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不規則な食生活はメンタル不調のリスクに 国内労働者4千人超の調査結果

朝食の欠食や睡眠前の摂食と、肥満や糖尿病などの身体疾患のリスクとの関連については多くの研究がなされている。ただし、食事を摂るタイミングの不規則性に着目した研究は少なく、とくにメンタルヘルスとの関連はほとんど明らかになっていない。こうしたなか、摂食タイミングが不規則な人は、メンタルヘルス状態が良くないという関連性を示した日本発の論文が「Nutrients」に掲載された。夜勤や睡眠障害などの影響を及ぼし得る因子を調整しても、摂食タイミングが乱れている人は主観的メンタルヘルスが低いという関連がみられるという。

不規則な食生活はメンタル不調のリスクに 国内労働者4千人超の調査結果

20~69歳の日本人労働者4,490人のWeb調査

この研究は、日本人労働者を対象にライオン株式会社がWebアンケートを行い、その結果を早稲田大学理工学術院の田原優氏らが解析したもの。

Webアンケートは2020年12月19~25日に、20~69歳の日本人労働者を対象に実施され、北海道から沖縄に居住する8,720人が回答した。このうち適格条件を満たさない(年齢が20歳未満または70歳以上、無職、回答内容が不十分など)回答を除外し、4,490人を解析対象とした。

食習慣を1~7点のリッカートスコアで評価

アンケートは最大318問の質問項目で構成されていた。食習慣については、食事時刻の規則性、噛む回数、食事に充てる時間、外食頻度などを1~7点のリッカートスコアで回答してもらった。

食事時刻の規則性については、「食事摂取時刻が不規則ですか?」との質問に対する回答が、「全くそうは思わない」は1点、「そうは思わない」は2点、「あまりそうは思わない」を3点、「どちらとも言えない」を4点、「ややそう思う」を5点、「そう思う」を6点、「強くそう思う」を7点として、1~4点を「食事時刻が不規則でない」、5~7点を「食事時間が不規則」と定義した。

また、主観的幸福感を「Satisfaction with Life Scale;SWLS」、性格特性を精神科領域で頻用されているビッグファイブ理論、身体活動習慣を「国際標準化身体活動質問票(International Physical Activity Questionnaire;IPAQ)」、仕事のパフォーマンスを世界保健機関(WHO)の「Health and work Performance Questionnaire;WHO-HPQ」、クロノタイプ(朝型か夜型か)を「Munich Chrono Type Questionnaire;MCTQ」で、それぞれ評価した。メンタルヘルス状態は、ストレスチェック制度で労働者の評価が事業所に義務付けられている手法を利用し把握した。

約4人に1人が「食事時間が不規則」に該当

この4,490人の平均年齢は47.4±0.1歳で、男性が73.3%、BMIは22.69±0.05で、夜間労働者が15.5%を占め、SWLSは17.24±0.09だった。このうち、「食事時刻が不規則でない」のは3,410人(75.9%)であり、1,080人(24.1%)が「食事時刻が不規則」に該当した。

食事時刻が不規則な人は、運動嫌いが多く、メンタル不調者が多い

食事時刻が不規則な群はそうでない群に比較して年齢が若く(45.36 vs 48.06歳)、夜間労働者の割合が高く(28.4 vs 11.4%)、主観的幸福感が低い(SWLSが35点中16.35 vs 17.52点)という有意差がみられた(いずれもP<0.001)。男女比やBMIには有意な群間差がなかった。

また食事時刻の不規則性は、ビックファイブ理論の神経症傾向と正の相関、誠実性とは負の相関があり、IPAQで評価した身体活動の頻度が低く、睡眠障害のスコアは高くて、主観的健康感やメンタルヘルス状態が不良だった。

WHO-HPQで評価したプレゼンティズム(健康上の問題があるのにもかかわらず勤務を続けようする姿勢)とは負の相関があった。欠勤は食事時刻の不規則性と関連がなかったが、残業時間の長さは正相関した。

また、食事時刻が不規則な群では、身体活動の頻度が低く、「運動が嫌い」との回答が多かった。食習慣との関連では、食事時刻が不規則な人は、噛む回数や野菜摂取量が少なく、食事に充てる時間が短く、朝食の欠食や外食頻度が高く、食後から睡眠までの時間が短く、塩辛い物をよく食べるといった傾向が明らかになった。

これらの相関係数を比較すると、身体的な健康感よりもメンタルヘルス状態との相関が強い傾向がみられた。

メンタルヘルスの視点からも、食事時間の規則性を重視した栄養指導が求められる

次に、主観的な健康アウトカムを目的変数、食事時刻の不規則性を説明変数とし、年齢、性別、BMI、身体活動習慣、夜勤の有無、主観的幸福感、睡眠の質を交絡因子とするロジスティック回帰分析を行った。

その結果、評価した大半の健康アウトカムが、食事時刻の不規則性と有意に関連していた。具体的には、身体的な主観的健康アウトカムとして評価した、健康と思うか、肥満またはやせが気になるか、血清脂質・血糖・血圧が気になるか、健診結果が心配か、足や背中に痛みがあるか、かぜなどの病気になりやすいかなどの中で、「健診結果が心配」と、「足や背中に痛みがある」の2項目のみが非有意だった。また主観的メンタルヘルスとして評価した、とても疲れている、だるい、緊張している、気になることがある、落ち着きがない、気分が落ち込んでいる、食欲低下などは、すべて有意だった。

ほとんどの目的変数との関連が有意という結果には、サンプルサイズが大き過ぎることにより有意差性が強調された影響が考えられた。そこで対象を無作為に抽出した1,405人に絞り込んで再度ロジスティック回帰分析を施行。すると、身体的な主観的健康アウトカムとの関連の大半は有意性が消失した。

その一方で主観的メンタルヘルスのアウトカムは、「落ち着きがない」が非有意となったことを除いて、すべて有意性が保たれていた。この結果は、食事時刻が不規則であることは、身体的な健康の悪化を介せず、直接的にメンタルヘルスの悪化をもたらす可能性を示すものと言える。

著者らは、「食事のタイミングが不規則なことは、主観的なメンタルヘルスが不良であることの良いマーカーと考えられる。職場の健康管理には、食事のタイミングを規則的にするという介入も必要」と結論を述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Association between Irregular Meal Timing and the Mental Health of Japanese Workers」。〔Nutrients. 2021 Aug 13;13(8):2775〕
原文はこちら(MDPI)

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