飲み物の「容器」の色によって味を感じる強さが変わる 食習慣改善への応用に期待
飲み物の容器の色によって味を感じる強さが変わることがわかった。容器の色を調整することで、減塩や糖質制限にもつながる可能性もあるという。千葉大学の研究グループによる成果で、日本視覚学会の学術誌「VISION」に論文が掲載されるとともに、同大学のサイトにニュースリリースが掲載された。
研究の背景:色彩による味覚強度への影響
これまでにも、容器の色が飲料の味覚に影響を及ぼすことが報告されてきた。例えば、カフェオレを白色の容器から飲むと、青色や透明の容器で飲む場合より苦味が強く感じられる。また、茶色の容器で飲むコーヒーや、橙色や茶色の容器で飲むチョコレート飲料は、コーヒー、もしくはチョコレートの味がより濃く感じられるという研究結果も報告されている。
しかし、これらの研究では特定の飲料のみが用いられており、容器の色による味覚への影響が特定の飲料のみで生じるものか、ほかの飲料でも生じるものか不明だった。また、飲料自体が直接見える状態で味覚の強さが評価されていたため、色による味覚への影響が容器の色単独によって生じたものか、それとも飲料自体の色と容器の色のコントラストなどの相互作用によって生じたものかも不明だった。
研究の成果:閉眼条件との比較で味覚強度の変化を評価
この研究では、ショ糖、塩化マグネシウム、クエン酸、食塩を用い、4通りの基本味(甘味、苦味、酸味、塩味)のいずれかが強い水溶液を作成。容器の色(白、黒、赤、黄、青、緑、ピンク、茶)によって、それらの基本味を感じる強さがどのように変わるかを調べた。その際、円筒形の容器を各色の色画用紙で完全包装することで、飲料自体が見えないようにした(図1)。
容器の色の影響を検討するために、開眼して何色であるかを見た場合と、アイマスクをして閉眼した場合とで、それぞれの水溶液をストローを使って口に含み、甘味、苦味、酸味、塩味の4通りの味すべてに対し、強度を11段階で評価してもらった。そして、閉眼条件で評価した味の強度を基準として、開眼条件で評価した味の強度との差を調べた。また、容器の色からイメージされる味と飲料の実際の味の一致している程度を「調和度」として7段階で評価してもらった。
実験の結果、飲料自体の色とは関係なく、一方で容器の色は、閉眼での評価と比較して、飲料の味を強める効果も弱める効果もあることがわかった。たとえば、黄色は酸味を、ピンク色は塩味を強め、緑色は甘味を弱めた(図2)。
図2 各色彩条件と基準の差
調和度に関しては、黄色と酸味との間の調和度は高く、緑色と甘味との間の調和度は低かった(図3)。このことから、色と味との調和度が味覚強度の強調や低下にかかわっていることが示唆された。
ただし、ピンク色と塩味の間の調和度は中程度であった。よって、色と味の調和度が、容器の色が味覚強度を強調する、唯一の必要条件とは言えないと考えられた。
図3 各色彩条件での色と味の調和度
今後の展望:容器の色を変えて食生活改善へ
本研究により、容器の色は、すべての飲料に対して同様に特定の味を強めたり弱めたりするのではなく、酸っぱい飲料を黄色の容器で飲んだ時には酸味を強く感じる、というように、色と味の組み合わせによって影響は異なることがわかった。
今後は、例えば塩味を強調するピンク色の容器を使うと、少ない塩分で強い塩味を感じることができ、減塩効果につながるなど、容器の色を利用した食生活改善にも応用が期待される。
プレスリリース
文献情報
原題のタイトルは、「容器の色彩による飲料についての味覚強度の変動」。〔VISION 33(3), 117-138, 2021〕
原文はこちら(J-STAGE)