朝食をわずかに摂ることで昼食の食べ過ぎを予防できる 健康な男性対象に3条件で検討
朝食に、量(かさ)はあるがエネルギー量は少ない食事を摂取すると、昼食時に食欲が亢進することなく、トータルの摂取エネルギー量が抑制されるというデータがイギリスから報告された。著者らは、新たな体重管理法となる可能性があるとしている。
朝食を食べていないという本人の自覚をできるだけ排除して検討
減量を目的に食事スタイルの変更する際の一つの方法として、時間制限食などの断続的断食の有効性への期待が高まっている。ただし、断食ピリオドの終了後の摂取ピリオドに、かえって食欲が代償的に亢進して総摂取エネルギー量は変わらないか、増えてしまうのではないかとの懸念がある。
とくに朝食をスキップした場合、食欲刺激ホルモンであるグレリンの分泌亢進と食欲抑制ホルモンであるペプチドYYレベルの低下がみられ、昼食での摂取エネルギー量が増加するとの報告がある。ただし、そのような結果を示した研究の限界点として、被験者が当然ながら、朝食を摂食しない研究に自分が参加していることを理解している。それによって昼食の摂食量を意識的に変えることがあると考えられる。
今回紹介する研究では、その影響をできるだけ排除することを狙い、水とごく低量のエネルギーからなる粘稠性の高い食事を作成し、それをプラセボ食として摂取してもらう条件と、水のみとする条件、および通常の食事を摂ってもらう条件という3条件の食事を被験者に摂取してもらい、昼食の摂取量や満腹感の自己評価、消化管ホルモンの分泌の相違を比較した。
14人、3条件でのクロスオーバー試験
この研究は、健康で体重が安定している14人の男性(24±2歳、BMI23.5±2.3、体脂肪率13.2±3.4%)を対象とするクロスオーバー試験として実施された。試行条件は前述のように、水のみとする条件、水とごく低量のエネルギーからなる粘稠性の高い食事以下「プラセボ食」と省略)を摂取する条件(、および通常の食事を摂取する条件という3条件。
水のみとする条件では618±54gの水(0kcal)を飲んでもらった。プラセボ食は低エネルギーフレーバースカッシュを用いて、652±55gで16±1kcal(炭水化物1.4±0.1g、タンパク質0.3±0g)の食事とした。通常の食事は757±60gで573±30kcal(炭水化物114.9±5.9g、タンパク質15.7±0.8g、脂質5.1±0.3g)だった。各条件の試行は4日以上のウォッシュアウト期間を設け、すべて同じ時刻に開始した。
各試験は前夜から11時間以上の絶食後、8時30分にベースラインの食欲(100mmのビジュアルアナログスケールで評価)を評価し、10分以内に試験食を摂取。食後10分、30分、60分、120分、195分後に食欲を評価、また30分、60分、90分、120分後には採血を行った。
195分後からを昼食として、20分以内に「無理のなく満足な満腹感を感じるまで」自由な量を食べてもらい、その摂取エネルギー量を計測した。
プラセボ食でも食欲があまり亢進せずに、トータルの摂取量は増えない
結果は、昼食の摂食量の変化、食欲の変化、および血液関連データの変化という3つで検討されている。
昼食の摂食量の変化:朝食のプラセボ食条件での昼食摂取量は通常食と同等
朝食摂取195分後から自由に摂取してもらった昼食の摂取エネルギー量は、朝食に通常の食事を摂る条件(通常食条件)が981±284kcalであるのに対して、水摂取条件では1,093±249kcalであり、有意に多かった(p<0.05)。プラセボ食条件は両者の中間にあたる1,062±273kcalであり、他の2条件との間に有意差は認められなかった(対通常食条件p=0.088,対水摂取条件p=1.000)。なお、各条件の試行順序は、結果に影響を及ぼしていなかった(p=0.696)。
朝食と昼食の摂取量を合計すると、通常食条件の1,554±301kcalに対して、水摂取条件は1,093±249kcal、プラセボ食条件では1,078±274kcalであり、両群ともに有意に低かった(いずれもp<0.001)。水摂取条件とプラセボ食条件とでは有意差がなかった。なお、昼食時の随意水分摂取量に条件間の有意差はなかった(p=0.768)。
食欲の変化:満腹感のAUCは、通常食条件とプラセボ食条件で有意差なし
食欲について、朝食後から昼食前までの空腹感と満腹感をビジュアルアナログスケールで経時的に把握した結果に基づき、その曲線化面積(area under the curve;AUC)を比較した結果をみると、食欲のAUCは水摂取条件、プラセボ食条件、通常食条件の順に大きく、満腹感はその逆だった。
群間差の有意性をみると、プラセボ食条件は水摂取条件よりも食欲のAUCが有意に小さく、満腹感のAUCは有意に大きかった。通常食条件は、食欲に関しては水摂取条件およびプラセボ食条件に比べてAUCが有意に小さく、満腹感に関しては水摂取条件との間に有意差があるもののプラセボ条件との差は有意でなかった。
血液関連データの変化:グレリンは通常食条件の食後60分のみ他条件より低値
食欲刺激ホルモンであるグレリンは、朝食後60分時点の通常食条件が他の2群に比較し有意に低値だった。水摂取条件とプラセボ食条件は有意差のみられたポイントはなかった。
食欲抑制ホルモンであるペプチドYYに関しては、条件間の有意差がみられたポイントはなかった。
なお、血糖値は、通常食条件では他の2条件に比較し朝食後120分まで有意に高値で推移した(60分後のみ非有意)。水摂取条件とプラセボ食条件とでは有意差のみられたポイントはなかった。
まとめると、朝食に一般的な食事を摂る条件と、ごく低量のエネルギーからなる粘稠性の高い食事条件では、水のみ飲む条件に比較して主観的な食欲が低下し、かつ、後者の条件では前者よりも朝食と昼食の合計摂取エネルギー量が低下した。この結果から著者は、「ごく低いエネルギー量の朝食は、朝食欠食に伴うことの多い食欲の上昇を抑制し、体重管理をサポートする可能性がある」と結論づけている。
文献情報
原題のタイトルは、「Effect of the perception of breakfast consumption on subsequent appetite and energy intake in healthy males」。〔Eur J Nutr. 2021 Nov 11〕
原文はこちら(Springer Nature)