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乳製品によるカルシウムとタンパク質の摂取で、高齢者の転倒と骨折が減少

高齢者介護施設の居住者は転倒や骨折のリスクが低くないが、栄養介入によりそのリスクを抑制可能とするエビデンスが報告された。ポイントは、乳製品を利用してカルシウムとタンパク質の摂取量を増やすことだという。オーストラリアで行われたクラスターランダム化比較試験の結果だ。

乳製品によるカルシウムとタンパク質の摂取で、高齢者の転倒と骨折が減少

増大する高齢者人口の骨折リスクに薬剤のみでの対応は非現実的

日本に限らず多くの国々で高齢化が進み、高齢者の骨折が増加している。もちろん骨粗鬆症の薬物治療も進歩しているが、80歳以上のより高齢な対象への薬物介入の臨床研究は少なくエビデンスは十分でない。また、ポリファーマシー(多剤併用)による有害事象の懸念、介入すべき対象の多さなどから、積極的な治療があまり行われていないのが現状。

それに対して、非薬物介入、より具体的には栄養介入は、コストや安全性などの面から、より積極的に行う余地があると考えられる。それにもかかわらず、高齢の要介護者を対象とする栄養学的アプローチによる骨折リスク抑制効果と安全性を検討した研究はほとんど行われていない。

施設単位でクラスター化し無作為化したうえで1群に栄養介入

このような状況を背景に行われた本研究は、オーストラリアにある高齢者介護施設60カ所を対象とするクラスター無作為化比較試験として実施された。参加した介護施設の経営母体は、慈善団体、民間団体、宗教団体などで、規模は小規模(50床以下)、中規模(51~100床)、大規模(100床超)が平均的に分布していた。居住者の合計人数は7,195人であり、平均年齢は86.0±8.2歳、女性が68%で、これは同国内介護施設の全国平均と等しかった。

施設の所在地と経営母体で層別化したうえで30施設ずつの2群に分け、1群を介入群、他の1群を対照群とした。介入群に対しては、各施設の食事に主として乳製品を追加することで、カルシウムとタンパク質の強化を図った。ただし乳製品でも、バターやクリーム、アイスクリームは、カルシウムやタンパク質が乏しいため、追加メニューとしては提供されなかった。なお、わずかに存在した乳糖不耐症を有する居住者には乳糖を含まないメニューが作成された。

アウトカムは脆弱性骨折の発生率、転倒発生率、死亡率などを評価した。なお、研究者や栄養士、施設管理者、およびフードサービススタッフは割り付けの盲検化がされていなかったが、施設居住者には研究を知らせず盲検化されていた。ただし、スナック用のチーズやビスケットの追加によって、一部の居住者が食事の変化を認識していた可能性は否定できない。

介入によりカルシウム1.1g/日以上、タンパク質は1.1g/kg/日に

60施設のうち、54施設が24カ月の介入を完了した。そのほかに介入期間中に閉鎖された施設が存在したが、閉鎖日までのデータを解析に含めた。

介入群27施設、対照群29施設の居住者のベースライン時点の特徴を比較すると、年齢や性別(女性の割合)、BMI、体組成、疾患数、処方薬数、栄養状態、生化学的検査値、骨代謝関連指標などに有意差はなかった。カルシウム摂取量は689±266mg/日、タンパク質摂取量は57±16gだった。

介入期間中に介入群では、250mLのミルクと20gのチーズまたは100gのヨーグルトなどによって、カルシウム摂取量は562±166mg/日増加して計1,142±(353)mgのカルシウム摂取を達成し、タンパク質は12±6g/日増加して計69±15g/日(1.1g/kg)を達成した。一方、対照群はカルシウム700±247mg/日、タンパク質58±14g/日(0.9g/kg)だった。

介入による有害事象はなく、転倒や骨折が抑制される

対象群では体重が有意に減少。介入群では体重変化なく消化器症状は報告されず

介入に関連する有害事象(消化器症状)は報告されなかった。

体重は介入群では有意な変化がなかったが(Δ0.3kg〈95%CI;-0.8~1.4〉,p=0.56)、対照群では有意に減少し(Δ-1.4〈0.6~2.1〉,p<0.001)、その減少は四肢の除脂肪量減少の影響が大きかった。

全骨折は33%、大腿骨頸部骨折は46%低下

9万557人月の追跡(平均12.6±8.9カ月)で324件の骨折が発生していた。介入群では121件(3.7%)、対照群では203件であり(5.2%)、介入により33%のリスク低下が認められた(HR0.67〈95%CI;0.48~0.93〉,p=0.02)。

事後解析では、大腿骨頸部骨折の発生率が介入群1.3%、対照群2.4%で、46%とより大きなリスク低下が認められた(HR0.54〈0.35~0.83〉,p=0.005)。骨折の累積発生率の群間差は、全骨折および大腿骨頸部骨折ともに介入5カ月後から有意になっていた。

死亡率で調整後、介入群による全骨折リスクは27%低下(HR0.73〈0.58~0.92〉)、大腿骨頸部骨折リスクは44%低下(HR0.56〈0.39~0.82〉)と計算された。

1件の骨折を防ぐために必要な介入数(number needed to treat;NNT)は52、大腿骨頸部骨折のNNTは82と計算された。なお、NNTは数値が小さいほど効率的な介入であることを意味する。

転倒は介入3カ月後から有意差、NNTは17

転倒は、介入群で1,879件(57%)、対照群では2,423件(62%)報告されており、11%の有意な相対リスク低下が認められた(HR0.89〈95%CI;0.78~0.98〉,p=0.04)。転倒の累積発生率の群間差は、介入3カ月後から有意になっていた。

1件の転倒を防ぐためのNNTは17と計算された。

死亡率は有意差なし

死亡は介入群が900件(27%)、対照群が1,074件(28%)で、有意差はなかった(HR1.01〈95%CI;0.43~3.08〉,p=0.91)。

栄養介入は、自宅生活者も含めた高齢者に、すぐにでも実施可能な戦略

以上から著者らは結論を、「高齢者介護施設の居住者へ、乳製品を主体としてカルシウムとタンパク質の摂取量を増やすという栄養学的アプローチは、あらゆるタイプの骨折のリスクの33%の低下、股関節骨折のリスクの46%の低下と関連していた。また、転倒リスクは11%低下していた」とまとめている。

そのうえで、このような栄養介入の特徴として、有害事情が少ないことに加え、費用対効果が高いことを挙げ、「高齢者介護施設の居住者だけでなく、地域社会に暮らす高齢者の骨折予防のための公衆衛生対策としても、この介入は簡便で有用な手法である」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effect of dietary sources of calcium and protein on hip fractures and falls in older adults in residential care: cluster randomised controlled trial」。〔BMJ. 2021 Oct 20;375:n2364.〕
原文はこちら(BMJ Publishing)

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