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炭水化物の摂取量と24時間トレイルレースでの走行距離が有意に相関

24時間トレイルレース参加者のレース参加前からレース中の食事を観察した研究結果が報告された。炭水化物摂取量や総摂取エネルギー量とレース成績との間に、有意な正の相関が認められたという。ただし炭水化物摂取量は総じて推奨されている値よりも少なかったとのことだ。

24時間トレイルレースでの走行距離が炭水化物摂取量と有意に相関

18名のアマチュアランナーのレース2日前からレース中の食事を調査

この研究は、スコットランドのグレンモア24時間トレイルレース参加者のうち、研究への協力を得られた18名のアマチュアランナーを対象に行われた。グレンモア24時間トレイルレースは、森の中の1週6.4km、高低差80mのコースを24時間にわたり走行し、走行距離を競うレース。正午にスタートしてラスト1時間は芝生の400mトラックで周回を重ねる。

研究に参加した18名は、男性が11名、年齢は41.5±5.1歳、BMI25.2±2.6、VO2max50.7±5.9mL/kg/分、ウルトラマラソンの経験年数2.7±1.2年、過去のウルトラマラソン参加経験9回、過去の24時間レースの参加経験1回だった。

レーススタートの2日前からレース終了までの栄養素摂取量をモニタリングするとともに、レース中は連続血糖測定により血糖変動を把握。また、レース1時間前と終了後に体重測定を行った。

レース成績

レース中の気温は10~19℃、平均16±4℃、降水量はゼロだった。

18名の研究参加者のうち10名は24時間にわたり走行を続けた。1名の男性は消化器症状のために19時間後、1名の女性は怪我のために12時間後に棄権、他の6名は途中3~8時間の休息をとった。走行距離は77.2~177.5kmの範囲で、最長の177.5kmは男性が記録、女性の最長は174.1kmであり、平均走行距離は129.7±25.3kmだった。

レース中の運動強度は、心拍数は124±11bpm(最大心拍数の68±5%)、VO2maは45±17%mL/kg/分であり、低~中程度だった。VO2maxと走行距離との間に有意な正の相関が認められた(r=0.58,p=0.02)。

レース前とレース中の食事摂取状況と記録との関係

レース前2日間の摂取エネルギー量や炭水化物摂取量と走行記録が正相関

レース前2日間の摂取エネルギー量は24時間あたり2,923±934kcal、炭水化物摂取量は4.0±1.4g/kgで総摂取エネルギー比42±9%だった。

レース前の炭水化物摂取量とレースでの走行距離との間に強い正の相関が認められた(r=0.78,体重換算ではr=0.70.いずれもp<0.01)。また、摂取エネルギー量と走行距離との間には、中程度の正の相関が認められた(r=0.57,体重換算ではr=0.56.いずれもp<0.05)。

レース前2日間の24時間あたり炭水化物摂取量が5g/kg以上だったランナーの走行距離は158.5±30.1kmであり、5g/kg未満だったランナーの125.5±21.7kmより有意に長かった(p=0.042)。同様に、レース前日の1日の炭水化物摂取量が5g/kg以上だったランナーの走行距離は149.3±25.6kmであり、5g/kg未満だったランナーの121.0±20.8kmより有意に長かった(p=0.03)

レース前1〜4時間の炭水化物摂取量と走行記録も正相関

レース前1~4時間の摂取エネルギー量は878±349kcalであり、炭水化物摂取量は1.5±0.7g/kgで摂取エネルギー比49±15%だった。また、水分摂取量は940±397mLだった。

レース前1~4時間での炭水化物摂取量とレースでの走行距離との間に、中程度の正の相関が認められた(r=0.68,p<0.01.体重換算ではr=0.57,p<0.05)。

レース中の摂取状況と記録との関係

レース中の摂取エネルギー量は3,907±1,658kcalで、時間あたりでは179±63kcal/時だった。炭水化物が721±326gで摂取エネルギー比69%であり、タンパク質は78±49gで同8%、脂質は90±55gで同21%。これらは主に、市販のスポーツ栄養食品などから摂取されていた。

体重で調整後、レース中の摂取エネルギー量とレースでの走行距離との間に中程度の正の相関が認められた(r=0.52,p=0.028)。

連続血糖測定で把握された血糖値(間質液の糖濃度からの換算値)は6.9±1.2mmmol/L(124±21.6mg/dL)だった。レース中の炭水化物摂取量と血糖値、および走行距離との間に有意な関連は認められなかった。なお、本研究で用いた連続血糖測定器は、中等度運動の最中に約2mmol/L(36mg/dL)高値を示す傾向があることが確認されているという。

レース経験と食事摂取量、走行距離との関連

経験が多いほど、レース前の炭水化物摂取量が多い

レース前の食事では、ウルトラマラソンの経験年数と炭水化物摂取量との間に中程度の正の相関が存在した(r=0.57,体重換算ではr=0.53.いずれもp<0.05)。ウルトラマラソンの経験回数も同様に、レース前の炭水化物摂取量と正の相関が認められた(r=0.62,p<0.05)。

一方、レース中の炭水化物摂取量は、経験年数との関連がなかった。ただ、経験回数との関連では、回数が多いほどレース中の時間あたり摂取エネルギー量が少ないという、中程度の有意な負の相関が認められた(r=-0.50,p<0.05)。

なお、ウルトラマラソンの経験と走行距離は、有意な関連がなかった。

水分摂取量は記録と関連なし

水分摂取量は、男性が1時間あたり371mL、女性は255mL(p=0.005)、総水分摂取量は同順に8,047mL、5,149mL(p=0.001)であり、男性のほうが多かった。ただし体重で調整すると有意差は消失した(4.6±1.1 vs 3.9±1.2mL/kg/時,100±24 vs 79±26mL/kg)。

レース後の体重減少幅は2.8±2.6kgであり、走行距離との相関はなかった。

炭水化物摂取量を増やす戦略が必要か?

以上の結果から著者らは、「24時間という競技時間から考慮すると、運動強度が低~中程度とは言えエネルギー要件は非常に高くなる。それにもかかわらず、レース直前とレース中の炭水化物摂取量は現在の推奨値よりも少なかった」とまとめている。著者らの検討によると、炭水化物摂取量は最大90g/時まで、比較的容易に高めることが可能という。そして、「今後、マルトデキストリンやフルクトース、アルギン酸ヒドロゲルを含むスポーツ栄養食品の活用により、炭水化物摂取量を増やすことによるパフォーマンス上のメリットの検討が求められる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Dietary Observations of Ultra-Endurance Runners in Preparation for and During a Continuous 24-h Event」。〔Front Physiol. 2021 Nov 24;12:765888〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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