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仕事から引退すると食事の質が低下する人が多い スイスの住民対象研究を解析

仕事からの引退は大きなライフイベントであり、年齢的にさまざまな疾患リスクが高まる時期と重なる。時間の制約がなくなるのと同時に、身体活動量が減ったり、人との付き合いも減り勝ちだ。引退をきっかけに、自由になった時間を生かしてより良好な生活習慣につなげていければ良いのだが、実際はそういかないこともあるらしい。スイスで行われた研究によると、引退によって食事の質はむしろ低下してしまう人が多いことが明らかになった。

仕事から引退すると食事の質が低下する人が多い スイスの住民対象研究を解析

スイスでの住民対象縦断研究のデータを解析

退職後の人は、一般的に食事への支出を減らす傾向のあることが報告されている。また、ソーシャルネットワーク(社会的なつながり)の減少と食事の質の低下との関連性を示す報告もある。ただし退職を契機に食生活の質がどのように変化するかの理解は十分でない。

この研究は、スイスの都市部(ローザンヌ)の35~75歳の住民を対象に行われている心血管疾患リスク因子を探るための前向き研究「CoLaus研究」のデータを解析し実施された。CoLaus研究は2003年6月~2006年5月に参加登録され、2009年4月~2012年9月に初回追跡調査、2014年5月~2017年4月に2回目の追跡調査が行われた。2回の追跡調査のうち初回の調査で「職業上の地位は?」との質問に回答しており、2回目の調査で回答しなかった場合、および、「引退した」と回答した場合に、追跡期間中に仕事から引退したと判定した。

食事摂取量は、半定量的な食物摂取頻度質問票(food frequency questionnaire;FFQ)を用いて把握し、地中海式食事スコアと代替健康食指数(alternative healthy eating index;AHEI)で評価した。共変量として、BMI、喫煙習慣、身体活動量、婚姻状況、教育歴を評価した。

職業からの引退による食習慣への影響を3つの手法で検討

研究参加者5,064人のうち2回の追跡調査に回答し、かつ解析に必要なデータ欠落がなく、除外基準(摂取エネルギー量が850kcal/日未満または4,000kcal/日超)に該当しない2,421人を解析対象とした。このうち218人(9.0%)が初回調査から2回目の追跡調査の間に引退していた。

本研究では、(1)追跡期間中に引退した人の引退前後での食習慣の変化、(2)引退した群と引退していない群で、年齢と性別をマッチさせた上での食習慣の比較、(3)ベースライン時点で引退していた群、追跡期間中に引退した群、引退していない群での食習慣の比較、という3つの方法で検討を行っている。

(1)追跡期間中に引退した人の引退前後での食習慣の変化

追跡期間中に引退した人では、摂取エネルギー量は引退前が1,765kcal/日、引退後は1,848kcal/日だったが有意差はなかった(p=0.880)。

栄養素別にみると、タンパク質は有意に増加(植物性タンパク質は有意に減少し、動物性タンパク質は有意に増加)、炭水化物は有意に減少し、脂質は有意に増加(多価不飽和脂肪酸は有意な変化がなく、飽和脂肪酸と単価不飽和脂肪酸が有意に増加)していた。

そのほかに、アルコール、コレステロール、ビタミンDの有意な増加がみられ、食物繊維は有意な変化がなかった。

食事スコアに関しては、地中海式食事スコアは4.3±1.5から3.9±1.6に有意に低下し(p=0.001)、代替健康食指数(AHEI)は有意な変化がなかった。

BMIは、26.0±4.6から26.5±4.8となり、有意に上昇していた(p<0.001)。

(2)年齢と性別をマッチさせた上での食習慣の比較

引退した群と引退していない群で、年齢と性別がマッチしたのは168人のペアだった。この両群で、体重やBMI、摂取エネルギー量の変化に有意差はなかった。

栄養素別にみると、炭水化物の摂取量が引退した群では-2.7±8.8%の変化に対し、引退していない群では0.5±8.9%増であり、群間に有意差があった(p<0.001)。脂質は同順に1.5±7.4%増、-0.1±7.5%であり、やはり群間に有意差があった(p=0.035)。タンパク質の摂取量の変化には有意差がなかった。

そのほか、アルコール摂取量は引退した群では0.7±4.5%増、引退していない群では-0.4±3.7%であり、群間に有意差があった(p=0.012)。食事スコアの変化に関しては、有意差がなかった。

(3)3群間での食習慣の比較

ベースライン時点で引退していた群(779人)、追跡期間中に引退した群(218人)、引退していない群(1,424人)の3群の変化を多変量解析で比較。その結果、主要栄養素では炭水化物が有意基準に達していないものの(p=0.054)、追跡期間中に引退した群での減少が大きかった。脂質やタンパク質の摂取量の変化は有意でなかった。

アルコール摂取量は追跡期間中に引退した群での増加が大きく、群間に有意差がみられた(p=0.036)。

食事スコアについては、地中海式食事スコアは追跡期間中に引退した群での低下が大きく、群間に有意差がみられた(p=0.012)。AHEIの変化は有意差がなかった。

仕事からの引退前後での栄養学的介入が、その後の人生にプラスになる

これらの結果のまとめとして著者らは、「仕事からの引退は明らかに不健康な食事摂取への変化と関連している。具体的に、脂質、とくに飽和脂肪酸と、アルコールの摂取量が増加し、炭水化物の摂取量は減少していた。引退の前後で栄養学的な介入を実施し、より健康的なライフスタイルに導くことが、その後の疾患の発症、その合併症のリスクの抑制につながるのではないか」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Retirement is associated with a decrease in dietary quality」。〔Clin Nutr ESPEN. 2021 Oct;45:206-212〕
原文はこちら(Elsevier Inc)

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