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6%の急速減量後、炭水化物7.1g/kg摂取しても一晩では回復不完全 国内男子学生レスリング選手で検討

体重の6%を2日強で落とすという急速な減量を行った後、試合に備えて7.1g/kgの炭水化物を含む約39kcal/kgの食事を摂取したとしても、筋グリコーゲンや体重は減量前のレベルに回復しないというデータが報告された。国立スポーツ科学センターの近藤衣美氏らが男子学生レスリング選手を対象に行った研究の結果であり、「BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation」に論文が掲載された。

6%の急速減量後、炭水化物7.1g/kg摂取しても一晩では回復不完全 国内男子学生レスリング選手で検討

体重別階級競技の適切な計量のタイミングは未だ議論されている

体重別階級のある競技では試合前の計量が行われる。この計量のタイミングは競技ごとに異なり、また同じ競技であってもルールが変更されることがある。

例えばレスリングは2017年まで、試合前夜に計量を行うと規定されていたが、現在では2日間の試合期間中の毎朝、計量が求められる。一方、柔道は試合当日の朝から前夜に変更された。プロボクシングや総合格闘技などは前日に行っている。体重階級制競技の最適な計量ルールは、未だ議論されているところである。

レスリング選手の場合、2017年までのルールでは試合の約1週間前から体重の5%以上を減量し、計量後から試合までの間に回復を目指すことが多かった。脱水や筋グリコーゲンの減少はパフォーマンスの低下を招くが、計量が試合前日であれば翌日までに回復が可能と考えられていた。しかし、実際に一晩で筋グリコーゲンレベルを回復させるために必要な炭水化物摂取量は、明らかになっていない。

近藤氏らは、急速減量後に高用量の炭水化物を摂取することで、翌朝には筋グリコーゲンレベルが回復すると仮定し、以下の検討を行った。

大学レスリング部の男子学生10名を対象に検討

研究対象は、国内の大学レスリング部の男子学生10名(年齢20.9±0.5歳、身長168.9±4.3cm、体重73.2±8.2kg、体脂肪率11​​.2±2.0%)。全員が東日本大学リーグに所属し、競技レベルは国際レベルが3名、国内レベル5名、地域レベル2名。適格条件は、18歳以上であり、過去の競技会参加前に6%以上の減量を行った経験があって、代謝性疾患・甲状腺疾患・心疾患のないこと。

ベースラインから53時間で6%の減量

研究参加者は全員、ベースライン測定の前日に、研究施設内のビュッフェ形式のレストランで21:00までに通常の量の夕食を終え、23:00以降は水の飲用のみ許可された。またベースライン測定の12時間前からは、アルコールおよびカフェインの摂取と、激しい運動を控えるように指示された。

その翌朝の6:30にベースライン測定として、体重、体組成、筋グリコーゲン濃度、右大腿部の筋と皮下脂肪の横断面積などを測定、および血液と尿を採取した。その後53時間以内に体重を6%落とすよう指示された。

53時間後に6%の減量が達成されたことを確認後、17:30~23:00にわたり3回の食事を摂取。食事開始の2時間後、4時間後、および13時間後の翌朝6:30に、体重、筋グリコーゲン濃度等を測定した。

ベースライン測定前の3日間(トレーニング日2日と休息日1日)と53時間の減量中に摂取した食品、飲料、サプリメント等はすべて計量および写真撮影し、記録することが指示された。それらの記録から管理栄養士が主要栄養素摂取量を計算した。

回復期の食事摂取

回復期には前述のように17:30~23:00にわたり3回の食事が提供された。それぞれの摂取量は以下のとおり。

1回目の食事(17:30~19:00):

摂取エネルギー量22.3±0.8kcal/kg、炭水化物3.9±0.2g/kg、タンパク質0.5±0.0g/kg、脂質36±1g

2回目の食事(21:00~22:00):

摂取エネルギー量13.8±1.5kcal/kg、炭水化物2.7±0.4g/kg、タンパク質0.3±0.0g/kg、脂質14±9g

3回目の食事(22:30~23:00):

摂取エネルギー量3.2±1.5kcal/kg、炭水化物0.5±0.3g/kg、タンパク質0.0±0.0g/kg、脂質10±0g

上記3回の合計:

摂取エネルギー量39.3±1.0kcal/kg、炭水化物7.1±0.2g/kg、タンパク質0.9±0.0g/kg、脂質60±10g

減量前から減量後、および回復期の変化

摂取エネルギー量は、ベースライン時(減量前)は3,426±774kcal/日であるのに対して、減量中は1,123±492kcal/日で、67.6±11.2%減少していた。

体重と筋グリコーゲン濃度は、回復13時間後もベースライン値に戻らず

体重は、減量直後にはベースライン時よりも4.6±0.6kg(6.4±0.7%)低下していた(p<0.05)。回復2時間後には減量直後から2.2±0.5kg増、4時間後は3.3±0.5kg増加。13時間後にはベースライン時に比較して1.7±0.6kg(2.3%±0.8%)差まで回復していたが、回復期のすべての時点で体重はベースライン値よりも有意に低値だった。

次に、筋グリコーゲン濃度の変化をみると、減量直後にはベースライン値よりも36.5±10.0%減少していた(p<0.05)。回復2時間後、4時間後、13時間後もすべて、ベースライン値より有意に低値だった。なお、筋グリコーゲン貯蔵速度は、回復2時間後までが1.8±2.7mM/時、2~4時間が3.3±4.2mM/時、4~13時間が0.5mM/時だった。

右大腿部の筋断面積や周囲長も同様

続いて、右大腿部の筋断面積の変化は、ベースライン時が180.8±18.9cm2であるのに対して、減量直後は170.3±19.3cm2と有意に減少、13時間後には177.0±18.0cm2にまで回復していたが、ベースライン値よりも小さかった。右大腿の周囲長も同様に、ベースライン時が48.4±2.4cmであるのに対して、減量直後は47.2±2.6cmと有意に減少、13時間後には47.9±2.3cmにまで回復していたが、ベースライン値までは回復しなかった。皮下脂肪面積は、ベースライン時から減量直後、回復13時間後までを通じて有意な変化はなかった。

このほか、血液検査からは、ヘモグロビンやアルブミンは、減量後にベースライン値より有意に上昇し13時間後にベースライン値と同等になり、テストステロンは減量によりベースライン値より有意に低下し13時間後にベースライン値と同等になるなどの変化が認められた。

筋グリコーゲン濃度を回復させ得る戦略のさらなる調査が必要

著者らによると、減量後の回復戦略についてこれまでに報告されてきた多くの研究は、短期間(0~6時間)または長期間(24時間以上)での回復を検討しており、一晩に相当する13時間での筋グリコーゲン濃度の回復を検討した研究は本報告が初という。上述のように、結果として13時間では、筋グリコーゲン濃度はベースライン値まで回復しなかった。

ただし本研究で示された、13時間で81.7%の回復という数値は既報よりも高レベルであり、「仮に回復時間がもう少し長く(例えばプロボクシングや総合格闘技のように24時間で)、アスリートがより多くの炭水化物を摂取できれば、筋グリコーゲン濃度がベースライン値と同レベルになった可能性がある」と述べている。

結論としては、「6%の急速減量後に7.1g/kgという高炭水化物食を摂取したとしても、13時間後の筋グリコーゲン濃度は十分に回復していなかった。レスリング選手が通常よりも筋グリコーゲンが少ない状態で試合に参加することは試合を勝ち進んでいく上で望ましくない可能性があり、最適な回復戦略を目指し、さらなる研究が求められる」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of an overnight high-carbohydrate meal on muscle glycogen after rapid weight loss in male collegiate wrestlers」。〔BMC Sports Sci Med Rehabil. 2021 Aug 20;13(1):96〕
原文はこちら(Springer Nature)

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