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運動後の筋肉損傷からの回復におけるビタミンDの役割 ナラティブレビュー

ビタミンDには近年、多彩な機能性があることが明らかになってきている。そのなかで、運動負荷による筋損傷からの回復過程でのビタミンDの機能性に焦点を当てた、スペインの研究者らのナラティブレビュー論文が発表された。この機能性の発揮には二つのメカニズムが想定され、とくにビタミンD欠乏状態にある場合や、負荷の大きい運動後にはより効果的な可能性があると述べている。論文の要旨を紹介する。

運動後の筋肉損傷からの回復におけるビタミンDの役割 ナラティブレビュー

イントロダクション:ビタミンDの多様な働き

筋損傷の回復を促すとする、さまざまなサプリメントが存在する。それらのサプリのいくつかは、遅発性筋肉痛(late-onset muscle soreness;LOMS)を抑制するが、このカテゴリーのサプリはエルゴジェニック効果を発揮しない。そのかわりに運動後の回復を助け、その後のトレーニングや競技でのパフォーマンス発揮を支持する。そのカテゴリーのサプリの一つとして、ビタミンDが挙げられる。

ビタミンDに関して骨代謝におけるその役割は古くから知られており、骨粗鬆症の治療にも用いられている。また、免疫調節微量栄養素としてのビタミンDの役割も近年では認識が広まっており、とくに新型コロナウイルス感染症パンデミック下で、その機能性が注目されている。そして免疫機能との関連で、炎症のプロセスへの関与も研究されており、筋肉組織での炎症やタンパク質合成への関与が示されている。

ビタミンDと筋肉

ビタミンDが、運動後の筋損傷抑制候補因子として関心を集めている一因は、ビタミンD受容体が筋細胞に存在するという発見によるものと言える。ビタミンDが筋肉細胞の増殖や分化などを調節しており、臨床からは、非特異的筋骨格痛患者の93%がビタミンD欠乏症であることが報告されていたり、スタチン治療によりビタミンD欠乏を呈している患者の筋炎や筋肉痛の対処としてビタミンDサプリメントを用いることがある。

ビタミンDは、さまざまな生理学的プロセスに関与する必須のセコステロイドホルモンと見なすことができる。その多彩な作用のうち免疫系の調節は、炎症過程の予防と治療に役立つ。ビタミンDの標的組織の一つは骨格筋であり、骨格筋の衰弱に25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)の低さが関与することが少なくない。

ビタミンDの追加摂取によって骨格筋におけるビタミンD受容体の発現が増加することが報告されており、この増加はタンパク質合成調節を介して筋肉の再生と機能に影響を与える可能性がある。

ビタミンDと運動

ビタミンD欠乏が運動パフォーマンスに影響を与えるとする研究が複数存在する。一方で、ビタミンD欠乏ではない場合に高用量のビタミンDを摂取すると、内分泌系に負の影響が生じる可能性も指摘されている。よって、ビタミンDサプリが、欠乏症でないアスリートにも真に有用なのかという点が問題となる。

この点に関連しては、血清25(OH)Dの最適レベルは、筋力や持久力パフォーマンと相関するとの報告や、日光曝露量が多くアスリートの血清25(OH)Dレベルが高い季節にパフォーマンスが向上するとの報告がある一方で、この関連を否定する報告もあり結果に一貫性がない。これら研究報告を参照する際には、試験プロトコルに規定されている運動強度と介入対象のベースラインのビタミンDレベルに留意する必要があるだろう。有用性を報告している研究は、ビタミンDレベルが不足している状態、またはサルコペニアなどが対象に含まれている研究が多い。

運動と炎症

過度の運動と不十分な回復は筋骨格系の外傷リスクを高める。この背景には、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン1β(IL-1β)などの炎症性サイトカインの産生と循環への放出の増加が関与しているとされ、これらのサイトカインはパフォーマンスの低下も引き起こす。

急性炎症が落ち着いた後に行う定期的な運動は、長期的に抗炎症的な作用を発揮する。しかし激しい運動では炎症性サイトカインが増加し、細胞性免疫が抑制され感染症への感受性を高める。また激しい運動は炎症性サイトカイン産生に加えて、多くの臓器や組織のアポトーシスや酸化ストレスをもたらす。また、IL-1やTNF-α、IL-6は、タンパク質異化作用にも関与していると考えられる。

ビタミンDサプリはどのように筋損傷の回復を促すのか?

ビタミンDは、IL-6などの炎症性サイトカインの産生を阻害し、炎症を軽減すると考えられている。その他にも、IFN-α、IL-2、およびTNF-αといった炎症性サイトカインの産生を抑制することが知られている。ビタミンDレベルの不足と骨格筋の慢性疾患や傷害との関連は十分に証明されている。炎症の調節におけるビタミンDの重要な役割を支持する報告も増加している。

筋損傷からの回復中のビタミンDの作用として提案されているメカニズムは二つあり、一つは筋肉細胞のビタミンD受容体に直接1,25(OH)Dが結合するというものであり、もう一つは、筋小胞体におけるカルシウム輸送を促進するというメカニズムである。ただし後者のメカニズムはラットモデルでのみ示されたものであり、さらなる追試が必要とされる。

結論:今後の研究の必要性、および長期介入時には適宜モニタリングを

複数の研究者が、スポーツアスリートはビタミンD欠乏症(20ng/mL未満)やビタミンDレベル低下(32ng/mL未満)のリスクが高いことを報告している。他方、スポーツによって引き起こされる炎症からの回復において、筋肉機能に対するビタミンDの明らかな理論的メリットがあるにもかかわらず、ビタミンD補給後のパフォーマンスの改善を実証した研究は限られている。しかし、ビタミンDレベルが20~30ng/mLである場合、これをサプリ摂取により修正することにより筋骨格系のメリットが期待できるだろう。

一方、ビタミンDレベルが正常域(50ng/mL以上)である場合、追加摂取による筋肉の機能やパフォーマンスの改善といった、明らかなメリットは観察されない。ただし、最適なサプリメント摂取量については議論が続いており、今後の研究が必要とされる。また、ビタミン摂取後の血清ビタミンDレベルの反応には個人差があることから、長期的に介入する場合は、適切なモニタリングも求められる。

文献情報

原題のタイトルは、「Vitamin D, Its Role in Recovery after Muscular Damage Following Exercise」。〔Nutrients. 2021 Jul 8;13(7):2336〕
原文はこちら(MDPI)

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