、FFMI、およびSMIと正相関している。舌圧と口唇閉鎖力を測定することで、BMIやFFMI、SMIなどで把握される栄養状態を推定可能と考えられる」と結論づけている。

本研究により、高齢者だけでなく、中年期成人においても口腔機能と栄養状態に関連があることが明らかになった。歯科介入と栄養介入によって、高齢者に多いオーラルフレイルや、非高齢者にもみられるプレフレイルを予防・改善可能か、今後の研究が期待される。

文献情報

原題のタイトルは、「Oral function is associated with the body and muscle mass indices of middle-aged dental patients」。〔Clin Exp Dent Res. 2021 Nov 17〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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