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給食の着席時間を10分増やすと、子どもの野菜・果物の残食が減る 米国で調査

給食での野菜や果物の残食は、長年にわたって対策が模索されてきている。言い換えれば、長年にわたってこの問題が解決されていないということだ。ところが、給食時の着席時間を10分長くするという変更を加えるだけで、野菜や果物の残食が有意に減らせることを示した研究結果が、米国医師会発行の「JAMA Network Open」に掲載された。

給食の着席時間を10分増やすと、子どもの野菜・果物の残食が減る 米国で調査

着席時間10分と20分で比較

米国小児科学会と疾病対策センター(Centers for Disease Control and Preventio;CDC)は、子どもたちの給食に最低20分を充てることを推奨している。そして昼休みの時間は通常、20分よりも十分に長く設定されている。しかし、給食の受け取りや配食の順番待ちに時間をとられ、また食後にできるだけ長く遊ぶために食事を短時間で済まそうとする子どもが多く、着席時間が20分に満たない子どもが少なくない。このような現状を背景として本論文の著者らは、着席時間を20分確保することで残食を減らせる可能性について検討した。

検討の対象は、米国のイリノイ大学で行われたサマーキャンプに参加した、8~14歳の子ども38人。年齢は11.86±1.23歳で、女児が61%だった。試験デザインはクロスオーバー法で、20日間にわたり計241回、5種類の献立にそった給食が配食され、着席時間は無作為に10分または20分に設定された。

配食の列に並んだ最後の子どもが着席した時点で時間のカウントを開始。設定条件(10分または20分)を黒板に記し、着席時間終了の5分前には子どもたちにそれを知らせた。なお、水は自由に飲んで良いが、おかわりは禁止した。

20分の条件では野菜・果物の残食が有意に減る

着席時間10分の条件の際に、子どもが実際着席していた時間は11.76±1.62分で、20分の条件では21.59±1.79分だった。また、20分条件では10分条件に比較し、友達との会話に充てる時間が有意に増えていた。一方、携帯電話等の使用時間に有意差はなかった。

延べ241回の給食のうち210回(87%)に野菜、232回(96%)に果物、238回(99%)に飲料(水または牛乳)、124回(51%)に牛乳が含まれていた。

野菜と果物以外の摂取量は有意に変化せず

野菜の1人あたり配食量は66.02±20.7gだった。これに対して10分条件では32.45±5.74g、配食量に対して51.2±7.8%を摂取していた。20分条件では41.24±5.63gであり、配食量に対して65.3±7.6%を摂取していた。摂取量の差は8.79±3.18gで、20分条件を基準とすると10分条件では-11.3(95%CI;-18.1~-4.5)%と、1割以上少なかった。

果物の1人あたり配食量は93.10±32.35gだった。これに対して10分条件では70.63±6.19g、配食量に対して72.9±7.1%を摂取していた。20分条件では80.24±6.08gであり、配食量に対して74.7±6.9%を摂取していた。摂取量の差は9.61±3.04gで、20分条件を基準とすると10分条件では-14.1(95%CI;-22.7~-5.7)%と、野菜よりもさらに大きな差が存在した。

一方、メインディッシュ(タンパク質と穀物)および飲み物(牛乳のみ、および牛乳と水の合計)については、20分条件のほうが10分条件より多いものの条件間の差は有意でなかった。

摂取エネルギー量、脂質以外の主要栄養素にも有意差

摂取エネルギー量や脂質以外の主要栄養素、および鉄などの微量栄養素にも、着席時間の条件の違いによって、以下のような有意差がみられた。

まず、摂取エネルギー量は1人あたりの配食量が421.71±108.97kcalに対し、実際の摂取量は10分条件で337.73±18.86kcal、20分条件では359.76±18.46kcalで、22.03(95%CI;-39.47~-4.61)kcalの有意差があった。

炭水化物は1人あたりの配食量が58.92±18.25gに対し、実際の摂取量は10分条件で45.67±2.66g、20分条件では49.48±2.61gで、3.81(95%CI;-6.20~-1.42)gの有意差があった。タンパク質は1人あたりの配食量が21.88±7.21gに対し、実際の摂取量は10分条件で17.62±1.11g、20分条件では18.72±1.09gで、1.11(95%CI;-2.17~-0.04)gの有意差があった。食物繊維は1人あたりの配食量が6.28±2.28gに対し、実際の摂取量は10分条件で4.60±0.34g、20分条件では5.11±0.33gで、0.51(95%CI;-0.81~-0.19)gの有意差があった。

なお、脂質は1人あたりの配食量が11.72±4.13gに対し、実際の摂取量は10分条件で9.91±0.55g、20分条件では10.27±0.53gであり、条件間の差は0.36(95%CI;-0.89~0.17)gで有意でなかった。

微量栄養素では、鉄とカリウムに有意差

微量栄養素に関しても、鉄とカリウムの摂取量に、以下のように有意差がみられた。

鉄は1人あたりの配食量が3.50±1.44mgに対し、実際の摂取量は10分条件で2.90±0.19mg、20分条件では3.10±0.18gで、0.20(95%CI;-0.38~-0.02)mgの有意差があった。カリウムは1人あたりの配食量が769.79±279.39mgに対し、実際の摂取量は10分条件で564.23±34.89mg、20分条件では617.72±34.28mgで、53.49(95%CI;-84.67~-22.32)mgの有意差があった。

微量栄養素ではこれら以外にビタミンDとカルシウムも評価されていたが、条件間の有意差はなかった。

著者らは結論として、「このクロスオーバー試験の結果は、給食時に着席時間を20分間確保することで、子どもたちの野菜と果物の摂取量が増え、残食が減るというエビデンスと言える。20分間の着席を遵守することによって、子どもたちの食事の質が向上する可能性がある」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of Longer Seated Lunch Time on Food Consumption and Waste in Elementary and Middle School–age Children. A Randomized Clinical Trial」。〔JAMA Netw Open. 2021 Jun 1;4(6):e2114148〕
原文はこちら(American Medical Association)

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