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牛乳摂取量が多い女子中学生は栄養素摂取量が適切な生徒が多い 国立健康・栄養研究所

牛乳摂取量が多い女子中学生ほど、推定平均必要量(EAR)を満たしている栄養素が多いことが報告された。国立健康・栄養研究所の松本麻衣氏らの研究の結果であり、「Nutrients」に論文が掲載された。著者らは、「骨量の増加が著しく、この時期の栄養素の十分な摂取が後年の身体的健康にも影響を及ぼすことが報告されている中学生の女子においては、牛乳が重要な栄養源となり得る可能性が高い」と述べている。一方、牛乳の摂取量は飽和脂肪酸過剰摂取のリスクと関連がある可能性も示されている。

牛乳摂取量が多い女子中学生は栄養素摂取量が適切な生徒が多い 国立健康・栄養研究所

女子中学生の栄養の重要性

思春期に身についた食習慣は生涯にわたり継続されることが多く、健康的でない食習慣が身についてしまった場合は成人後の疾患発症リスクにつながるため注意が必要である。また、思春期では骨量の増加が著しく、十分な栄養素(特に、カルシウム)を摂取することで骨量の獲得につながり、将来の骨粗鬆症リスクを低下させることにつながることが報告されている。なお、女性の骨量獲得のピークは思春期前半である中学生ぐらいの年齢である。これらを踏まえると、女子中学生において、適切に栄養素(特に、カルシウム)を摂取することが極めて重要となる。

中学生のころから牛乳の摂取量が減り始める

牛乳の摂取量は年齢とともに低下する傾向があり、その傾向は思春期ごろからスタートすることが報告されているが、思春期の牛乳摂取量と栄養素摂取量との関連についてはこれまで研究されていない。

このような状況を背景として松本氏らは、日本人女子中学生を対象として牛乳摂取量を調査するとともに、各種栄養素摂取の適正さ(推定平均必要量(estimated average requirement;EAR)や目標量(tentative dietary goal for preventing life-style related diseases;DG)を満たすこと)との関連について検討した。

女子中学生516人のデータを解析

関東圏の中学校3校に在学中の1~3年生の女子742名に対し、食習慣と生活習慣に関する自記式調査票を配布し、生徒自身(必要に応じて保護者)が回答した。牛乳アレルギーの生徒、質問票の回答に欠落があった生徒、報告した摂取エネルギー量が極端に低いもしくは高い生徒(「日本人の食事摂取基準」の身体活動レベルⅠの推定エネルギー必要量の1/2〈1,074kcal〉未満、または身体活動レベルⅢの推定エネルギー必要量の1.5倍〈4,047kcal〉以上)を除外し、516人のデータを解析対象とした。

食事摂取量や身体活動の頻度は、簡易型自記式食事歴質問票(BDHQ15y)で評価した。栄養素摂取量の適正さは、栄養素摂取量と「日本人の食事摂取基準」の推定平均必要量(EAR)または目標量(DG)を比較することで評価した。

その他、生活習慣に関する質問票により、自宅および学校給食での牛乳摂取頻度、牛乳に対する好き嫌い、朝食摂食頻度、父親と母親の就労状況を把握した。

牛乳摂取量が多い女子中学生の栄養素摂取量は…

牛乳摂取量は朝食摂食頻度、牛乳摂取頻度などに関連

女子中学生における牛乳の平均摂取量は75.0g/1,000kcalであった。

朝食の摂食状況をみると、「毎日朝食をとる」と回答した生徒は、最も牛乳摂取量が少ないグループでは78.6%であるのに対して、最も牛乳摂取量が多いグループでは90.3%であった(p=0.015)。また、自宅や学校給食における牛乳の摂取頻度においても5群間で有意な差がみられ(ともにp<0.001)、最も牛乳摂取量が多いグループでは約7割が、自宅でも学校でも「毎日牛乳を飲む」と回答していたのに対し、最も牛乳摂取量が少ないグループでは、自宅において「牛乳を全く飲まない」と回答した生徒が86.4%、学校で「牛乳を全く飲まない」と回答した生徒も47.6%存在した。

牛乳の好き嫌いに関しては、「とても好き」と回答した生徒が最も牛乳摂取量が多いグループで62.1%であるのに対し、最も牛乳摂取量が少ないグループは7.8%であり、反対に「とても嫌い」と回答した生徒は、最も牛乳摂取量が多いグループで2.9%であるのに対し、最も牛乳摂取量が少ないグループで42.7%であった(p<0.001)。

牛乳摂取量は摂取エネルギー量、BMI、身体活動の頻度との関連はみられなそう

平均摂取エネルギー量(2,102±547kcal)や平均BMI(平均19.3±6.0)、および身体活動の頻度に有意な差はみられなかった。

牛乳摂取量はビタミンB2やカルシウム、カリウムなどの摂取量の適正さに関連

EARやDGを基準に、栄養素摂取量の適正さを検討したところ、牛乳摂取量が多いこととビタミンB2、カルシウム、マグネシウム、カリウムの摂取量の適正さに有意な関連が観察された。

飽和脂肪酸は牛乳摂取量の多い群でDGを超えてしまう傾向

一方、牛乳の摂取量が多くなるほど、飽和脂肪酸の摂取量がDGを超えている者が増加した。

このほか、たんぱく質、ビタミンB12、銅は、すべての群で全員がEARを満たしていたのに対し、ナトリウムはすべての群において全員がDGを超えていた。ビタミンA、ビタミンB1、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、ビタミンC、鉄、亜鉛、総脂質、炭水化物、食物繊維に有意な差はみられなかった。

低脂肪牛乳の摂取を検討するためにも、さらなる研究が必要

これらの検討結果から、著者らは、「日本人女子中学生における牛乳摂取量は、ビタミンB2やカルシウム、マグネシウム、カリウムなどのミネラルの適切な摂取と関連している可能性がある一方で、飽和脂肪酸の不適切な摂取と関連している可能性があることが示された。牛乳は思春期の女性にとって重要な栄養源となる可能性があるが、飽和脂肪酸の過剰摂取を考慮するためには低脂肪牛乳の摂取を検討するためのさらなる研究が必要である」と述べている。

なお、著者らは本研究を、女子中学生における牛乳摂取量と栄養素摂取量の適切さとの関連を検討した初の研究と位置付けている。一方で、調査対象者をランダムに選択できていないこと、身体活動量や世帯収入などの交絡因子となる可能性がある指標を評価できていないことなどを研究上の限界点として挙げている。

文献情報

原題のタイトルは、「The Association between Milk Intake and Nutrient Intake Adequacy among Japanese Female Junior High School Students: A Cross-Sectional Study」。〔Nutrients. 2021 Aug 18;13(8):2838〕
原文はこちら(MDPI)

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