ゴルフによる身体活動のメリットはラウンド後のアルコール摂取で相殺される!?
ゴルフでは18ホールの1ラウンドで約10km、1万3,000歩ほど歩くと言われる。標準的な体型の日本人男性なら、500kcal前後消費することになるだろう。それだけみれば、健康的と言えなくもない。しかし、ゴルフには多くの場合“19ホール”が存在し、身体活動と飲酒がセットのようになった、珍しいスポーツとも言われる。では、ラウンド後の飲酒も勘案した場合、ゴルフはいったい健康にプラスとなっているのだろうか、それともマイナスになっているのだろうか。
アマチュアゴルフの特徴
この研究は米国の成人ゴルファーを対象にオンライン調査として行われた。米国のゴルフ人口は2,400万人とされ、今も堅調な人気を保っている。ゴルフには、スポーツとして自他との競争の実践、健康上のメリット、リラックス/ストレス解消効果などの要素が含まれている。
またゴルフはやや特殊なスポーツという言い方もできる。より具体的には、ゴルフはプレー中の飲酒も可とされている、ほとんど他に例のないスポーツであり、またラウンド後の飲食がプレーと対のように捉えられる点でも特徴的。とくに、ゴルフ参加の動機が社会的人間関係に関連している場合、そのような傾向はより強くなる。
アルコールの摂取は大腸癌や乳癌などの発癌リスクを高め、かつアルコールはエネルギー密度が高く肥満のリスクを高めて、それによる種々の肥満関連疾患のリスクをも高める。ゴルフによる身体活動による健康上のメリットと、ラウンド中やラウンド後の飲酒のデメリットのどちらが勝るのかを、この研究から探ることができる。
調査対象者や評価項目の評価法について
調査対象者は、米国のインターネット調査パネルに登録されている18〜70歳のゴルファーで、性別は半数が男性、人種/民族は75%が非ヒスパニック系白人、25%がヒスパニックまたはマイノリティーとなるように意図的にサンプリングされた。2019年6~8月の間に、18ホール以上プレーしていることを適格条件として行われた。
最終的な回答者数は338人で、米国全土から回答されており、年齢46±14.4歳、男性が51.2%、非ヒスパニック系が90%、白人が81%だった。
なお、アルコール摂取量は、過去1週間に摂取したサービング数で回答してもらった。回答の範囲は0~15以上にわたった。女性は7サービング/週、男性は14サービング/週以上を「中程度(適量)のアルコール摂取」と判定した。
また、ゴルフの動機は任意で回答してもらい、主成分分析により、「社会的ステータス」、「健康増進」、「楽しみのため」、「スキル向上」という4項目に分類され分析された。
身体活動量については、国際標準化身体活動質問票(International Physical Activity Questionnaire Short Form;IPAQ-SF)にて評価し、週に150分以上の中強度運動または75分以上の高強度運動を行っている場合に、「身体活動ガイドラインの推奨を満たしている」と判定した。
身体活動量やゴルフをする動機が、アルコール摂取量と有意に関連
まず回答者のアルコール摂取量と身体活動量をみてみよう。
ゴルファーの8割以上が飲酒していて、755kcal/週を摂取している
参加者の84%はアルコールを摂取し、全体の平均摂取量は6.8±7.3サービング/週であり、約4分の1の参加者が「適量」の上限を超えて摂取していた。アルコールを摂取する人の平均摂取量は7.91サービング/週であり、これをエネルギー量に換算すると、1週間に755kcalをアルコールから摂取していると考えられた。
大半のゴルファーは、身体活動ガイドラインの推奨を満たしている
身体活動量の平均は98.5±92.4Mets・時/週であり、大半(86%)の参加者がガイドラインの推奨を満たしていた。身体活動量が多い人ほどアルコール摂取量が多い
次に、アルコール摂取量と関連する因子を検討。すると、身体活動量が多いほどアルコール摂取量が多いという有意な関連が認められた。
具体的には、1週間あたりの歩行時間が1単位(Box-Cox変換ラムダ値)多いごとに、1週間あたりのアルコール摂取量が7.30倍(95%CI;1.79~32.24)になっていた。また、中~高強度運動が各1単位多いごとに、アルコール摂取量が5.04倍(95%CI;2.38~12.32)に、総身体活動量1単位多いごとに、アルコール摂取量が4.14倍(95%CI;2.17~7.97)になっていた。
「社会的ステータス」のためにゴルフを行う人はアルコール摂取量が多い
続いて、ゴルフを行う理由と、アルコール摂取量との関連を検討した。ゴルフを行う理由については前述のように、主成分分析で示された「社会的ステータス」、「健康増進」、「楽しみのため」、「スキル向上」の4項目で評価した。
解析の結果、これら4つの理由の中で、アルコール摂取量と有意な関連がある理由は「社会的ステータス」のみだった。具体的に、社会的ステータスが「重要でない」を0点、「非常に重要」を5点として選んでもらった回答から、その点数が1点高いごとにアルコール摂取量が1.60倍(95%CI;1.00~1.90)になっていた。
まとめると、全米の性別や人種/民族を人口比にあわせて意図的に調整したサンプルを対象とする調査の結果、ゴルファーはアルコール摂取率が高く、また身体活動量が多いゴルファーほど摂取量が多いことがわかった。一方、スポーツとしてのゴルフへの関心の強さはアルコール摂取量と関連がなかった。ただし、社会的ステータスに動機付けられたゴルファーは、他の動機によりゴルフをしている人よりも、アルコール摂取量が多かった。
著者らは、「ゴルファーのアルコール摂取は、エネルギーの不均衡と体重増加を促進し、身体活動による肥満や癌の抑制効果の一部を相殺する可能性がある」とし、公衆衛生上の懸念を示している。
文献情報
原題のタイトルは、「Alcohol Use as a Function of Physical Activity and Golfing Motives in a National Sample of United States Golfers」。〔Nutrients. 2021 May 29;13(6):1856〕
原文はこちら(MDPI)